三菱重工、大型ガスタービン向け水素混焼技術の導入検討へ、タイ国電力公社(EGAT)とMOUに調印

・国内最大発電事業者との協業により、同国政府が掲げるCO2ゼロ目標の達成を後押し

・EGATの火力発電所で混焼パイロット事業を計画、三菱重工納入GTCC設備を対象に最大混焼率20%

・2022年の包括的合意を踏まえ、両社で発展的な水素混焼技術の実効性調査(FS)を実施

 三菱重工業は6月5日、タイ最大の発電事業者であるタイ国電力公社(EGAT:Electricity Generating Authority of Thailand)と、タイ国内のガスタービン発電設備に燃料として水素を混焼させる技術を導入する調査・検討を進めることで合意し、6月4日に東京で開催された「第6回日タイエネルギー政策対話」(JTEPD:Japan–Thailand Energy Policy Dialogue)にて協議に向けた基本合意書となるMOU(覚書:Memorandum of Understanding)に調印したと発表した。同国政府が掲げる「2050年までのカーボンニュートラル達成・2065年までのネットゼロ実現」という国家目標を受け、EGATの火力発電所におけるクリーン燃料化を支援していくもの。

 第1段階として、EGATの同国内発電所での水素混焼パイロット事業にも取り組み、2025年3月(2024年度末)までに初期の実効性調査(FS:Feasibility Study)を実施。その後の発展的詳細FSにつなげていく計画。

 今回のMOUでは、2022年に両社が調印したクリーン燃料発電、クリーン水素およびCCUS(CO2の回収・有効利用・貯蔵)技術に関する調査と情報交換を行うMOUに基づく活動を踏まえ、さらに水素混焼というテーマに絞って取り組んでいくための合意をしている。EGATからの要望により、水素混焼率は20%を目指す。三菱重工はこの合意に基づき、EGAT既存発電所における三菱重工製ガスタービンを対象とした水素混焼技術の予備調査を実施。一方のEGATは、タイにおける水素の輸送・貯蔵・流通を考慮した水素サプライチェーンマネジメントの戦略的計画をはじめ包括的な計画を策定することになっている。その結果に基づく発展的な詳細FSを、EGATおよび三菱重工の両社で実施する。

 MOU調印を受け、三菱重工業 常務執行役員エナジードメイン長の土師 俊幸氏は、次のように述べている。
 「50年以上にわたって信頼関係を築き上げてきたEGATとともに、当社グループが開発する革新的な技術であるガスタービン水素混焼の導入検討を取り進められることを非常に喜ばしく思います。両社が誇る知見を結集させ、タイにおけるエナジートランジションに向けて貢献していけるものと確信しています」。

 また、EGAT社燃料部門副総裁のナリン・パオワニッチ(Narin Phoawanich)氏は、今回の協業について次のように述べています。
 「三菱重工との今回のMOU調印は、タイにおける代替燃料やクリーン燃料と日本の技術を統合し、より環境に優しい電力を生産する先駆的な取り組みの一つです。この取り組みは、タイの水素利用促進戦略に沿ったものであり、とりわけ、日本を代表するグローバル企業と手をつなぐことで水素プロジェクトの開発や技術交流をバリューチェーンにわたってもたらしてくれる絶好の機会ととらえています。このパートナーシップは、クリーンエネルギー技術の進歩を促進し、タイの電力生産部門におけるビジネスチャンスを拡大し、環境の持続可能性に貢献することが期待されています。これは、タイのエネルギー転換における重要なマイルストーンとなるでしょう。」

 三菱重工は、タイが石炭から天然ガスへと燃料を転換するに当たり、CO2排出量ネットゼロに向けた段階的な移行を支援する重要な役割を果たしてきた。三菱重工が提供した発電設備の合計容量は、建設中の発電所を含めると計25GWを超え、同国における発電容量の50%を上回っている。最大手EGATとの間では強い関係をさらに前進させつつあり、今回のMOUもその一環となるもの。

 三菱重工は、今後もタイの安定的かつ効率的なクリーン電力事業化をサポートしていく一方、グループを挙げて世界各地の経済発展に不可欠な電力の安定供給に寄与するとともに、持続可能な脱炭素社会の実現に貢献していく。

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