・タイヤ水平リサイクル実証へ、2027年稼働目指す
ブリヂストンは10月21日、関工場(岐阜県関市)敷地内で使用済タイヤの精密熱分解パイロット実証プラントの起工式を執り行った。タイヤ水平リサイクルの社会実装に向けた重要なマイルストーンとなる。
起工式には山下清司関市長、経済産業省および新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)関係者、施工を担当する東芝プラントシステムの小西崇夫社長ら計32名が参加し、工事の安全と成功を祈願した。
■プロジェクト概要
新プラントは敷地面積約1万5,122平方メートル、使用済タイヤの最大処理能力は年間7,500トン。2027年9月の稼働開始を予定している。投資規模は明らかにされていない。
プラントでは、使用済タイヤを精密熱分解することで分解油や再生カーボンブラックを回収し、タイヤ原材料として再利用するケミカルリサイクル技術の確立を目指す。精密熱分解は、無酸素状態で加熱する際の温度や時間を詳細に制御することで、高品質なオイルやカーボンブラックを高収率で生成できる技術だ。
■NEDO事業の一環、ENEOSと共同開発
本プロジェクトは、ENEOSと進める共同プロジェクトの一環で、2022年2月にNEDOの「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発」に採択された実証事業「使用済タイヤからの化学品製造技術の開発」の研究開発テーマの一つとして位置づけられている。
ENEOSは、回収した分解油をリサイクルオイル化し、合成ゴムの素原料であるブタジエン等の化学品を製造。再生カーボンブラックとともにタイヤ原材料として再利用される資源循環の確立を目指す。
さらに、精密熱分解で得られる再生カーボンブラックは、2024年12月にNEDOに採択された東海カーボンによる実証事業「使用済みタイヤを含む高分子製品からのカーボン再利用技術の開発」においても活用され、新品並みのゴム補強性を持つカーボンブラックの生成技術開発に寄与する。
■段階的な技術開発を推進
ブリヂストンは2022年からケミカルリサイクルへの挑戦を開始。2023年には東京都小平市のBridgestone Innovation Park(BIP)に実証機を導入し、精密熱分解試験を開始した。今回のパイロット実証プラントでは、これらの基盤技術をもとに、量産を見据えた技術確立や、安定した連続運転に必要なプロセス設計、品質管理などの知見獲得、操業ノウハウ構築、人財育成に取り組む。
■関係者コメント
山下関市長は「タイヤ水平リサイクルの取り組みは、関市が環境基本計画で掲げる『自然と産業と伝統文化の調和した心豊かなまち せき』という環境の将来像と合致する。地域の持続可能な発展および循環型社会の実現に大きく貢献されることを願う」と述べた。
ブリヂストンの田村亘之代表執行役副社長兼BRIDGESTONE EAST CEOは「使用済タイヤを『資源』として再び原材料に『戻す』タイヤ水平リサイクルの実現に向けた、当社初の挑戦。本プラントの着工により、関工場はサステナビリティの取り組みにおいて、より一層重要な拠点となる」とコメントした。
■市場背景と今後の展開
グローバルでは自動車・交通需要の増加に伴い、将来もタイヤ需要の拡大が見込まれている。現在、使用済タイヤのリサイクルの多くはサーマルリカバリー(熱回収)により燃料として有効利用されているが、限られた資源の中で需要拡大に対応するため、より高度なケミカルリサイクルの必要性が高まっている。
ブリヂストンは「EVERTIRE INITIATIVE」を通じて、使用済タイヤを「資源」としてゴムや原材料に「戻す」リサイクル事業をパートナーと共に推進。「Bridgestone E8 Commitment」で掲げる「Ecology」「Energy」へのコミットメントを実現し、2050年にサステナブルなソリューションカンパニーとなるビジョンの達成を目指している。
<使用済タイヤの精密熱分解パイロット実証プラント概要>
所在地 : ブリヂストン関工場
岐阜県関市新迫間 20 関工業団地内
敷地面積 : 15,122 平方メートル稼働開始年月 : 2027 年 9 月(予定)
最大処理能力 : 使用済タイヤ 7,500 トン/年
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