井関農機、22年売上は5.3%増の1,666億円、23年予想は5.9%増の1,765億円

 井関農機が2月14日に発表した2022年12月期(1~12月)連結業績によると、売上高は前期比8,437百万円増加し、166,629百万円(前期比5.3%増加)となった。

 うち国内売上高は前期比4,758百万円減少の112,638百万円(前期比4.1%減少)となった。農機製品はサプライチェーン混乱に伴う生産遅延や米価低迷・資材価格高騰による購買意欲減退に加え、前期にあった経営継続補助金の反動もあり減少した。また、作業機も補助金反動により減少となった。一方で、補修用部品及び修理整備等のメンテナンス収入は、農機製品の売上が減少する中でも前期を維持した。

 海外売上高は前期比13,195百万円増加の53,991百万円(前期比32.3%増加)となり、前期に続き過去最高の売上高を更新した。北米はコンパクトトラクタ市場が調整局面に入るも、現地在庫レベル回復に向けた出荷は続伸した。欧州はライフスタイルの変化に伴う市場の動きを捉え、コンシューマー向けを中心に販売が伸長、加えて景観整備向け需要の回復に伴うプロ向け販売も増加した。また、Iseki-Maschinen GmbHの連結子会社化による増加もあった。アジアは韓国向けが増加したが、中国向け半製品の出荷減などをカバーできず減少した。

 利益面は、営業利益は前期比613百万円減少の3,534百万円(前期比14.8%減少)となった。各地域で価格改定を実施したが、原材料価格高騰影響の全てをカバーするには至らず収益を圧迫、加えて販管費も増加した。経常利益は前期比924百万円減少の3,762百万円(前期比19.7%減少)となった。為替差益の増加はあったものの前期に計上した受取和解金の剥落や持分法による投資損失の拡大もあり、減少となった。税金等調整前当期純利益は前期比890百万円増加の5,257百万円(前期比20.4%増加)となった。減損損失の計上はあったものの、Iseki-Maschinen GmbHの連結子会社化による段階取得に係る差益及び負ののれん発生益や中国の持分法適用関連会社が実施した第三者割当増資に伴う持分変動利益など特別利益の発生により増加となった。 親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比922百万円増加の4,119百万円(前期比28.9%増加)となった。

 2022年12月期における世界経済・日本経済は、新型コロナウイルス感染症対策の進展や行動制限の緩和により緩やかな持ち直しの動きが見られた。一方で、国内外ともに原材料価格の高騰や、サプライチェーンの混乱による供給制約に加えてロシアのウクライナ侵攻など、先行き不透明な状況が続いている。このような状況の中、井関農機グループは、国内では顧客対応の充実など農業構造変化への対応強化、海外では主力市場である北米、欧州、アジアでの販売強化に努めた。

 井関農機2022年データ

■商品別の売上状況

〔国内〕
 整地用機械(トラクタ、耕うん機など)は22,908百万円(前期比4.3%減少)、栽培用機械(田植
機、野菜移植機)は7,907百万円(前期比12.9%減少)、収穫調製用機械(コンバインなど)は16,090
百万円(前期比3.3%減少)、作業機・補修用部品・修理収入は42,023百万円(前期比3.1%減少)、
その他農業関連(施設工事など)は23,708百万円(前期比2.8%減少)となった。
〔海外〕
 整地用機械(トラクタ、芝刈機など)は41,076百万円(前期比33.3%増加)、栽培用機械(田植機
など)は1,467百万円(前期比34.1%減少)、収穫調製用機械(コンバインなど)は1,867百万円(前期
比20.5%減少)、作業機・補修用部品・修理収入は4,892百万円(前期比33.6%増加)、その他農業関連は4,687百万円(前期比169.1%増加)となった。

■今後の見通し

 2023年12月期連結業績見通しは、売上高176,500百万円(前期比5.9%増)、営業利益4,500百万円(同27.3%増)、経常利益4,000百万円(同6.3%増)、親会社株主に帰属する純利益2,600百万円(同36.9%減)。

 次期の取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症は、収束までの見通しが不透明な状況であるものの、ウィズコロナの浸透により社会活動や経済活動も緩やかに回復していくものと仮定している。また、同社グループの販売面における影響は限定的も、原材料価格の高騰やサプライチェーン混乱などのリスクは残るものと考えている。一方で食料の安定供給や食料自給率の向上など食への関心の高まりもあり、食を支える農業や、人々の暮らしを支える景観整備事業はエッセンシャルビジネスとして重要度が再認識されている。これらを支える同社グループは、今後も無くてはならない企業であり続けるために変革し続け、企業価値向上に努めていく。

 次期の連結業績見通しは、国内市場は資材価格高騰影響に伴う農機需要への影響等も懸念されるが、経営継続補助金の反動一巡や米価の下げ止まりもあり、横ばいで推移するものと見ている。国内売上高は、農業の構造変化に対応した大型機械・スマート農機の増販及び、価格改定効果などにより増収を見込んでいる。

 海外は、北米のコンパクトトラクタ市場は引き続き調整局面と想定しているが、現地の適正な在庫レベルに向け出荷を進めることで前年並みの売上高を見込んでいる。欧州は同社グループのプレゼンスが高いプロ向けマーケットを中心に増収を見込んでいる。限定販売を開始した電動モーアを足掛かりに、プロ向け電動商品の展開を加速させ、環境に優しい商品の拡充を進めていく。アジアは、タイの連結子会社IST Farm Machinery社などによる販売網強化の推進や、2022年度よりタイ市場で販売を開始したインド製低価格小型トラクタの拡販などにより増収を見込んでいる。
 収益面では、原材料価格高騰に伴う収益圧迫はあるものの、増収及び価格改定による売上総利益の増加に加え、構造改革と経営効率化の更なる取り組みにより増益を見込んでいる。

 井関農機の2022年12月期決算短信
 決算補足説明資料