コマツ、2024年度第1回ウェブ社長インタビューを公開

 コマツは、2024年度第1回ウェブ社長インタビューを公開した。(収録日:2024年5月14日)

 「2024年度第1回社長インタビュー

■主な内容は概ね以下のとおり。
1.業績概要
2.バリューチェーンビジネスの概要
3.中計3本柱における位置づけ
4.需要動向に左右されない収益構造
5.重点活動
 ・データ・ドリブン・ビジネスモデルの構築
 ・ライフサイクルサポートビジネスによる差別化の促進
 ・リマン・リビルド事業の拡大

■インタビュー(文字起こし版)

城向あかり氏(以下、城向):コマツ社長インタビューではコマツの強みや今後の見通しについてお届けしています。コマツ社長インタビュー2024年度第1回は、業績並びに中期経営計画の成長戦略の1つであるバリューチェーンビジネスについてお届けいたします。小川社長、よろしくお願いいたします。
 では、はじめに4月26日に発表しました2024年3月期の業績及び2025年3月期の見通しについて、こちらをご覧ください。
 2024年3月期の売上高は、前年比プラス9.1%増収の 3兆8,651億円となりました。営業利益は前年比プラス23.7%増益の6,072億円。売上高営業利益率はプラス1.9ポイント上昇し、15.7%となりました。売上高、セグメント利益、営業利益、営業利益率、純利益はいずれも過去最高となりました。
 2025年3月期について、まず為替レートは米ドルを140円、ユーロを149円、 豪ドルを90円とみています。売上高は前年並みの3兆8,610億円となる見通しです。
 建設機械・車両セグメントでは、需要減少による物量減を見込んでいますが、販売価格の改善により、為替影響を除くと前年比増収となる見通しです。営業利益は前年比マイナス8.3%減益の5,570億円を見込んでいます。売上高営業利益率はマイナス1.3ポイント低下し、14.4%となる見通しです。詳細はコマツWEBサイトの株主・投資家情報にてご紹介しております。合わせてご覧ください。さて、ここからはバリューチェーンビジネスについて小川社長に伺ってまいります。

城向:小川社長、はじめに、バリューチェーンビジネスというのは具体的にはどのような事業なんでしょうか。

小川社長(以下、小川):建設機械はお客様に販売してから平均すると10年から15年使っていただきます。したがい、お客様にご購入いただいた機械が現場で十分に性能を発揮できるようにメンテナンスや修理などを行うことが必要不可欠になります。
 コマツでは、お客様が機械を購入してから中古車として売却するまで、機械の最適な調達方法のご提案、燃費や生産性向上のための運転指導、定期的なメンテナンスや補給部品の販売、また遠隔での機械の稼働状況管理や修理、オーバーホールなど様々なサポート活動を行います。このように、お客様の機械のライフサイクル全体を通じてサービスやソリューションを提供し、お客様の機械管理をサポートする活動がバリューチェーンビジネスです。

城向:つまり、機械の生涯にわたって様々なサポートを提供されているわけですね。では次に、中期経営計画の成長戦略におけるバリューチェーンビジネスの位置付けについて、改めてお聞かせください。

小川:2022年4月からスタートし、2024年度が最終年度となる 中期経営計画「DANTOTSU Value – Together, to “The Next” for sustainable growth」では、成長戦略3本柱として、イノベーションによる成長の加速、稼ぐ力の最大化、レジリエントの企業体質の構築を掲げています。
 このうち、稼ぐ力の最大化における重点項目の1つに、バリューチェーンビジネスの進化によるさらなる成長を位置づけています。
 コマツはキーコンポーネントを自社で開発、生産しています。さらに、次世代Komtrax (コムトラックス)の搭載により、 機械のコンディションに関する情報がより詳しく分かるようになります。こうしたメリットを最大限に生かし、データドリブン(データに基づいた)のビジネスモデルを進化させ、バリューチェーンビジネスを拡充することで、持続的な成長と需要変動に左右されにくい企業体制の構築を目指しています。

城向:いま、バリューチェーンビジネスが需要変動に左右されにくい企業体質の構築につながるというお話でしたけれども、もう少し詳しく教えてください。

小川:コマツの主力事業である建設・鉱山機械の市場は、時々の景気や地政学リスクなどの影響を受けやすく、新車の需要変動が大きいマーケットです。一方で、部品、サービスなどのアフターマーケットの需要は、 すでに世界中で稼働している機械の台数で決まります。稼働台数を維持、増加させることで安定した収益を確保し、新車需要の変動による影響を最小限にとどめることができます。コマツはアフターマーケット事業の強化を進め、 従来から需要変動に左右されにくい企業体質の構築を進めてきました。
 建設機械・車両部門の売上高構成に占める部品、サービス等のアフターマーケットの割合は、2010年度から2023年度にかけて50%に増加しています。安定した販売ボリュームが期待できる部品、サービスなどの構成比が高まることで、新車需要の変動に左右されにくい収益構造が実現できていると考えています。

