・超大型陸上風力発電施設建設を短工期で施工可能な新型クレーンを開発
IHI運搬機械(本社:東京都中央区)は5月10日,清水建設と㈱エスシー・マシーナリ(清水建設の100%子会社)と共同で,5兆円の市場規模が見込まれる陸上風力発電施設建設工事の超大型施設の建設に対応できる,国内最大・最高性能(揚重能力1,800t-m)の移動型タワークレーン「エスムーバル タワークレーン」の設計・製作に着手したと発表した。このクレーンは,2023年6月の完成を予定している。これにより,陸上風力発電施設を短工期で効率的に建設することが可能となる。
我が国では,「2050年脱炭素宣言」を受け,再生可能エネルギー,とりわけ風力発電への期待が高くなっており,洋上,陸上ともに建設計画が目白押しの状態である。移動式タワークレーンを用いる陸上風力発電については,建設地が非常に限られるものの旺盛な新設需要があり,かつFIT(固定価格買い取り制度)導入時期に建設された施設の耐用年数経過に伴うリプレース需要も発生している。そうしたなか,FIT期間満了後の売電単価の下落や建設効率を勘案すると,発電効率の高いより大型の施設の建設が不可欠になる。
一方,これまで用いてきた移動式タワークレーンでは,高さ100m・4MWの中型施設の建設が限界だった。これ以上の規模の施設を建設するためには特殊な大型クレーンが必要となるが,非効率で実用的ではありません。そこでIHI運搬機械は,陸上では最大となる高さ150m・5MWの超大型施設の建設が可能で,国内では最大・最高性能のS-Movable Towercraneの設計・製造に着手した。
このクレーンの最大作業高さは,152m,最大揚重能力は,145t・半径12.5m(≒1,800t-m)。移動型の最大の利点は,陸上風力発電設備の施工で不可欠となるクレーンの移設を柔軟に行えること。S-Movable Towercraneでは,マストの1部と基礎部を解体するだけで,タイヤ式の自走式搬送車両(ドーリー *1)で次の建設ヤードに移動することができ,工期は大きく短縮。発電事業者は工期・費用の面で大きなメリットを享受できる。またこのクレーンには,リモートモニタリング機能や遠隔操作など,先進のICT技術を搭載する予定である。
S-Movable Towercraneの開発は,IHIグループ「プロジェクトChange(*2)」の経営重点課題のうち,エネルギーと産業機械の分野で脱CO2と地産・地消インフラを実現するための取り組みである。
IHI運搬機械は,国内最大のシェアと実績を誇る建築用タワークレーンとともに,そこで培ってきた技術を,今後は国内最大のS-Movable Towercraneや,洋上風力発電設備建設用クレーンなど新エネルギー分野へ展開し,カーボンソリューションを実現する荷役機械を創出していく。
<注記>
(*1)ドーリー:主に空港や物流倉庫でコンテナ等の運搬時に使用するタイヤ式の搬送車両を言いる。
(*2)プロジェクトChange:2020年11月に,中期経営計画「グループ経営方針2019」で定めた基本的なコンセプトを継承しつつ,2022年度までの期間を環境変化に即した事業変革への準備・移行期間と位置づけ,策定した取り組みを言いる。