■航空エンジン等、高信頼性が求められる高級鋼の生産能力を強化
大同特殊鋼は10月30日、航空エンジンや発電用タービン向けの回転部品用材料など、高付加価値特性が求められる高級鋼の需要増に対応するため、これらに適用される溶解プロセスである「特殊溶解」の設備を増設すると発表した。
具体的には、知多工場(愛知県東海市)にエレクトロスラグ再溶解炉(ESR)(*1)を2019年1月(予定)に1基、渋川工場(群馬県渋川市)に真空アーク再溶解炉(VAR)(*2)を2019年4月・7月(予定)に各1基の計3基を増設する。投資額は約40億円を予定している。
大同特殊鋼は2016年に世界最大級となる25トン真空誘導溶解炉(VIM)(*3)を渋川工場に設置し、ニッケル基合金(*4)や清浄性等の特徴を必要とする高級鋼生産能力の拡大を進めている。今回の特殊溶解設備増設も、その一環となる。
特殊溶解(ESR,VAR)は、高い信頼性を求められる高付加価値製品に適用される溶解プロセスで、主に航空エンジン・発電用タービン向け回転部品用材料、半導体製造装置用クリーンステンレス鋼、工具鋼等に適用されます。今回の投資はこれらの旺盛な需要への対応と安定供給体制の強化を主目的としている。
これらの製法は、電気炉やVIMで溶製・造塊された鋼塊を消耗電極として、再溶解を施し、鋼の清浄度等の向上や均質な凝固組織を得ることが可能であり、特に航空・発電など製造プロセスの高い再現性が求められる用途や、半導体・高級工具鋼等、清浄性が求められる用途では、品質・製造保証の両面で極めて重要なプロセスであり、近年その需要が増加している。今回の投資により生産能力を拡大することで、事業基盤の一層の強化を進めていく。
<用 語>
*1 エレクトロスラグ再溶解(ESR):一次溶解(電気炉・真空誘導炉)で溶解・造塊した鋼塊を消耗電極として通電、精錬用粉体(スラグ)をジュール発熱で生じた溶融熱で電極を溶解、溶鋼がスラグを通過する過程で化学的に清浄性を改良し、急速冷却により均質な組織を得る溶解設備。
*2 真空アーク再溶解炉(VAR):ESR同様に製造した消耗電極に通電、高真空下でアーク発熱により溶融、鋼中のガス成分を低減し、急速冷却により均質な組織を得る溶解設備。
*3 真空誘導溶解炉(VIM):誘導加熱を利用した電気炉で、ニッケル基合金をはじめとする高純度金属や高級合金の溶製に用いられる溶解設備。上述の25トンは1回の溶解量を指し、設備の大きさの規模を表す。
*4 ニッケル基合金:ニッケルを主成分とする合金で、優れた耐熱性、耐食性を有する合金で、石油、化学、ジェットエンジンや発電用タービンなどの分野で主に使用される。