慧聡網:2019 年10 月14日(ほか現地複数メディアが報道)
建設機械の販売後、建設機械の保守、修理、オーバーホール及び再製造(リマニュファクチュアリング)により、多くのコンポーネントとサービスの需要が起こり、同時に中古建設機械と建設機械レンタルなどの事業も派生する、これら派生する事業の全体をアフターマーケットと呼ばれている。
中国市場の建設機械販売台数と保有台数は世界第1位で、保有台数は750万台あり、建設機械レンタル市場の年間需要は約2兆元、中古建設機械の取引額は4,000億元、コンポーネントと修理のアフターマーケット需要は年間3,000億元である。この記事で討論する狭義の「アフターマーケット」とは、コンポーネントとメンテナンスサービスのアフターマーケット市場のことである。
建設機械の10 年ライフサイクルによると、そのアフターマーケットサービスとスペアーパーツ(中:配件)の販売潜在力は図1 のような正規分布となる。一部の外国メーカーの評価モデルによると、建設機械の全ライフサイクルのアフターマーケット市場潜在力は新品建設機械の購入価格と同じである。この評価モデルによると、中国のユーザーは1 台のパワーショベルの購入に100 万元を費やし、10 年間の建設機械メンテナンスで100 万元かかることを意味している。この中には、燃料油とオペレーターの工賃は含まれていない。建設機械はこれだけの出費に十分報いることが出来るでしょうか? それは非常に難しいことは明らかである。
図2 の青いヒストグラムは、中国市場での建設機械販売価格を示している、上述の評価モデルに従って計算した場合、緑色のヒストグラムがアフターマーケットの潜在力となる。
2018 年のアフターマーケット潜在力は2017 年と比べ若干減少しているが、依然として5,169 億元に達している。中国市場の特殊性とユーザーの慣習を考慮すると、アフターマーケット潜在力は外国市場の60%に過ぎないことから、昨年、中国の建設機械アフターマーケット潜在力も3,100 億元に達している。
理屈から言えば、完成車の市場が飽和状態にあるとき、巨大なアフターマーケットの潜在力は、メーカーと代理店の持続可能な利益伸び率を保証するに十分である。
なぜなら、アフターマーケットの利益率は新品建設機械の粗利率よりも高いからである、しかし、実際の情況はそのようになっていない。
以前、ある代理店のコンサルティングを行ったとき、彼らの2019 年予算では、アフターマーケットはわずか 5%しか占めていないことが分かった。
一部の代理店の店主は、「アフターマーケットは大きく見えるが口の中には入らない「擬似命題」である、やはり完成車販売の方が確実であり、メーカーと代理店は、一般的にアフターマーケットにはまだ注意を払っていない」とこっそりと教えてくれた。
それでは、建設機械のアフターマーケットは何処へ行ったのか?
■欧米の建設機械アフターマーケットの成功例
欧州と北米の成熟した建設機械市場では、メーカーと代理店はアフターマーケットの発展を非常に重視しており、彼らの心中は明快である。月に満ち欠けがあるように、市場にも浮き沈みがあり、建設機械の完成車販売に頼っているだけでは企業の健全な発展を保証できない。新車市場が低迷しているとき、アフターマーケットの収益は企業が「生きて行く」基本的な保証となる。
例えば、スペインのボルボの代理店では、アフターマーケットの吸収率(即ち、アフターマーケットの収益と企業経営コストに銀行利息を加えた割合)は150%以上に達している。言い換えると、アフターマーケットの収益に頼るだけで代理店の生存が維持できる。
2008 年、西側が深刻な金融危機に出くわしたとき、完成車の販売は断崖的下落に見舞われたが、この代理店は従業員を解雇することがなかったのは、アフターマーケットの収益保証があったからである。
筆者は、キャタピラーの北米代理店であるFinning International((芬寧国際公司)とTromond Industries(特羅蒙徳工業公司)2 社の財務諸表をずーと追跡しており、彼らは⾧年にわたってアフターマーケットで素晴らしい成績を収めている(図3 及び図4)。
2018 年の両代理店のアフターマーケットにおける売上高の貢献率は60%を超えており、アフターマーケットの利益貢献率は80%に達し、吸収率は100%を超えている。
<新車販売、中古車、リース、サービスとスペアーパーツ、金融サービス等>
<新車販売、中古車、リース、サービスとスペアーパーツ、発電ユニット>
欧米市場におけるカミンズ(康明斯公司)のエンジン用コンポーネントも70%に達する市場浸透率を実現しており、アフターマーケットの収益は、会社に新たな利益の成⾧ポイントをもたらしているばかりではなく、代理店ネットワークが様々な市場環境の下での生存と健全な発展も保証している。
しかし、あらゆるこれらの成功経験をコピーして中国に持ってくるとすべて失敗するようである。多くの国際的に有名な多国籍企業や、その代理店のアフターマーケットにおける貢献率、コンポーネントの浸透率及びアフターマーケットの吸収率は何れも高くない。
中国の建設機械保有台数は巨大であり、稼働時間も外国と比べても⾧く、多くの輸入コンポーネントの価格も国際市場よりも遥かに高い。本来ならば、中国のアフターマーケット規模は国際市場よりも大きいのに、なぜメーカーと代理店の貢献率が、アフターマーケットにおいてはこのように低いのか?
