●年頭所感(2025年) 日本ロボット工業会 会長 橋本 康彦

 新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げます。

 さて、昨年を振り返りますと、パリ・オリンピック、パラリンピックでの日本人選手の活躍や大リーグでの大谷選手の活躍など、スポーツでの明るい話題が多くあった一方、国内での能登半島地震や豪雨災害をはじめ、世界各地でも大水害や森林災害など大きな自然災害が多発し、非常に多くの方々が被災されました。
 また、日本を含め約80の国・地域で選挙が行われ、今後の政治流動化への不安を抱かせた一年となりました。

 一方、長引くロシア・ウクライナ情勢やますます複雑化する中東情勢等の地政学的リスクが更に不安定化しつつあります。国際経済もこれら要因に加え、中国経済の低迷や欧米でのインフレ圧力などから回復軌道が見通せない状況にあります。直近の国際通貨基金による世界経済の見通しをみても、一昨年が3.3%の伸びであったのに対し、昨年は3.2%、そして今年も3.2%の伸びに留まるとの観測もあり、様々な懸念を抱えたなかでの年明けとなりました。

 このような状況の下、2024年の我が国のロボット産業は、先に挙げました中国市場の低迷や世界経済の諸リスク、更に米国大統領選前での投資の先送りなどから、受注額で対前年比  1.6%減の約8,300億円、生産額では12.3%減の約7,820億円と、当初見通しを下回ることとなりました。
 そして、今年のロボット市場におきましては、次期トランプ政権での通商政策の行方や米中摩擦の再燃等の不透明感があるものの、米国景気拡大への期待やAIへの大規模投資による半導体や電子機器への需要回復が見られるなど、根強い自動化投資需要の回復をベースに、受注額は対前年比4.8%増の8,700億円を期待するとともに、生産額は6.1%増の8,300億円と見通しております。

 さて当会の今年の活動については、業界活性化のさらなる推進に向け、昨年に引き続き以下の3点を重点項目として取り組む所存です。

 第一は「市場拡大に向けた取組」です。
 当会では、一昨年より経済産業省が実施する「革新的ロボット研究開発等基盤構築事業(通称・ロボフレ事業)」の「施設管理」及び「食品」の2分野における、ロボットフレンドリーな環境構築に必要な研究開発の支援事業に参画しており、今年度がその最終年度にあたりますが、その開発成果普及に努めることとします。
 また、政府では、「中小企業省力化投資補助事業」での省力化投資支援において、「カタログ注文型」に加え、新たに「一般型」を設けることで、ロボットのシステム設備に対する導入支援が拡充されることとなり、それらの施策を通じたロボットの利活用拡大に努めるほか、日本ロボットシステムインテグレータ協会はじめ、関係団体との連携を通じ一層の市場拡大に努めてまいります。

 第二は「イノベーションの加速化に向けた産学連携の推進」です。
 ロボット分野における国際競争は益々激化しており、グローバル市場での我が国の優位性確保や潜在市場の顕在化に加え、様々な社会課題解決に向けても、ロボット・イノベーションの加速化が急務となっています。その対応に向け、引き続き日本ロボット学会をはじめ関係学会及び関連業界との連携に努めることとします。

 第三は「国際標準化の推進、国際協調・協力の推進」です。
 国際標準については、欧米が市場獲得の手段として戦略的に取り組んでいますが、引き続き我が国も官民挙げての取り組みが重要です。特に、ロボットの国際標準化について審議しているISO/TC299では、本年2月に東京会議として、5つのワーキンググループが開催されることとなっており、国際標準化活動に対して、ロボットのリーディングカントリーとして引き続き積極的に取り組むこととしております。また、国際ロボット連盟を通じた活動並びに国際交流を積極的に推進していく所存です。

 加えて、本年4月13日から10月13日まで、「2025大阪・関西万博」が開催されますが、その開催に併せ、当会が2023年度にスタートした2050年に向けての「ロボット産業ビジョン」の最終版を現在、鋭意取り纏め中です。
 そして6月4日~6日にかけ「第26回実装プロセステクノロジー展」を、また、12月3日~6日にかけて「2025国際ロボット展」の2つの展示会を東京ビッグサイトで開催します。両展示会を通じて技術情報の発信とともに、様々な分野へのロボット利活用拡大への意欲を喚起することに加え、市場調査、技術振興等の各事業を意欲的に展開する所存です。

 引き続き関係各位の一層のご支援とご協力をお願い申し上げますとともに、皆様のご活躍とご発展を祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

 日本ロボット工業会HP