ヤマシンフィルタが2月4日に発表した2021年3月期第3四半期(4~12月)連結業績によると、売上高は103億94百万円(前年同期比13.2%増)となり、営業損失は1億46百万円(前年同期は6億円の営業利益)、経常損失は1億33百万円(前年同期は5億1百万円の経常利益)、親会社株主に帰属する四半期純利益は3億84百万円(前年同期比11.3%増)となった。
■4~12月期の概況
主力事業である建機用フィルタ事業における建設機械市場においては、新型コロナウィルスの影響により停滞していた主要得意先各社の生産活動は各国で再開され、日本、米国、欧州市場において需要は増加し、中国を除くアジア市場においては足元の需要は減少した。
一方、中国市場では、主要得意先各社の市場占有率の減少傾向が続く中、中国系建機メーカーの市場占有率拡大が顕著であり、経済活動の本格的な再開に伴い、産業補助金拡大による政府主導の投資促進策や消費刺激策の効果等もあり、油圧ショベルの新車販売台数は対前年比で過去最大の販売台数を記録するなど、需要は大幅に増加した。同市場では、今後も、公共事業投資に伴う建機需要の下支えや、2022年度以降に予定される第4次環境規制対応に向けた新車の駆け込み需要等が想定され、引き続き需要の増加が見込まれる。
同社グループは、既存ビジネスである建機用フィルタ事業においては、油圧ショベルの作動油回路用リターンフィルタ製品を中心に、新素材やIoT技術を活かした製品ラインナップの充実を図り、純正部品の採用率向上に努めた。とりわけ、世界最大の建機市場である中国市場においては、中国系建機メーカーへのリターンフィルタ製品を主軸としたヤマシンフィルタ製品の新規採用に向けた取り組みを強化しており、その採用実績は増加している。
また、もう一つの主要市場である北米市場においては、主要製品であるリターンフィルタ製品に加え、燃料用、トランスミッション用フィルタ等の新規採用活動についても大きな進展を見せている。更には、独自に開発した合成高分子系ナノファイバー「YAMASHIN Nano Filter ™ 」を使用したロングライフのフィルタ製品やタンク内の気泡を除去するエアレーション技術、フィルタの汚染度や交換頻度を感知するセンサ技術を搭載したフィルタ製品の主要得意先への積極的な提案を行っている。
エアフィルタ事業においては、新型コロナウィルス感染拡大に伴う社会・生活様式の変化に伴い感染症対応を訴求したフィルタ製品の需要が増加することが見込まれることから、エアフィルタを取り巻く市場環境は今後も堅調に成長するものと捉えており、合成高分子系ナノファイバーの量産化技術を活用した新製品の開発を継続し、新規事業領域への参入を積極的に進めている。
ヘルスケア事業においては、新型コロナウィルスの感染拡大によるマスク需要が爆発的に増加した結果、家庭用マスク市場は約5,000億円を超える市場規模に急拡大し、来事業年度以降もウィルス感染予防に対する意識の定着等により通年着用の習慣化が進むと見込まれる。
このような背景の中でマスク供給の約60%強を占める海外製の不織布マスクから、消費者ニーズは品質重視の志向性が強まり、安価で品質の劣る海外製のマスクについては淘汰され、良質な日本製・国産マスクの需要が拡大することが見込まれる。また、医療用マスク市場においては、N95マスクなど主力製品を海外メーカーからの供給に依存するサプライチェーンリスクの反省を踏まえ、日本企業による国内生産が強く求められている。
同社は、こうしたマスク市場の拡大と消費者ニーズの変化に応えるために、独自技術である合成高分子系ナノファイバーを活用した「究極のヤマシン・フィルタマスク」並びに「究極のヤマシン・フィルタシート」の販売を公式オンラインショップや主要ドラッグストアチェーン、大手ECサイト等を通じて第2四半期より暫時開始した。
一方、ヤマシンフィルタのマスク量産体制については、他に例のない立体構造のナノファイバー素材のフィルタシートを使用した製造工程の確立に多大な時間を要したことから、ドラッグストア市場等への供給が大幅に遅延した。また、量産体制構築の過程では製造原価の低減が十分に図れなかったこと等により、第3四半期のヘルスケア事業の業績は著しく低調に推移した。
今後、同社グループは、国内一般消費者向けマスク市場のみならず、逼迫する医療現場等において需要の拡大が見込まれる医療用の高機能マスクの増産に対応すべく、必要とされる認証の取得により、医療用の防塵マスク市場への進出を視野に入れ、更なる高機能マスク開発に邁進するとともに、製品ラインナップ及び販路の拡大に取り組み、自社開発ナノファイバーの特性を活かした独創的な製品開発による差別化戦略により、来期以降収益の最大化を実現させていく。
今後、アパレル分野へのヤマシンフィルタ製品の供給が本格化することにより、動物愛護の観点からアパレルメーカー各社がESGへの取組みとして掲げている「脱ダウン」に大きく貢献できると考えている。
■2021年3月期の見通し
2021年3月期の連結業績予想は、売上高145億5,000万円(前期比14.8%増)、、営業利益4,000万円(同94.9%減)、経常利益6,000万円(同90.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益5億円(同17.8%減)と修正した。
新型コロナウィルスの感染拡大第2波、第3波の影響などにより、世界経済全体や為替動向には依然として先行き不透明さが残る中、主力の建機用フィルタ事業は、日本、北米、欧州各国においては、停滞していた主要得意先各社の生産活動は前年度と同水準まで回復傾向にあり、同社フィルタの需要は増加している。
また、世界の油圧ショベルの販売の6割以上を占める中国市場では、日系メーカーを中心とした主要得意先各社のシェアが大幅に縮小し、中国系建機メーカーの市場シェア拡大が継続する中、主力のリターンフィルタを中心とした製品の中国系建機メーカーへの標準品採用が着実に進捗している結果を踏まえ、増収が見込まれる。しかし、コロナ禍により世界的に発生しているコンテナ不足の影響から輸送コストが高騰し、材料調達や得意先への納期対応に係る航空運賃の継続的な発生による減益が見込まれることから、通期業績予想を修正した。
第3四半期決算説明資料(88ページ)
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