●年頭所感(2025年)日本産業車両協会 会長 御子神 隆

 明けましておめでとうございます。
 令和7年の年頭に当たりご挨拶を申し上げます。
 昨年は選挙の年と言われておりましたが、EU議会選挙ではEU懐疑派が増える結果となり、アメリカではトランプ大統領が再登板となりました。ドイツやフランスで政権が揺るがされる状況にあり、韓国でも大統領に対する弾劾が可決されました。
 こうした政治的な変化が経済面でも保護主義的な貿易政策や産業政策につながっていく恐れがあるのではないかと懸念されるところです。
 日本でも、岸田前首相の退陣、そして石破首相の就任から、解散・総選挙という慌ただしい動きがあり、与党の過半数割れという選挙結果は、今後の政策決定プロセスに大きな変化をもたらすものと考えられます。
 こうした中で、今年度ここまでの日本経済の状況を振り返りますと、9月まで実質GDP 成長率は2四半期連続で増加となっており、直近の10~12月期も増加が見込まれております。しかしながら、物価の上昇が続いており、個人消費の回復は見られません。
 なお、産業車両の国内生産額については、1~10月の累計で前年比微増という状況です。これは需要に対して、思うように出荷ができないという厳しい状況を反映していることも一因となっているのではないかと考えられます。
 協会では、今年度も「物流の効率化」、「安全の向上」、「環境負荷の低減」を事業の三本柱として、様々な取り組みを行ってまいりました。
 まず「物流の効率化」に関しましては、いよいよ“物流の2024年問題”の本番を迎え、政府では昨年5月に、物流関連二法の改正を行い、荷役の効率化のため、パレット化の促進、そしてフォークリフトや荷役作業員の適切な配置と作業安全の確保等を打ち出しました。また、AGVやAMRといった無人搬送車等の導入等により、自動化・機械化を図ることも求められております。私どもでも、こうしたご期待に応えて、効率的で働きやすい物流現場を実現していけるよう、製品やサービスの提供、改善に向けた情報発信を
行っております。
 私ども協会も主催団体の一翼を担って昨年9月に開催された「国際物流総合展」では、物流への関心が高まる中、過去最高の8万人を超える来場者をお迎えして、新たな製品やソリューションをご覧いただくことができました。
 産業車両分野では、自動式も含めたフォークリフトや無人搬送車の出展・展示が数多く見られました。
 今年も9月に国際物流総合展イノベーションエキスポを開催いたします。
 さらに来年、令和8年には福岡で初めての国際物流総合展イノベーションエキスポを開催し、東京での国際物流総合展と併せ、年間2回の開催を行うべく、6つの主催団体と共に準備を進めておりますので、ぜひご期待下さい。
 次に「安全の向上」に関しましては、4回目となる「フォークリフト安全の日」を昨年7月3日に開催しました。約180名の来場者をお迎えして、フォークリフトを実際にご利用いただいているお客様の安全の取り組みのご紹介や、フォークリフトの安全な使用に役立つ機器やサービス等の紹介コーナーも設けて、来場いただいた方からも大変参考になったとの評価をいただくことができました。
 また無人搬送車システムに関する国際安全規格の改正が進められており、日本からも会議に代表を派遣して、建設的な提案を行って日本の意見が改正案に反映されるよう努めております。皆様のご支援ご協力をよろしくお願いいたします。
 3つ目の「環境負荷の低減」に関しましては、業界のカーボンニュートラル行動計画のフォローアップ調査の結果、2023年度に製造過程で排出されたCO2を、2013年度比で21%削減することができました。
 また、2050年の実質カーボンニュートラル実現という日本の目標達成に貢献するため、製造過程だけではなく、産業車両の使用段階での排出削減への貢献にも努めております。具体的には、かねてより電気車、さらには水素を燃料とする燃料電池車の開発と普及促進により、スコープ3におけるCO2排出削減に寄与していけるよう取り組んでおりますが、それに加えて、合成燃料の活用も視野に入れて、製造・製品の両面での脱炭素化の取り組みをしっかりと進めてまいります。
 また、フォークリフトを含むガソリン・LPG式特殊自動車に対する排出ガス規制が昨年10月から強化され、さらにディーゼル式特殊自動車に対する次期排出ガス規制も令和9年中に導入されることが決まっております。業界として、これらの規制に適切・円滑に対応していくため、関係省庁とも密接に連携しながら取り組んでおります。
 以上、事業の三本柱に加えて、長年取り組んでおります業界のグローバル化への対応に関しましては、一昨年、4年ぶりに京都で開催した、日欧米中の業界による「アライアンス業界首脳会議」が、昨年は中国の古都、西安で
開催され、欧州、アメリカ、中国の業界代表と共に参加いたしました。環境問題や安全に関する各国の取り組み、自由で公正な貿易の実現、さらには物流の自動化やAIの活用と言った業界の未来の方向性といったテーマで、世界
各国・地域の業界トップが率直な意見・情報の交換を行い、業界全体のアップグレードを図っていく貴重な機会とすることができたことを嬉しく思います。今年も9月にドイツで開催の予定ですので、ぜひ議論を深め、業界の国際連携を高めてまいりたいと思います。
 以上、私ども協会の今年度の活動の一端をご紹介させていただきました。
 日本の物流が大きな転換期を迎えている中で、産業車両業界としましても、物流の結節点や構内物流、イントラロジスティクスにおいて重要な役割を担っておりますので、これからも製品の単なる提供にとどまらず、ソリューションの提案による課題解決へという業界のミッションを広く提示して物流の発展に貢献してまいりたいと考えております。
 会員の皆様のご協力ご支援を引き続きよろしくお願い申し上げます。
 そして経済産業省、国土交通省、厚生労働省、環境省をはじめとする関係御当局におかれましても、協会の活動に関しまして、より一層のご指導ご支援を賜わりますようお願い申し上げます。
 最後になりますが、本年が皆様にとって素晴らしい一年となりますよう心より祈念して、年頭のご挨拶とさせて頂きます。

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