・遠心式チラー/ヒートポンプの信頼性と立ち上げ性能を大幅向上
・ダンフォス(Danfoss):2025年12月10日

冷凍・空調機器向けの油冷/無給油技術を拡張する「ダンフォスEXO(EXO – Extended Oil-Free)」プログラムの一環として、ダンフォス(Danfoss)は新型「PTSステージングバルブ(PTS staging valve)」を市場投入した。データセンターや病院、産業プロセスなど、安定稼働が必須となるクリティカル用途向けに設計されており、遠心式チラーおよびヒートポンプの性能・信頼性を高めるとしている。
PTSバルブは、わずか5秒以内で作動する極めて高速な応答性が特徴で、圧縮機サージの抑制や、起動・停止時のシステム安定性の確保に寄与する。同社ダンフォス・クライメートソリューションズ(Danfoss Climate Solutions)のシニアプロダクトマネージャー、シーフォン・ビアン(Xuefeng Bian)氏は次のように述べる。
「PTSステージングバルブはサージを抑制し、圧縮機の運転を安定化させることで、最も厳しい条件下でもスムーズで信頼性の高いシステム性能を実現します」
■起動時のサージ防止と圧縮機保護
遠心圧縮機で起動時に発生しやすいサージ(低圧による不安定挙動)を防ぐため、PTSバルブは急激な圧力変動を検知すると直ちに作動し、圧縮機内の圧力を安定化させる。これにより部品損傷リスクを低減し、システム寿命の延長にもつながる。負荷バランス用バルブとしての利用も可能だ。
起動時にはバルブが5秒以内に開き、蒸発器を介して吐出側と吸込側を接続。吐出側のチャッキバルブが開く前に十分な圧力を確保するため、ガスの逆流を防ぎ、圧縮機を内部衝撃から保護する。結果として、迅速かつ効率的な立ち上げが可能となる。
■停止時の安定動作と保護機能
停止時には、PTSバルブが素早く圧力を解放し、軸受などの重要部品を過大荷重から守る。通常停止ではバルブが開き、圧縮機が徐々に減速するため、スムーズな停止が可能だ。万一の故障や停電時には吐出側バルブが閉じ、PTSバルブが即時開弁して内部圧力を逃がす仕組みとなっている。
■主な特長(PTSステージングバルブ)
• 高耐久性:無給油用途に適した高品質素材を使用し、長期信頼性と低メンテナンスを実現
• 幅広い冷媒に対応:A2Lを含む一般的な冷媒に対応
• 高速応答:起動時に素早く開き、停止時にはソフトクローズ。5秒以内の高精度動作
• 柔軟なサイズ展開:KV値18〜38のモデルで幅広い容量に対応
• 容易な組み込み:EKF、EKE100、Alsmart®などダンフォス製ステッピングバルブドライバーと互換
■ターボコア(Turbocor®)圧縮機向けに最適化
PTSバルブは、特にダンフォスの「TGx」「TTx」シリーズのターボコア(Turbocor®)遠心圧縮機に合わせて最適化されており、厳しい圧力比が要求される条件下でも高い安定性と効率を提供する。
■従来型バルブとの比較優位
• 単一バルブで大流量対応(高KV値)
• 高速開閉(5秒以内)で圧縮機損傷リスクを低減
• 高度なシール技術による高い気密性
• 低圧損構造で、吐出–吸込間バイパスを最適化しガス逆流を防止
■OEM向けの統合性を強化
PTSバルブは3モデル(KV18〜38)をラインアップし、チラー/ヒートポンプメーカーによる多様な容量設計に対応する。また、同ポートフォリオには、ETS膨張弁、各種コントローラー、無給油ボールバルブ(OFC/OFB)など液ライン・吸込ライン・吐出ライン向けコンポーネントも含まれており、OEMは包括的なシステム構築が可能となる。
ビアン(Xuefeng Bian)氏は次のように述べる。
「これらのバルブは当社チラー・ヒートポンプ製品との統合が容易で、HVAC&R分野のエンジニアに柔軟性と高い信頼性を提供します」
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