㈱ソディックが2月14日に発表した2022年12月期(1〜12月)連結業績によると、売上高804億95百万円(前年同期比7.1%増)、営業利益58億13百万円 (前年同期比14.7%減)、経常利益82億75百万円(前年同期比3.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益60億 21百万円(前年同期比8.6%減)となった。
2022年度の取り巻く環境は、世界的なインフレの進行、サプライチェーンの混乱、金融政策の引き締め、急激な為替変動に加え、ロシアのウクライナ侵攻を始めとする地政学的リスクや中国における厳格な新型コロナウイルス政策等による景気減速の懸念など不透明な状況で推移した。
同社グループは、「創造」「実行」「苦労・克服」の精神のもと、顧客へ最高の価値を提供し、「未来を創 る」企業としてものづくりを通して社会の持続的な発展に貢献すべく取り組んでいる。自動車や通信分野をはじ めとした技術革新、省人化ニーズの高まり、カーボンニュートラル・持続可能な開発目標(SDGs)の促進を背景 に、ものづくりの現場においても、更なる高精度化、高速化、自動化はもとより、操作性の向上、電力使用量や廃棄物の削減、工程集約、DX化の推進等が求められている。これらの「進化するものづくりへの貢献」を重要な経営課題と捉え、新製品開発の促進、トータルソリューションの展開、アフターサービスの充実、DXを活用した付加価値の提供等、事業の拡大とサステナビリティの取り組みを一体で推進している。
このような状況のもと、4年ぶりのリアル開催となったJIMTOF2022(日本国際工作機械見本市)へ出展し、EVの モーターコア用プレス金型や半導体パッケージのリードフレーム用金型等の製造向けに開発した超精密ワイヤ放電加工機「AX350L」、熱変位補正機能により品質安定に貢献するマシニングセンタ「UX450L」、複数の材料の使用で も交換等のメンテナンス負荷を抑え、大型サイズの安定造形を可能にした金属3Dプリンタ「LPM450」などの新製 品の展示に加え、同社ブースをデジタルツインで再現し、特設Webサイトにて公開した。今後もデジタルとリ アルの両方で顧客とつながり、顧客のものづくりの課題を解決すべく提案を行っていく。
■セグメント別の状況
<工作機械事業>
売上高:56,492百万円 (前年同期比 9.7%増 ) /営業利益:7,046百万円 (前年同期比 129百万円減 )
中華圏における自動車、半導体関連での設備投資意欲の低下やウクライナ・ロシア情勢等を背景とした物価高騰、サ プライチェーンの混乱等の影響はあるものの、日本、欧米、アジアにおいては電子部品、半導体、EV関連向けを中心に 堅調に推移した。為替の円安影響もあり、売上高は前年同期比で増加となった。ものづくりの高度化は今後も継続するとみられ、高速・高精度加工のニーズは高まるほか、操作性向上、省エネ対応、長時間の安定加工や加工物の大型化・複雑化等も重要な機会と認識し、同事業を展開している。高精度な加工が求められる地域と顧客を視野に、強みのある放電加工機の一層の拡販と同時に、中長期的に大きな成長が期待できる金属3Dプリンタ、精密マシニングセンタについても、技術開発の推進や販売体制の強化により、高付加価値加工ニーズ を取り込んでいく。
上記のようなニーズに対応するため、同社独自のワイヤ回転機構により高速・高精度に加え消費電力量・ワイヤ消費量の削減を実現し、脱炭素社会に向けた環境に対応するワイヤ放電加工機「AL i Groove + Edition」シリーズを開発した。「AL600G i Groove + Edition」は日刊工業新聞社主催の「第65回十大新製品賞」において本賞を受賞した。
<産業機械事業>
売上高:10,656百万円 (前年同期比 2.8%増 ) /営業利益:820百万円 (前年同期比 317百万円増 )
国内においてEV関連向けの需要が堅調である一方で、スマートフォンの需要減少の影響もあり電子部品関係の需要は低調となった。また、各地域においても電子部品関連の需要減少による設備投資意欲の低下もみられたが円安影響もあり、売上高は前年同期比で増加となった。 中華圏、アジア地域において、ものづくりの高精度化が進展し、同社が得意とする超高精度の射出成形機の需要が高まることが予測される。また、電力使用量や成形に伴う廃棄物の削減ニーズについても重要な機会と認識し、同事業を展開している。
上記のようなニーズに対応するため、ハイブリッド竪型ロータリ式射出成形機「VREシリーズ」の後継機種として更 なる制御能力向上に加え、エネルギーロスの少ない動作による電力消費量の削減を実現した「VR Gシリーズ」を開発した。
<食品機械事業>
売上高:6,813百万円 (前年同期比 1.0%減 ) /営業利益:447百万円 (前年同期比 383百万円減 )
中華圏での新型コロナウイルス政策による行動制限や世界的なインフレ等の影響を受けた顧客における原価上昇に伴う設備投資意欲の低下もみられたが、国内向けの製麺機関連設備や海外向けの無菌包装米飯製造装置等の需要は堅調に推移したことに加え、中華圏での無菌包装米飯装置の複数案件が進捗したため、売上高は前年同期比で微減に留まった。
