・日本基礎技術との共同開発、200m区間を8時間で完全自動掘削
大林組は9月10日、山岳トンネル工事における切羽前方探査システム「水圧ハンマーナビ®」の全自動化を実現したと発表した。従来5人で行っていた作業を3人で実施可能とし、40%の省人化を達成。トンネル工事の安全性向上と生産性向上を同時に実現する画期的なシステムとして注目される。
■先端駆動技術で長距離探査を短時間実現
水圧ハンマーナビは、専用ボーリングマシンに先端駆動型水圧ハンマーを搭載した探査システム。切羽前方150~200mの地質を約8時間という短時間で探査できる能力を持つ。探査結果から算定される「エネルギー指標値」により、断層破砕帯や湧水危険区間を高精度で予測する。
従来の切羽前方探査では、ロッド1本の削孔ごとに作業員2人以上でロッドをセットし、オペレーターとの合図により継ぎ手の接続と削孔を繰り返していた。今回の全自動化により、削孔からロッドの継ぎ足し、削孔完了後のロッド引き抜き撤去まで、一連の作業を人の手を介さず完全自動で実行する。
■A-RPD技術活用で熟練技能を自動化
本システムは日本基礎技術との共同開発により実現。同社のA-RPD(Automatic Rotary Percussion Drill)技術を活用し、削孔作業の全操作を自動化している。地山性状や削孔状況に応じて削孔速度調整、削孔停止、フラッシング作業を自動判断するため、熟練技術者でなくても安定した削孔が可能となる。
削孔時には、削孔深度、削孔速度、送水圧、フィード圧、地山等級などがリアルタイムで確認でき、自動削孔においても不良地山の判断が可能。ボーリング結果から算定される「エネルギー指標値」により、断層破砕帯、亀裂集中帯、風化変質帯などの脆弱性を正確に把握する。
■安全性向上効果も顕著
自動化により回転部への巻き込まれ災害などを防止し、作業安全性が大幅に向上。厚生労働省の「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」に準拠した安全な前方探査を実現している。
現在、国道429号道路新設改良工事の榎峠トンネル(仮称、京都府)において実証運用を開始しており、今後の本格導入に向けた検証を進める。
建設業界では深刻な労働力不足が課題となる中、同システムは山岳トンネル工事の自動化技術として大きな注目を集めそうだ。大林組では今後、さらなる技術改良を進め、トンネル工事全体の省人化・自動化を推進していく方針。
【用語解説】
• フラッシング:削孔時に孔内に発生するスライムなどの除去洗浄作業
• A-RPD:日本基礎技術開発の自動回転打撃掘削技術
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