■原因は何処にあるのか?
・中国市場の特殊性
過去20 年のパワーショベル市場の変化を振り返ると、国内ブランド機の市場シエアは10%未満から今日の60%以上と上昇を続けているが、外資ブランド機の市場シエアー絶対的優位の90%から今日の40%以下に下降している。国産ブランド機と外資ブランド機の二大陣営の20 年間の駆け引きでは、強者が弱者となり、弱者が強者となって、パターンが大きく変わっている。
外資ブランド機のシエアが下がり続けている主な原因は何か? 資金不足でもなく、技術で遅れを取っていることでもない、専門家である薛小平先生は、次のように考えている。
第一に、気候風土に馴染まない、グローバル市場の一般性と中国市場の特殊性の違いで、外資ブランド機の成熟したビジネスモデルは、中国市場では単純にコピーできない。
第二に、傲慢と偏見、多くの外資ブランド機は、中国製造を見下げ、国産ブランド機を軽視し、さらには数万にも上がる「ウサギ」(国産コンポーネントメーカー)と「アリ」(スペアーパーツ店、修理工場とバックパッカー等)を受け入れようとせず、一途に建設機械のアフターマーケットを独占しようと考えている。
第三に、ローカライズした人材が不足している。中国市場には必ず市場と文化を理解する中国人が主導しなければならないのに、多くの外資ブランド機は、中国の従業員と代理店に対する信頼を欠いており、このために従業員と代理店のブランドロイヤルティ(品牌忠誠度)に影響している。
中国のアフターマーケット自体にもその特殊性があり、自動車業界に例を取ると、2015年、中国市場の自動車保有台数は1.72 億台、米国は2.72億台で、中国の1.58 倍である。しかし、米国の自動車アフターマーケットの規模は2.2 億元で、中国の自動車アフターマーケットの3 倍以上の規模である。なぜか? それは、米国の自動車の平均年齢は12 年で、中国は5 年であるためであり、異なる車の年齢に対する自動車の修理とスペアーパーツ需要の潜在力は明らかに大きく異なる。
中国の建設機械市場には大量の建設機械を保有しているが、多くの建設機械年齢は国際市場より遥かに低い、例えば、国産ローダー価格は、輸入ローダーと比べて非常に安いことから、多くのユーザーは2~3 年使うと古い建設機械を中古機械として処分し、新しいローダーに交換して、建設機械の出勤率を確保しており、古い建設機械をオーバーホールまたは再製造する人はほとんどいない。ユーザーは価値がないと考えているためであり、このためにアフターマーケットの需要は非常に低くなっている。
さらに、中国のユーザーは予防保守の概念に乏しく、悪くなければ修理せず、壊れなければ交換せず、期限の切れたフィルターをちょっと洗って使い続けている!