今後、国内における製麺、米飯製造での衛生面、省人化ニーズへの対応に加え、惣菜、製菓、パン業界など幅広い 分野での事業拡大を図るほか、さらに中華圏、アジアを中心とした海外市場で食の高品質化やインフラの整備等で 生麺や米飯の需要が高まると想定しており、生産能力確保のため、2023年1月から厦門新工場が稼働するほか、加賀事業所においても生産能力増強のための拡張、改修を進めている。
上記のようなニーズに対応するため、調味液等添加・撹拌工程の無人化を実現し、手作業工程の削減による調理麺 商品の鮮度延長が可能となり、フードロス削減に貢献する調理麺製造ライン用自動麺ほぐし・調味機「ネオマザー ル」を開発した。同製品は日刊工業新聞社主催の「第19回/2022年“超”モノづくり部品大賞」において「機械・ロボット部品賞」を受賞した。
<その他>
売上高:6,533百万円 (前年同期比 1.5%増 ) /営業利益:313百万円 (前年同期比 498百万円減 )
精密コネクタなどの受託生産を行う金型成形事業、リニアモータやセラミックス部材の販売等を行う要素技術事業から構成されている。金型成形事業においては自動車関連向けの需要が低調なため売上高は前年同期比微減となるものの、要素技術事業においては前年同期比で増加となった。また、サプライチェーンの混乱や材料費高騰の影響の継続に伴う原価高により利益率は低下した。
■今後の見通し
今後の見通しについては、中長期的にはグローバルにものづくりが発展していく中で、同社の主要な仕向け先 である自動車産業においては、「CASE(Connected、Autonomous、Shared/Service、Electric)」や「MaaS (Mobility as a Service)」の対応に伴い自動車の軽量化・電装化ニーズや脱ガソリン車の動きが一層高まっており、AIやIoTの 進展と「5G」の普及に向けたシステムの高度化に伴う高精度機の設備投資需要はさらに高まることに加え、世界的に 脱炭素化などの社会課題解決に向けたEV化、再生可能エネルギー、労働生産性向上などの需要の拡大が予想される。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響や半導体をはじめとした部材不足、インフレや金融引き締めに加え、エネルギー・原材料価格の高騰、ウクライナ情勢の長期化をはじめとする様々な地政学的リスク等、依然として 先行き不透明な状況が続くものと思われる。
このような環境の中、次期のセグメント別の見通しは以下のとおり。
<工作機械事業>
売上高:54,900百万円(前年同期比 2.8%減 )/営業利益:5,700百万円 (前年同期比 1,346百万円減 )
自動車、半導体、5G関連向けを中心に、ものづくりの高度化に伴う高精度機の需要は増加が見込まれる。中華圏においてアフターマーケットの強化に取り組むものの新型コロナウイルス政策の転換による効果は不透明であることから、売上高は前期比で微減となる見通し。また、依然としてサプライチェーンの混乱による影響は継続される 状況。
<産業機械事業>
売上高:11,600百万円(前年同期比 8.9%増 ) /営業利益:800百万円(前年同期比 20百万円減 )
CASE関連への需要は拡大が見込めるものの、スマホ・電子部品関係の需要減速は継続すると見込んでいる中で、電力消費量・廃棄物の削減を始めとする環境対応への注目度が高まっている。そのような環境の中、同社は独自技術であるV‐LINE方式により安定した可塑化・計量・射出が可能となり正確で再現性の高い成形の実現はもとより、 従来のハイブリッド機(電動・油圧)に比べ、より環境に配慮した電動式射出成形機の拡販等、高精度かつサステナ ブルなものづくりへ貢献していく。以上の取り組みにより、売上高は前年同期比で増加する見通し。
<食品機械事業>
売上高:8,100百万円 (前年同期比 18.9%増 )/営業利益:500百万円(前年同期比 52百万円増 )
日本での衛生面・省人化対応設備に関連した案件に加え、中華圏及びアジア等の海外市場において米飯装置を中心に生麺、冷凍麺等の需要が大きく伸長する見通し。
<その他>
売上高:7,100百万円 (前年同期比 8.7%増 )/営業利益:700百万円 (前年同期比 386百万円増)
セラミックスの需要は引き続き堅調に推移するほか、金型成形事業においても自動車生産の回復や成形アイテムの拡充を見込んでおり販売が拡大する見通し。
・・・・・・・・・・
2023年12月期の同社グループの業績は、売上高817億円(前期比1.5%増)、営業利益47億円(前期比19.2%減)、 経常利益47億円(前期比43.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益32億円(前期比46.9%減)と予想している。
なお、想定為替レートは、対米ドル期中平均レート130円、対ユーロ期中平均レー トは144円。
コメントを投稿するにはログインしてください。