●年頭所感(2025年) 一般社団法人 日本機械工業連合会 会長 東原敏昭

 新年明けましておめでとうございます。年頭に当たり、平素より当会にお寄せいただいている皆様方の温かいご支援とご協力に、改めて深く御礼申し上げます。本年の干支である「乙巳(きのと・み)」は、「成長の途中」と「内なる変化」を表します。2025年は、柔軟に適応しながら、へびのように着実に前進し続ける年になりますよう、機械産業においても皆様方が「変化と前進」を遂げられる年となることを心より祈念いたします。

 世界情勢を見ると、ウクライナや中東の情勢等、不透明な要因も多く存在し、アジアを含めた世界の安全保障環境のさらなる不安定化が懸念されます。また、昨年の米国大統領選挙の結果、誕生するトランプ新政権の政策運営には注視が必要です。いずれにしても激動の年となることが予想されます。

 こうした中、製造業は保護主義の台頭、エネルギー価格の高騰、バリューチェーンの脆弱化等の多くの課題に直面しています。欧州におけるデジタルプロダクトパスポート(DPP)や炭素国境調整措置(CBAM)導入といった環境関連規制の動きに対しても迅速に対応する必要があります。デジタル・トランスフォーメーション(DX)やグリーン・トランスフォーメーション(GX)も機械産業が直面する待ったなしの課題ですが、こうした変化を新たな成長の機会と捉え、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会(RRI)ともども、会員の皆様と連携して対応してまいりたいと存じます。国内外の激しい変化に迅速に対応し、機械産業の課題解決と未来に貢献するためには、機械産業の皆様や政府と手を携えつつ、機械産業の横断的な課題に取り組む役割をしっかりと果たしてまいる所存です。

 以下は昨年から本年にかけての主な活動です。

① 昨年は、日機連にとって大きな決断を致しました。日機連の活動をより効率化、活性化させるため、事務所を新宿区にある高田馬場センタービルに移転することを総会において決定、2025年1月14日より新事務所にて業務を開始いたします。新事務所では、会員講演会や各委員会、総会、理事会などの会合だけでなく、今後益々増える国際会議などの需要にも対応するとともに、WEB活用にも対応すべく、会議室の拡充やITインフラ整備を行いました。
 会員の皆様にも先進的で効率化された新事務所を委員会活動などでご活用いただければと存じます。

② 次にRRIへの活動支援についてご紹介いたします。RRIは、成長戦略の一環である政府の「ロボット新戦略」に基づいて2015年に発足してから10年が経過し、現在の会員数は約420にのぼります。産業IoTの分野では、ドイツのIndustrie 4.0推進母体をはじめとする海外の関連団体とも密接な国際連携を進めております。
 特に最近では、Gaia-XやInternational Manufacturing-Xなどの海外のデータ連携動向を注視しつつ、データ連携を巡る世界の動きに我が国の産業が適切に対応できるよう、情報発信のハブとして積極的な活動を行っております。昨年10月には経団連が産業データスペースの構築に関する提言を行うとともに、政府もウラノスを中心として施策展開を強化しております。
 また、日機連では昨年RRIと連携し、欧州のDPPに関する調査研究を実施おり、今春にはその報告を公表する予定です。
 今後、RRIとの連携を一層強化しながら協調領域の拡大を目指し、同時進行するDX、GXの課題解決に向けて迅速に取り組んでいきたいと思います。

③ 機械業界の要望内容の策定、およびその実現に向けた要望を中心に税制に関する活動を行っております。「令和7年度税制要望」については、産業界全体でイノベーションを起こし、生産性を向上させ、グローバル市場における日本企業の競争力を強化するため、「GX、DXに向けた設備投資関連税制の拡充、改善」、「研究開発税制の拡充等」、「経済のデジタル化に伴う新たな国際課税制度への対応」の3点を重点項目として要望いたしました。
 また、製造業関連8団体連名で「我が国企業の競争力強化に向けた令和7年度 税制改正共同要望」を策定し、要望項目の実現に向け、共同で陳情活動を展開いたしました。

④ 表彰事業として当会は、経済産業省、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省との共催により、2024年9月、東京ビッグサイトにて第11回ロボット大賞表彰式を実施しました。ロボット大賞表彰事業は隔年で表彰を行っており、昨年も多くの優れた案件の応募をいただき表彰することができました。

 当会は引き続き、機械産業界が更なる発展を実現し、日本の産業競争力の強化に貢献できるよう誠心誠意努める所存ですので、今後とも関係各位の引き続きのご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。最後となりますが、皆様の一層のご健勝とご活躍を心からお祈り申し上げ、年頭の挨拶とさせていただきます。

 日本機械工業連合会 HP