メーカーの無償サービス政策は、彼らには建設機械のメンテナンスは有っても無くてもよいものと思われており、品質保証期間が終了後、多くのユーザーはオリジナル部品を使って建設機械のメンテナンスを続けることは非常に少ない、これらは、すべてアフターマーケット規模の大幅な目減りを招いている。
この他に、筆者は、中国の建設機械のアフターマーケットには、次の違いがあると考えている。
- 外資ブランド機が最初に中国に参入した時、部品価格はまるで暴利であり、多くの輸入コンポーネントは国際市場の価格の数倍であった。現在、一部のコンポーネントの価格は15 年前のわずか5 分の1 になっている。多くのコンポーネントは、メーカーの自社生産ではなく、サプライヤー製品に自己の商標を張り付けることで価格を倍にしており、ユーザーの流出を招いている。
- 一部の国産ブランド機械は、外資ブランド機との完成車市場シエアを争奪するために、低頭金、ゼロ頭金を採用しているだけでなく、さらには、自主的にアフターマーケットを放棄し、メーカーから代理店までが、何れも「完成車買うと、スペアーパーツを送り、無償サービスを生涯保証する」を謳って、アフターマーケットを重視していない。
倾巢之下、焉有完蛋(手持ちの駒を全部繰り出したら、もう後は無くおしまいの喩)である、その結果、中国市場のすべてのブランド機の作業時間の費用徴収は非常に難しく、多くの代理店のサービス収入は、技師の工賃にも足りていない。
- 「中国製造」(Made in China)のコンポーネントの品質はますます良くなっており、多くの輸入品と置き換えられてコストを下げている。その市場効果は、多くの保険切れのユーザーを引き付けている。多くのコンポーネント事業は消失したわけでは無く、代理店からソーシャルパーツストアー(社会配件店)に移っている。
前回の市場下落を経験した後、多くのメーカーと代理店は、やっとアフターマーケットに注意を向け始めたが、自社ブランドの建設機械を使うユーザーがすでに失われていることに気付いた。原因の一方は、部品価格が高すぎること、今一方は、代理店のサービスカバー率が低く、応答が遅く、多くの代理店はかろうじて保守点検作業を維持しているに過ぎなかったことである。
さらに、メーカーは、以前から生涯無償サービスのスローガンを大声で叫んでいたが、ユーザーにサービスを行った時、果たして費用を取れるのか? 過去には、多くの企業がサービス費用を部品価格に隠していたが、ユーザーはバカではない。今では、スペアーパーツ店とインターネットプラットフォームでの部品の価格ますます透明になっており、価格が高ければユーザーは当然買わない。ユーザーがサービスは要求するが、あなたの部品を使わない時、無償でサービスしましか? 無償でないとすると、企業の当初のコミットメントは何でしたか? 生涯無償サービスと約束していました。
果てしなく続くアフターマーケット、道は何方に? 中国では、アフターマーケットの細分化が特に顕著である、世界のどこの市場にこのような沢山の代替コンポーネントがあるでしょうか。強い「中国製造」は、ユーザーの信頼を勝ち取り、メーカーのアフターマーケットに対する独占を完全に打ち破ったことで、メーカーと代理店のアフターマーケットシエアは低い。
過言なく言えば、数年前、市場の下落が深刻な時期、オリジナル部品が高くて使えないことから、多くのユーザーは「中国製造」のコンポーネントに依存することで困難を乗り切っている。
広州市の珠村は、中国の建設機械用コンポーネントの流通センターであり、年間の売上高は約500 億元である。ほかに一部の輸出がある。
彼らの価格性能比(コストパーフォーマンス)がより高く、サービスへの対応がより速く多くのスペアーパーツ店の部品のスポット率が代理店より高い理由だけではなく、国産のコンポーネントの品質はますます向上し、競争力はさらに強くなっており、さらに多くのユーザーがスペアーパーツ店及び修理工場との協力を促している。
市場競争がますます激しくなるのに伴い、完成車の利益はますます薄くなり、リスクはさらに大きくなっている。完成車市場が再び「急騰」する幻想を抱かないこと、コンポーネント事業が再び「暴利」の時代に戻る幻想は抱かないこと、ブランドメーカーは腰を低くし謙虚にならなければならず、ユーザーが利益を上げるのを助け、ユーザーの信頼と愛顧取り戻さなければならない、アフターマーケットを放棄すれば、代理店の生き残りは難しい。
