・岩手に新工場、タイ第2工場も活用しAI・データセンタ向け需要に対応
古河電気工業(東京都千代田区)は12月17日、AI・データセンタ市場で需要が急拡大する信号光源用高出力DFBレーザダイオードチップの生産能力増強に向け、国内外での製造体制を強化する。岩手県北上市に新たな製造工場を設置するとともに、タイの第2工場に検査・組立設備を導入し、2028年には生産能力を2025年度比で5倍以上に引き上げる。
同社は、グループ会社である古河ファイテルオプティカルデバイスを通じ、ジャパンセミコンダクター(JSC)岩手事業所内に新工場を新設する。投資総額は約380億円を予定しており、量産開始は2028年4月を計画する。加えて、Furukawa FITEL(Thailand)の第2工場(2026年2月竣工予定)内に、DFBレーザダイオードチップの検査・組立工程を担う設備を導入する。
背景には、クラウドサービスや生成AIの普及に伴うデータセンタ通信量の急増がある。ネットワークの伝送速度は従来の400Gbps以下から800Gbps、さらには1.6Tbpsへと高速化が進んでおり、光トランシーバ向け光源の高性能化と安定供給が求められている。特に、小型・高集積、低消費電力を特長とするシリコンフォトニクス技術の普及により、単一波長で高出力なDFBレーザダイオードチップの重要性が高まっている。
また、ハイパースケールデータセンタやエッジデータセンタでは、処理能力向上と電力消費削減が大きな課題となっており、CPO(Co-Packaged Optics)を用いた次世代ネットワークスイッチの導入が進む見通しだ。古河電工のDFBレーザダイオードチップは、CPO向け外部光源であるELSFPへの採用も見込まれている。
同社は2000年からDFBレーザダイオードチップの製造を手掛け、業界最高水準となる100mWの高光出力と高信頼性を実現してきた。今回の岩手新工場では、半導体製造で実績を持つJSCの協力を得ることで、高効率かつ安定的な供給体制を構築する。国内での前工程と、タイでの後工程を組み合わせたグローバルな生産分業により、需要変動への柔軟な対応も可能とする。
古河電工は、今回の設備投資を通じて、AI・データセンタ向け光デバイス事業の競争力を一段と高めるとともに、次世代情報通信インフラの基盤を支える製品供給を強化していく方針だ。
<プロジェクト概要>
プロジェクト名:信号光源用高出力DFBレーザダイオードチップ生産能力増強
投資額:約380億円
国内拠点:古河ファイテルオプティカルデバイス 岩手工場(岩手県北上市北工業団地6番6号、JSC岩手事業所内)
海外拠点:Furukawa FITEL(Thailand)第2工場
国内工場量産開始:2028年4月
海外工場竣工:2026年2月(予定)
生産能力:2028年に2025年度比5倍以上
用途:AI・データセンタ向け光トランシーバ、CPO/ELSFP用光源