日立レール、スイス鉄道の大規模デジタル化プロジェクトに参画

・総額15億ユーロ、20年計画で連動装置の8割を更新

2025年12月18日 – チューリッヒ発、日立製作所の鉄道システム事業部門である日立レールが、スイス連邦鉄道(SBB)との間で大型フレームワーク契約を締結した。スイス全土の鉄道ネットワークにデジタル信号技術を導入する本プロジェクトは、総投資額約15億ユーロ(約2,745億円)に達する見込みで、欧州における鉄道インフラ近代化の重要事例となる。

■20年で既存設備の8割を刷新

本プロジェクトでは、今後20年間にわたってスイス国内の既存連動装置の約80%を最新世代のデジタルシステムに更新する。日立レールは、デジタル連動装置および無線閉塞センターを供給し、全国的な車上信号システムの基盤構築を支援する。

連動装置は信号機や転てつ器を統合制御し、駅構内や車両基地での車両の安全な進路制御を担う中核設備である。デジタル化により、線路設備の簡素化、保守作業の効率化、環境性能の向上が期待されている。

■欧州標準規格に準拠したスマート制御技術

日立レールが提供するソリューションの特徴は、新しい欧州標準規格(EULYNX)に準拠したスマート制御装置の採用にある。この装置は転てつ器、信号機、線路区間の制御・監視に加え、センサー情報を含む設備状態データの収集・報告機能を備える。これにより、予知保全の実現が可能となり、設備故障の未然防止と保守コストの削減が見込まれる。

■契約期間と保守体制

フレームワーク契約の初期期間は10年間で、オプションにより最大25年間まで延長可能。初期契約には提供システムに対する25年間の保守・サポートが含まれており、長期的な運用安定性が確保される。

日立レール スイス法人の社長、クルト・ザウアーヴァイン (Kurt Sauerwein)氏は、「デジタル連動装置の導入は技術革新のマイルストーンであり、スイス鉄道ネットワークの効率性と持続可能性を高める」とコメント。さらに「スイスのモビリティ分野における国際的リーダーとしての地位をさらに強化する」と、プロジェクトの戦略的意義を強調した。

■業界への波及効果

本プロジェクトは、欧州における鉄道インフラのデジタル化の先進事例として、他国の鉄道事業者にも影響を与える可能性がある。特にEULYNX標準の採用は、欧州全体での相互運用性向上と設備調達の効率化に寄与すると見られる。

日立製作所は、グローバルで約28万人の従業員を擁し、2024年度の売上収益は9兆7,833億円に達している。鉄道システム事業は同社のモビリティセクターの中核事業として、世界各地でインフラプロジェクトを展開している。

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