筆者は、メーカーは次のように改めなければないと考える:
- これらの愚かな生涯無償サービス政策を放棄すること
サービス要員の価値は認めなければならない、さもなければ優秀な人材をつなぎ止めることは出来ず、抜きん出たサービスと評判の欠如は、市場の維持を難しくする。
- 高価なオリジナル部品のみを営業する戦略を放棄すること
20 年間、建設機械のステーション料金(中:台班費)はほとんど増えていないのに、オペレーターの工賃は数倍に上がっており、ユーザーの儲けはますます難しくなっている。
環境保護政策の影響で、彼らのリスクはますます大きくなっていることから、誰がオリジナル部品を使えるだろうか? 選択技が1つだけの場合、選択技は無いに等しく、メーカーが代理店にオリジナル部品の販売しか許可しないことは、客観的に見ればユーザーを代理店から離れることを迫っていることになる。
オリジナル部品の価格表は、多くの場合、サブ工場のスペアーパーツの販売促進の道具として使われている。ユーザーの需要は階層的であり、企業の製品も様々8なユーザーの需要を満たす必要がある。ユーザーに価値をもたらすために、第二ブランド、第三ブランドのコンポーネントを出すことで、改めてユーザーを取り戻すことが出来る。
- 製品主導の成⾧からサービス主導の成⾧へ構造転換すること
市場が低迷する中で、日工石油公司は数台のバスを投入して、ゼネラルマネージャーがチームを率いてユーザー訪問を行い、石油製品知識の普及、現場での各種石油製品のテストを提供し、ユーザーのサービスに対する要求を理解し、ユーザーのためにうそいつわりのない援助を行った。
ユーザーの口コミとリピート客は企業の無形財産である、もし、新規のユーザーだけに注意を払い、得意先を失うことは、とても愚かなことである。
アフターマーケットは、企業がユーザーを取り巻いて構築したエコシステムであり、その目的はユーザーの金もうけを助け、得意先を引き留め、良い評判を高めることである。
金もうけとは、即ち水到渠成(条件が備われば物事は自然と順調に運ぶ喩)であり、もし、ユーザーのポケットの中のお金だけを注視していると、高額なコンポーネントであろうと無償サービスであろうと、何れもアフターマーケットのエコシステムを損なう恐れがあり、最終的にはユーザーを失うことになる。
ある言い伝えの物語で、一人目のユダヤ人が町でガソリンスタンドを開設し、商売は繁盛した。二人目のユダヤ人はガソリンスタンドの商売が良いと見て、直ぐに隣でレストランを開いた。三人目のユダヤ人はこれを見てホテルを開いた。四人目のユダヤ人はスーパーマーケットを開いた……、そして、来る人がますます多くなり、エコロジーはますます良くなり、町の経済は絶えず繁栄し、誰もがお金を稼いだ。
今一つの物語では、一人目の中国人が町でガソリンスタンドを開設し、商売は繁盛した。二人目の中国人はガソリンスタンドの商売が良いと見て、直ぐに向かい側に二番目のガソリンスタンドを開いた。三番目の中国人は仲間の商売が良いと見て、大急ぎで三番目のガソリンスタンドを、続いて四番目のガソリンスタンドが、五番目が……、そして、ユーザーを奪い取るための割引販売、悪質な競争が始まり、エコロジーはますます悪化し、誰もお金を稼ぐことが出来ず、ガソリンスタンドは次々と破産し、町は原点に戻って行った……、この物語は、まさにエコシステムの重要性を示している。
メーカーと代理店が利を焦ったり、無償サービスの政策により、アフターマーケットのエコシステムはほとんど破壊され、ユーザーの大量流失を招いている、これこそがアフターマーケットが直面している最大の課題である。
ユーザーは何を求めているのか? 彼らが求めているのは、儲かる建設機械であり、無償の、不急の、低いレベルのサービスではない。アフターマーケットに対する認識のくい違いと悪質な競争は、メーカーがアフターマーケットを無償で手放すことに等しいのに、ユーザーが彼らの気前の良さに感激していると思い込んでいるが、引き換えに得たものは、多くのユーザーの流出である、私たちは反省すべきではないだろうか。