・河川改修の効率化へ新技術
技研製作所は12月18日、河川や沿岸部での浸水に耐える防水仕様の杭圧入引抜機「サイレントパイラー」を開発し、名古屋市の大江川改修工事で初の実用化に成功したと発表した。水位上昇時の機械退避が不要となり、工期短縮と施工の柔軟性向上を実現する。
■水位上昇時の工事中断を解消
近年、都市部の河川インフラ維持・改修工事では、ゲリラ豪雨等による急激な水位上昇への対応が課題となっていた。従来は圧入機が水没する恐れがある場合、工事を中断してクレーンで機械をつり上げ退避させる必要があり、その後の再設置に時間を要していた。
新開発の防水仕様機は、低空頭専用機種「クリアパイラー」をベースに油圧機器や電装部品を改良。現段階で水深2メートル、水圧0.02メガパスカルまで対応可能だ。これにより、従来は作業中断を余儀なくされた条件下でも連続施工が可能となる。
■名古屋の現場で有効性を実証
市場投入に向け、グループ企業の技研施工(高知市)が名古屋市港区の大江川改修工事で初の現場施工を実施した。同工事は大江川埋め立て事業の一環で、鋼矢板による止水壁を構築するもの。
施工現場は干満差2.3メートルで、満潮時には圧入機のサドル部分(設置済の杭をつかむクランプの取付基盤)が水に浸かる厳しい条件。8月23日から約1カ月間、防水仕様の「サイレントパイラー」(クリアパイラーCLW100)を使用し、名古屋臨海鉄道東築線の高架下という難所で機械を撤去することなく工事を完了させた。発注者は名古屋市緑政土木局、元請業者は不動テトラ。
■耐水性能向上へ検証続く
防水化にあたっては、油圧機器をカバーで覆うなど専用処理を施し、電気機器は防水規格品に刷新。各アクチュエータにも個別の浸水対策を講じた。
性能検証では、同社施設内に設置した1メガパスカル(水深約100メートル相当)まで加圧可能な耐水試験装置を使用。今回の工事想定を上回る圧力まで加圧し、十分な防水性能を確認している。
■「水中パイラー」実現へ
今回開発された防水仕様機は、河川幅が狭く急激な増水の可能性がある現場で特に有効性を発揮する。同社は来年、機械がほぼ水中に浸かる環境下での完全防水仕様の実証施工を予定。この検証をクリアすれば、クリアパイラー以外の機種への展開も進める方針。
将来的には圧入機上部の防水化や腐食防止コーティングなどで耐水性能をさらに向上させ、遠隔操作や自動運転機能と組み合わせることで、海底や川底での作業を可能にする「水中パイラー」の実現を目指す。気候変動に対応した河川整備工事の有効な解決策として、橋脚や河川護岸などの老朽化対策工事への技術提案を進めていく。
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