・一般海域ラウンド案件で初、国内サプライチェーン構築へ弾み
JFEエンジニアリング(東京都千代田区)は12月26日、秋田県男鹿市、潟上市及び秋田市沖における洋上風力発電事業向けのモノパイル式基礎の製造輸送業務を鹿島建設から受注したと発表した。再エネ海域利用法に基づく公募選定案件での国産モノパイル採用は今回が初めてとなり、国内洋上風力サプライチェーン構築における重要なマイルストーンとなる。
事業者は男鹿・潟上・秋田Offshore Green Energy合同会社で、本案件はラウンド案件の中で最も早く運転開始される予定。JFEエンジは2026年1月から2027年3月にかけて、モノパイル(MP)及びトランジションピース(TP)計21基を製造・輸送する。
■笠岡製作所での量産体制確立
製造は岡山県笠岡市のJFEスチール西日本製鉄所構内に立地する笠岡モノパイル製作所で実施される。同製作所は2024年4月に竣工した国内唯一のモノパイル製造拠点で、100年にわたる大型鋼構造物製造で培った技術を結集している。
最大規模のモノパイルは重量約2,000トン、直径10.5メートル、板厚100ミリ、長さ約80メートルに達する。総鋼材重量は約4万3,000トンで、鋼材等級SM520Cを採用する。
同製作所の特徴は、極厚鋼材の高効率・高品質な溶接技術と、JFEスチールが開発した風力発電用大単重厚鋼板「J-TerraPlate」の使用にある。これにより溶接延長を大幅に削減し、重量約2,500トンクラスの超大型モノパイルを年間50本程度、安定的に量産できる体制を構築した。
■柔軟な輸送体制で現場をサポート
広大な敷地を活用した十分なストック力と、モノパイル輸送専用船の確保により、施工現場の状況に応じた柔軟かつタイムリーな出荷・輸送体制も整えている。
JFEエンジはモノパイルの詳細設計から製造、輸送まで、洋上風力発電プロジェクトを総合的にサポートする体制を確立。今後も再生可能エネルギーの普及拡大を支える国内サプライチェーンの一翼を担い、カーボンニュートラル社会の実現に貢献していく方針だ。
■業界への波及効果に期待
国内初となる一般海域案件での国産モノパイル採用は、洋上風力発電産業における国内製造基盤の確立を示す象徴的な事例となる。政府が掲げる2040年までの洋上風力3000万から4500万キロワット導入目標の達成に向けて、今後控える複数のラウンド案件でも国産サプライチェーンの活用が加速すると見られている。
秋田沖の本事業は、日本の洋上風力産業が本格的な商業運転フェーズに入ることを示す重要なプロジェクトとして、業界内外から注目を集めている。
<事業概要>
受注範囲:MP・TP計21基の製造・輸送
工期:2026年1月〜2027年3月
鋼材重量:約4.3万トン
製造拠点:笠岡モノパイル製作所(岡山県笠岡市)
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