・荏原の航空宇宙分野の事業化へ一歩前進!
㈱荏原製作所(以下:荏原)は11月8日、2022年から開発を進めているロケットエンジン用電動ターボポンプにおいて、2024年9月に実施した液体窒素による性能試験に成功したと発表した。
■背景
荏原は、人と宇宙のつながりを当たり前にすることをミッションに据え、宇宙事業への取り組みを2021年に立ち上げた。それ以来、低コストで自由度の高い輸送手段の確立に貢献するため、ロケットエンジンに燃料を供給する電動ターボポンプの開発を行っている。電動機で駆動する電動ターボポンプ※1は、従来の基幹ロケットに使われているタービン駆動のポンプ※2に比べて、エンジンシステムを簡素化し、高い信頼性と容易な出力制御を実現することが期待される技術。現在、推力3トン級のロケットエンジンを想定した電動ターボポンプの開発を進めており、2023年12月には水試験モデルによる性能試験を完了した。
■概要
今回試験を実施した電動ターボポンプは、ロケットエンジンに液体メタンを燃料として供給することを想定している。今回の試験は、2024年9月初旬に宮城県のJAXA角田宇宙センター内の極低温ターボポンプ試験設備で実施され、実際のロケットエンジンの燃料と同様に極めて低い温度である液体窒素(-196℃)を作動流体として使うことで、低温環境独特の課題に対する設計・製造条件を確認した。十分な時間の運転試験を通して目標の回転速度や計画していたデータが測定でき、ポンプの異常振動や液体窒素の漏洩なども一切見られず、製品が安定して作動していることを確認できた。試験の成功は、荏原が目指す、宇宙への低コストで自由度の高い輸送手段の確立に向けた、大きな一歩と捉えている。
試験名称:ロケットエンジン用電動ターボポンプの性能試験
試験目的:液体窒素を作動流体とした電動ターボポンプの性能試験
試験期間:2024年9月6日~9月13日
場所:JAXA 角田宇宙センター
試験内容:極低温流体使用時の電動ターボポンプの性能が設計通りになっているか、流量、圧力、回転速度などを計測。
■今後の展望
ロケットエンジンのさまざまな運用を想定した複数の運転条件などについて、引き続き基礎的なデータを取得し、同製品を使ったエンジンシステムの実現につなげていく。今後は液体メタン(実液)の試験、また液体酸素用ポンプの製造・試験も進め、両者を合わせたエンジンシステムの実証に向けた取り組みを推進することで、宇宙への輸送手段の新たな選択肢を提供し、社会の課題解決に貢献していく。
荏原グループは、長期ビジョンと中期経営計画に基づいてESG 重要課題に取り組むことで、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指し、企業価値のさらなる向上を図っていく。
※1:羽根車を回転させる動力源として電動機を使用しているポンプ
※2:高温の高圧ガスで回転させるタービンにより、ポンプの羽根車を回転させるポンプ
画像:試験中のロケットエンジン用電動ターボポンプの様子。
コメントを投稿するにはログインしてください。