芝浦機械が5月13日に発表した2024年3月期(2023年度)連結累計期間の受注高は、中国におけるリチウムイオン電池向けセパレータフィルム製造装置の反動減及び景気低迷の影響を受け、1,211億5千5百万円(以下、前年度比36.8%減、海外比率67.3%)となった。売上高は 中国におけるリチウムイオン電池向けセパレータフィルム製造装置の大幅な増加により、1,606億5千3百万円(30.4%増、海外比率73.7%)となった。損益については、規模増加などによる増益効果により、営業利益は136億1千4百万円(136.1%増)、経常利益は146億4百万円(176.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は相模物流施設の事業化に係る相模工場の南側一部敷地の売却益の計上などにより、179億2千万円(178.2%増)となった。なお、相模工場の一部敷地の売却益については、等価交換方式のため譲渡先が譲渡資産土地上に建設した建物の持分取得に充てられている。
2023年度における世界経済は、コロナ禍からの経済活動の正常化が進んだが、中国における景気低迷や米国をはじめ世界各国におけるインフレや金融引き締めなどの影響の継続、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化に加え中東情勢が緊迫化するなど先行き不透明な状況で推移した。わが国経済は設備投資に一部持ち直しの動きが見られたものの、物価上昇や海外景気の下振れによる景気の下押し圧力が継続した。
芝浦機械グループを取り巻く経済環境は、世界的に脱炭素化などの社会課題解決に向けた動きが加速していることを背景として、EV、再生可能エネルギー、労働生産性向上などに関連した需要が継続しているものの、部材・エ ネルギー価格の上昇や中国における景気低迷の影響などにより厳しい状況が継続した。
このような経済環境のもとで、芝浦機械グループは2023年度を最終年度とする中期経営計画である「経営改革プラン」に基づき、高収益企業への変革に向けて、組織再編を中核とした経営改革、成長分野に対応した投資の推進、資本効率(ROE)の向上を目指した財務戦略の実行を推進した。「経営改革プラン」期間中にはコ ロナ禍での経済活動の停滞や、部材需給逼迫、部材・エネルギー価格の高騰などがあったものの、EV関連の設備投資需要の拡大に対応する中で、押出成形機事業が大きく貢献し、「経営改革プラン」最終年度(2024年3月期) の売上高、営業利益、営業利益率の目標値を超過達成した。
■セグメント別の概況
<成形機事業>[射出成形機、ダイカストマシン、押出成形機など]
射出成形機の販売は国内、インドで増加したものの、米国、中国で減少した。受注は国内、 北米で増加したものの、中国における景気低迷の影響により減少した。
ダイカストマシンの販売は、自動車向けが国内、北米、東南アジアで増加、受注は国内、韓国、イ ンドで増加した。
押出成形機は、リチウムイオン電池向けセパレータフィルム製造装置が、販売は中国で大幅に増加、 中長期におけるEVの普及拡大は予測されるものの、足元ではEV需要の伸びの鈍化、EV用電池の生産過剰等が懸念される中、セパレータフィルムの生産性を向上させる次世代機種への切換時期が重なり、受注は中国で大幅な反動減となった。
この結果、成形機事業全体の受注高は895億9千3百万円(42.2%減、海外比率78.3%)、売上高は1,235億2千1百万円(43.7%増、海外比率84.3%)、営業利益は129億5千6百万円(180.9%増)となった。
<工作機械事業>[工作機械(大型機、門形機、横中ぐり盤、立旋盤など)、超精密加工機など]
工作機械の販売は北米におけるエネルギー関連向けが増加したものの、国内の産業機械向けが減少した。受注は北米でエネルギー関連向けが増加したものの、中国における景気低迷の影響により減少した。 超精密加工機においては、販売は中国で車載用光学系金型向けが増加したもののスマートフォン用光学系金型向けが減少した。受注は中国で光学系金型向けが減少した。
この結果、工作機械事業全体の受注高は226億1千5百万円(13.7%減、海外比率47.8%)、売上 高は259億8千万円(4.9%減、海外比率52.6%)、営業利益は5億8百万円(5.2%減)となった。
<制御機械事業>[産業用ロボット、電子制御装置など]
制御機械の販売は国内における電子制御装置及びシステムエンジニアリングが増加した。受注は国内、中国における産業用ロボットが減少した。
この結果、制御機械事業全体の受注高は76億8百万円(17.1%減、海外比率7.4%)、売上高は99億1千9百万円(14.5%増、海外比率6.0%)、営業利益は3億3千3百万円(31.3 %減)となった。
<その他の事業>
その他の事業全体の受注高は13億3千7百万円(3.2%増、海外比率1.1%)、売上高は12億3千1百万円(1.5%減、海外比率1.8%)、営業損失は2億2千3百万円(前年度は営業利益1億4 千1百万円)となった。
■次期の見通し
今後の経済環境は、足元で景気の減速感が続く中、中国での経済不況、長引くウクライナ情勢や中東情勢、物価上昇などにより、先行き不透明な状況が続くものと考えられる。このような状況のもと、世界市場の需要動向を見極めた上で、脱炭素社会、循環型社会の実現へ向けた自動車のEV化、風力発電などの再生可能エネルギー関連へ対応した商品の提供と開発、更なる生産性改善、商品力・生産性の向上を目指したDX戦略の推進などの諸施策に加え、2024年4月よりスタートした中期経営計画「中計2026」 (2027年3月期を最終年度とする)で掲げている事業ポートフォリオの変革を中心とした各施策を遂行していく。
2025年3月期の見通しについては、売上高1,700億円(以下、前期比5.8%増)、営業利益140億円(2.8%増)、経常利益126億円(13.7%減)、親会社株主に帰属 する当期純利益92億円(48.7%減)を予想している。
なお、通期見通しにあたっての為替レートは、1米ドル=145円を前提としている。
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