・社内外連携を強化し、研究開発からプロセスエンジニアリング・商業生産までの一気通貫体制を構築
出光興産は1月29日、同社グループで最大規模を誇る石油・石油化学の基幹製造拠点 千葉事業所(千葉県市原市)内に、新たな統合研究所「イノベーションセンター(仮称)」を新設すると発表した。
現在は複数拠点にまたがる生産技術、開発技術等の研究所をイノベーションセンターに集約し、事業を横断した研究開発体制の構築と社外連携の強化を図ることで、研究開発から分析・解析、実証、プロセスエンジニアリング、商業生産までの一気通貫体制の構築と、中期経営計画で掲げる事業構造改革に向けた技術開発の加速を実現する。総投資額は約500億円超、完工は2027年度を計画している。
現在、出光興産グループは国内に13拠点、海外に4拠点の研究所を有している。このうち、主にGHG削減・資源循環に資する中長期的なテーマを扱うコーポレート研究部門、高付加価値の独自素材を扱う高機能材事業の研究部門を中心に、国内の研究機能の概ねをイノベーションセンターに集約する。
機能・設備面では、将来の環境変化に柔軟に対応できる可変性ラボ、研究員同士の協働・共創を促進するワンルームオフィス、世界中のパートナーと共同研究・開発が可能なオープンラボなど、部門・会社を越えて多様な人材が活発に交流できる空間や仕組みを採用する。また、国内最先端のMI※1・DXに関しても国内外のパートナーとの連携含め先進的な取り組みを行い、研究開発のスピードアップとレベルアップを図る。事業を横断した研究開発体制を構築するとともに社外との連携を強化し、新たな技術・事業の創出に取り組む。
千葉事業所エリアでは現在「CNXセンター化※2」に向け、SAF(持続可能な航空燃料)の製造・供給に向けた実証、使用済みプラスチックを原料とした油化ケミカルリサイクル、リチウム固体電解質の商業生産に向けた実証などを行っており、イノベーションセンターはこれらの分野ともシナジーを共創していく。
出光興産はこれまで、石油・石油化学品の製造プロセス開発をはじめ、有機EL材料、エンジニアプラスチック、固体電解質といった高機能材料分野における独自技術の開発に取り組み、技術革新や社会実装を実現してきました。高いレベルの開発力・技術力を生かし、中期経営計画(対象年度:2023~2025年度) で掲げた2050年ビジョン「変革をカタチに」のもとで事業構造改革を進め、カーボンニュートラル・循環型社会の実現に資する新規事業を創出し社会実装を推進するためには、従来のやり方を踏襲するだけではなく進化させていく必要がある。この達成に向け、各研究所が保有する技術の強みを結集し新規事業に繋げる機能の構築、各事業および社内の技術・領域の枠を超え新規技術を獲得する活動の活性化など、研究開発における改革を進める。イノベーションセンターの建設は、この改革の中核となる取り組みで、今後も技術・設備の面にとどまらず、人事・組織・DXなどの観点からもグループ研究開発体制を強化する。
※1 MI:マテリアルズ・インフォマティクス。様々な材料開発においてAIや機械学習などの情報科学を用いて効率を高める方法。
※2 CNXセンター化:CNX=Carbon Neutral Transformation。既存の製造拠点を新たな低炭素・資源循環エネルギーハブへと転換する取り組み。
<イノベーションセンター(仮称)の概要>
施設概要:建屋延床面積 約6万m2(5階建)
所在地:千葉県市原市姉崎海岸2番地1(千葉事業所内)
完工予定:2027年度
主な機能・設備
(1)社内共創の推進機能・設備:
・環境変化による研究変更に対応できる可変性ラボ
・事業を越えた協働・共創を促進するワンルームオフィス
・技術交流・人的交流を促進する開放的なスペース
(2)社外共創の推進機能・設備
・社外との共創が可能なオープンラボ
・未来を支える製品・技術を紹介する展示空間
(3)国内最先端のMI・DX環境
・実験/解析/計算/AIを高度に融合したMI環境の構築
・オープンソース、オープンデータを安全かつ容易に活用できるクラウドMI環境の構築
(4)省エネルギー配慮
・太陽光発電、雨水利用などの創エネ・省資源技術の導入
<千葉事業所の概要>
施設概要:敷地面積 382万m2
操業開始:1963年
主な機能・設備
石油精製装置(製油所)
石油化学製造装置(石油化学工場)
用役設備、環境保全設備、貯油設備、入出荷設備など
https://www.idemitsu.com/jp/business/factory/chiba/index.html