日立建機、鉱山現場で超大型のフル電動ダンプトラック実証試験を開始、世界初

・再生可能エネルギーが豊富なザンビアでファースト・クォンタム社と共に真の脱炭素の実現に挑戦

    日立建機は6月27日、鉱山会社First Quantum Minerals Ltd.(以下、ファースト・クォンタム社)のザンビアにあるカンサンシ銅・金鉱山で、フル電動リジッドダンプトラック(以下、フル電動ダンプトラック:画像)の実証試験を開始したと発表した。建設機械メーカーが顧客の鉱山現場で超大型のフル電動ダンプトラックの実証試験を行うのは、世界で初めて。*1

 実証試験は、ファースト・クォンタム社のザンビアにある同社最大級のカンサンシ銅・金鉱山で行う。高低差のある露天掘りの鉱山で実際の稼働負荷がかかる状態で、走る・曲がる・止まるといったダンプトラックの基本性能や、バッテリー充放電サイクルなどを検証する。ファースト・クォンタム社のカンサンシ銅・金鉱山は、トロリーシステムの運用実績が豊富で、さまざまな運搬ルートや架線設備などフル電動ダンプトラックの試験に必要な多くの設備がすでに整備されているため、実証試験に最適な環境。

 また、ザンビアの電源は再生可能エネルギーが92%*2を占めており、水力発電に加え、今後は太陽光、風力、バイオガスなどの電源が拡大される見込み。再生可能エネルギーが豊富なザンビアで真の脱炭素の実現に挑戦する。

 フル電動ダンプトラックは重電大手ABB Ltd.(以下、ABB社)との共同開発。日立建機が豊富な導入実績を持つトロリー受電式のリジッドダンプトラックをベースに、ABB社が開発したバッテリーシステムを採用することで、充電による停車を必要とせずに架線から直接給電し、連続稼働が可能。また、バッテリー搭載量を抑えることで、車体に占めるバッテリー重量を軽くして積載量の最大化にも寄与し、高いコストパフォーマンスを発揮する。

 鉱山業界では、環境意識の高まりを背景に温室効果ガスの排出を削減する取り組みのひとつとして、鉱山機械の電動化に関心が高まっている。特に、鉱山現場で稼働台数の多いダンプトラックの電動化に対する顧客からの高い要望に応えるため、日立建機は、2021年6月からABB社と共同でフル電動ダンプトラックの開発に着手した。そして、2023年3月1日には、日立建機はファースト・クォンタム社との間でゼロ・エミッション・パートナーシップに関する基本合意書(LOI)を締結し、2024年1月20日、フル電動ダンプトラックの試験機を完成させ、ファースト・クォンタム社に向けて出荷した。このほど、ザンビアでの試験機の組立が完了し、基本動作を確認したことから、実証試験を開始した。

 日立建機グループは、顧客と協創しながら、フル電動ダンプトラックの実用化に向けた取り組みを加速し、鉱山機械からの温室効果ガス排出量の実質ゼロに貢献していく。

■日立建機 執行役常務 マイニングビジネスユニット長 福西 栄治氏のコメント:
 世界の鉱山各社は温室効果ガスの削減に取り組んでいます。建設機械メーカーである私たちは鉱山現場における環境負荷を軽減するソリューションを提供することがビジョンです。フル電動ダンプトラックは、日立建機グループだけでなく、鉱業界全体の未来を象徴するものであり、稼働中の鉱山でこの実証試験を行い、ファースト・クォンタム社と協力して、ゼロ・エミッション・ソリューションを推進できることを嬉しく思っています。

■ファースト・クォンタム社 マイニング部門ディレクター ジョン・グレゴリー氏からのコメント:
 積載量、生産量、車両サイズにほとんど影響を与えないダンプトラックの電動化は、トロリー充電式が有効です。ファースト・クァンタム社は、2,600Vに対応する日立建機のダンプトラックについて熟知しており、複数台を同時に安定的に運用しています。トロリー充電式フル電動ダンプトラックは、実用的で経済的なソリューションであり、今後何年にもわたって採鉱における温室効果ガスの排出を抑制することができます。

■トロリー充電式フル電動ダンプトラックの特長

  1. 初期費用・ライフサイクルコストを抑制
     稼働に必要な電力を架線から取り込むことで、バッテリーの搭載量を抑え、車体の初期費用を抑制する。また、架線を走行するたびに架線から電力を取り込み走行すると同時にバッテリーへも充電し、適切な充放電を繰り返すことで、バッテリーの負荷が低減され、長寿命化にもつながり、ライフサイクルコストの低減とライフサイクルアセスメントによる環境負荷低減をめざす。
  2. 車体重量を軽くして、積載量を最大化
     バッテリーの搭載量を抑えることで、車体に占めるバッテリー重量が軽くなり、積載量を増やすことができる。フル電動ダンプトラックの中では、「トロリー充電式」が積載量を最大にすることができ、鉱山現場の生産性向上に貢献する。
  3. 充電のために停車する必要がなく、高稼働率を実現
     架線から電力を取り込み走行すると同時に、バッテリーへも充電することで、充電のために停車する必要がない。そのため、高稼働率を実現することができ、鉱山現場の生産性向上に貢献する。

*1: 2024年6月27日現在、建設機械メーカーが積載量150t以上の超大型ダンプトラックで行う実証試験が対象。日立建機調べ。

*2: 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)公表「再生可能エネルギー統計」

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