蓄電池製造設備の革新へ―業界横断プロジェクト「Swiftfab」が始動

・日立など9社が共同事業体設立、デジタルツイン技術で製造プロセスを大幅効率化

・産業界が結集、新たな製造モデル構築へ

一般社団法人電池サプライチェーン協議会(BASC)に加盟する設備関連企業9社は12月18日、蓄電池製造設備産業の強化に向けた共同事業体「Swiftfab Energy Systems株式会社(仮称)」の設立で合意した。2026年4月の設立を予定しており、東京都港区に本社を置く。

共同出資者は、西部技研、コマツNTC、東伸、豊電子工業、平田機工、日立製作所、リコー(リコーエレメックス)、ジェイテクト、大気社の9社。各社の強みを結集し、産業横断型の製造プラットフォーム構築をめざす業界初の取り組みとなる。

■国際競争力向上へ7つの重点課題に対応

本プロジェクトは、経済産業省が策定する蓄電池産業戦略における7つの重点課題の一つ「電池設備産業の構造変革」に対応するもの。国内安定供給体制の強化と、日本の蓄電池産業の国際競争力向上を目的としている。

事業の特徴は、建屋・設備・生産装置・システムを一体で設計・開発し、蓄電池製造ラインとして統合したソリューションを共同で構築・展開する点にある。これにより、短期間・低コストでありながら高品質を両立する電池製造拠点の提供実現をめざす。

■日立、デジタルツイン技術開発で参画

株式会社日立製作所は、共同事業体の設立準備に参画し、DX実現による課題解決をめざす。具体的には、蓄電池製造工程のデジタルツイン実現のコアとなるシミュレーション技術の開発に取り組む予定だ。

現場の設備やラインの多様なデータを収集・蓄積してデジタル空間で事前検証することで、設計段階のリードタイム短縮を実現。さらに、統合シミュレーションや性能予測シミュレーションにより因果関係の解析と高精度な予測を可能とし、生産立ち上げ後の調整期間の短縮をめざす。

日立は「HMAX Industry」と呼ばれる、現場データ、ドメインナレッジ、先進AIを組み合わせたデジタルサービスを提供。蓄電池などの成長産業への水平展開を進める「Integrated Industry Automation」の一環として、本事業に注力する方針だ。

■長期化する製造プロセスの課題を解決

蓄電池製造は工程が精密かつ複雑で、高い品質管理が求められる。装置ごとにサプライヤーや仕様が異なると、生産ラインの各装置や建屋間の連係時のすり合わせに多大なコスト・時間を要するのが現状だ。

また、案件ごとに材料や生産量などの条件が異なるため、装置や生産ラインの設計リードタイム、生産ライン立ち上げ後のOEE(総合設備効率)が安定するまでの調整期間が長期化する傾向にある。特殊環境構築のための工場大型化やエネルギー消費の増大も、国内の蓄電池製造拡大における課題となっている。

■共創型産業インフラとして拡張予定

本事業で得られた成果は、今後BASC会員企業にも順次開放し、「共創型産業インフラ」として拡張していく予定。国内製造設備産業の強靭化と、日本発の競争力ある産業モデルの構築が期待される。

BASCは電池材料・設備・製造・サービスなど幅広い分野から244社(2025年11月時点)が参画する電池業界団体。脱炭素社会(GX)・デジタル社会(DX)の実現に不可欠な電池産業の競争力強化に向け、個社単独では解決が困難な共通課題に業界全体で取り組む活動を進めている。

本事業においては、技術標準や国際展開の調整、他のBASC会員企業への情報共有等を通じて共同事業体をサポートする方針。

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