城向:今後も、ICT機能を有効活用し、豊富な配車台数を生かしたバリューチェーンビジネスをさらに強化していき、バリューチェーンビジネスの拡充により、需要変動への対応力を向上させているわけですね。では、ここからは主な重点活動について伺ってまいります。まず、データドリブンビジネスモデルの構築とは、具体的にはどのような活動でしょうか。

小川:コマツは2001年より建設機械稼働管理システムKomtraxを標準搭載しています。Komtraxは、GPSによる位置情報や稼働情報を遠隔で確認できるシステムがあり、現在、全世界で約76万台に搭載されています。世界中から収集した機械の稼働データに基づいて、お客様のニーズに応じたサービスを提供してきました。現在は、次世代Komtraxとして、 車両やコンボーネントの稼働データを従来に比べて詳細に頻度を上げて収集できるようになりました。また、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を通じてデータを活用したアプリケーションの作成も容易になりました。これらの豊富なデータを活用し、データに基づく最適なサービスサポートを展開するビジネスモデルの構築を進めています。
 状態の異なる機械1台ごとの稼働履歴や修理履歴などを把握できる号機管理プラットフォームを通じ、適正なタイミングでの部品交換やエンジンオーバーホールの提案などの予知保全活動を強化することで、お客様の現場で機械の稼動を止めず、最適な施工が可能となるような活動に取り組んでいます。
このように、データを使ってお客様の機械のライフサイクル全体にわたるサポートを強化し、お客様の生産性向上、部品販売増、 サービス活動の効率向上に努めています。

城向:豊富なデータをビジネスにつなげているわけですね。では、続いて、ライフサイクルサポートビジネスによる差別化の促進について具体的にお伺いできますでしょうか。

小川:お客様にコマツの機械を長期間安心して使用していただくために、コマツでは 定期メンテナンス付き延長保証契約をご提供して、 新車購入時にご契約いただくことで、お客様が通常より長い期間保証を受けることができます。地域にもよりますが、中型圧ショベルで7年から10年までの延長保証を実現しています。現在、世界各地で展開しており、年々契約件数を伸ばしています。
 この延長保証契約を可能にしているのは、自社で開発、生産した高い信頼性を持つキーコンポーネントとKomtraxを使った車両位置、稼働時間の把握により、効率的な訪問計画が作成できるためです。お客様には延長保証契約を結んでいただくことで、より安心して機械を常に良好な状態に保ち、使っていただくことができ、 中古車としての価値向上にもつながります。また、コンポーネントの状態をより的確に把握できるようになるため、突発の故障や修理による機械の稼働停止リスクを下げることができ、コンポーネントの品質向上にも貢献しています。

城向:メンテナンス付きの延長保証契約を結ぶことで、お客様はより安心して機械を使うことができるわけですね。では、続いて、リマン・リビルト事業の拡大についてお聞かせいただけますでしょうか。

小川:まずリマンとは、再生を意味するリ・マニファクチャリングの略です。リマン事業とは、お客様の現場で長時間稼働した建設、鉱山機械から取り外したエンジンやトランスミッションなどのコンポーネントを、分解、洗浄、部品交換、再組み立て、塗装、出荷検査などの工程を経て、新品同様に再生し、市場に再供給するビジネスです。
 コマツでは世界11カ国、15カ所にリマンセンターを設置し、 世界各地のお客様へのサポート体制の強化を推進しています。昨年11月には、ハイブリッド油圧ショベル用のキーコンポーネントであるキャパシターやインバータのリマンを国内で開始し、この事業にとって初めてとなる電気系統のリマンスキームをラインナップに加えています。
 建設、鉱山機械の新車需要は足元では調整局面でありますが、 19年度から21年度まで15%ほど伸びており、22年度も21年度とほぼ横ばいの水準となりました。この間、コマツも新機種導入やサプライチェーンの改善努力等により需要を着実に取り込み、販売台数を伸ばしていきました。
結果として、市場で稼働している配車台数も増加しています。こうした車両のオーバーホールの機会を的確に捉え、新品同様のコンポーネントを安価に提供し、また、機械の休車時間を短縮することで、 お客様のライフサイクルコスト低減に寄与し、かつ廃棄物やCO2排出量の削減など、環境負荷低減に貢献しています。

城向:では最後に、バリューチェーンビジネスの目標についてお聞かせください。

小川:中期経営計画では、成長戦略3本柱を通じたESG課題解決を着実に遂行していくためにKPI(事業業績評価指標)を選定し、 その達成状況を統合報告書で開示しています。環境や需要変動に対応力のあるバリューチェーンの構築では、 アフターマーケット事業の拡大として、2024年度目標売上高伸び率を対21年度比でプラス15%としています。 また、リマ事業の拡大として、2024年度売上高伸び率を対21年度比でプラス25%としています。
2023年度の実績は9月発行の統合報告書で開示を予定しています。

城向:小川社長、今日はどうもありがとうございました。

 今回のインタビューでは、バリューチェーンビジネスの進化によるさらなる成長についてお話を伺いました。

 以上