ナブテスコ、油圧機器事業をイタリア企業に142億円で譲渡

・新会社設立後、株式の70%をComer Industriesに売却

 ナブテスコは7月31日、油圧機器事業を会社分割により新設する子会社「コムテスコ株式会社」に移管した後、その株式の70%をイタリアのComer Industries S.p.A.(コマー・インダストリーズ S.p.A.)に142億円で譲渡すると発表した。

■事業再編の背景

 ナブテスコの油圧機器事業は、世界シェア約25%を誇る油圧ショベル用走行ユニットを主力製品とし、2024年12月期の売上高は446億円に上る。しかし近年、中国ローカル企業の台頭や建設機械メーカーの内製化により、厳しい競争環境に直面していた。

 同社は2025年2月に発表した新中期経営計画で「未来の”欲しい”に挑戦し続けるイノベーションリーダー」を目指すとし、ポートフォリオの最適化を進めている。ナブテスコでは、油圧機器事業の継続的成長には、同社グループにはない販売網や技術、製品ラインナップを有するComerがベストオーナーになり得ると判断したようだ。

■譲渡スキームの詳細

 今回の事業再編は以下の手順で進められる:

1.2025年9月: 新会社「コムテスコ株式会社」を岐阜県不破郡垂井町に設立

2.2025年10月: 吸収分割により油圧機器事業を新会社に移管

3.同月: 新会社株式の70%をComerに譲渡

 譲渡対象には、中国の上海ナブテスコ油圧(持分55%)、タイのナブテスコパワーコントロール(持分70%)、ドイツの完全子会社も含まれる。ナブテスコは残り30%の株式を保持し、合弁事業として継続する。

■譲渡先企業の概要

 Comer Industries S.p.A.は1970年設立のイタリア企業で、農業機械、建設機械、風力発電、電気自動車用のモーターやトランスミッションを製造・販売している。2024年12月期の売上高は1,123百万ユーロ(約1,909億円、170円換算)、純資産は544百万ユーロ(約925億円)の規模を持つ。

 同社のMatteo Storchi(マッテオ・ストルキ)社長兼CEOの下、付加価値の高い技術と幅広い製品ラインナップを展開している。ナブテスコとは既に建設機械用油圧機器の部品取引があり、今回の統合により相互補完的な販売網を活用した市場拡大が期待される。

■今後の戦略と見通し

 ナブテスコは譲渡で得られる142億円を、長期ビジョン実現に向けたスマートモーションコントロール分野をはじめとする注力領域に投資し、中長期的な企業価値向上を目指す。

 一方、新会社コムテスコは安藤清氏が代表取締役CEOに就任予定で、Comerとの協業により「今まで以上に多くの顧客により高い価値を提供できる」としている。

 本件は会社法第784条第2項に規定する簡易吸収分割として、株主総会の承認を得ることなく実行される予定。今期業績への影響については、同日発表の業績予想修正資料で詳細が示されている。

【企業概要】

•ナブテスコ株式会社: 2003年設立、資本金100億円、従来の主力は精密減速器、鉄道車両用機器、航空機器など

•2024年12月期業績: 売上高3,234億円、営業利益148億円

•本社: 東京都千代田区平河町

 ニュースリリース

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