日立建機は12月18日、恒例の年末メディア合同ミーティング(対面・オンライン併催)を開催し、先崎正文社長が2023年を振り返るととともに、2024年以降の建設機械、鉱山機械市場、電動建機への取り組みなどについて、概ね以下のように語った。以下、順不同で内容を抜粋。
■先崎社長の挨拶
日立建機は2023年度から新しい中期経営計画「BUILDING THE FUTURE2025 未来を創れ」を開始しているが、まさに第二の創業という新たな歩みを本格的に始めたと言う認識だ。2023年度上期の状況は、社内・社外から大きな期待が寄せられる中、業容の拡大に注力してきたが、特に注力してきた米州、そしてマイニング、バリューチェーンの3本柱、その事業いずれも過去最高の売上収益を達成し、グループ全体としても過去最高の業績を上げることができた。
足元の状況は、アジア、欧州など一部地域で減速感はあるものの、北米はインフラ投資の政策等によって堅調に推移していることもあり、2023年度通期も米州事業の独自展開、そしてバリューチェーン事業の拡充といった政策により、過去最高の売上収益、そして当期利益を目指していく。
日立建機の新しい中期経営計画でのテーマは「継承と進化」としている。これまでに大きく扉を開いた米州事業、そして過去から面々と積み上げてきたバリューチェーン、こういうものをきちんと「継承」してきたという認識のもとで進めている。
また新たな成長へのチャレンジとしての「進化」を次の重要なテーマとして捉えている。この4つの経営戦略、まず顧客に寄り添う革新的ソリューションの提供、そしてバリューチェーン事業の拡充、米州事業の拡大、そして人と企業力の強化、この4本の柱を軸に新しく始めた中期経営計画で掲げた経営目標をしっかり達成していきたい。
・・・・・地域別市場の現状と見通しについては。
<ヨーロッパ>
ヨーロッパ市場の減速ということは感じているが、ただこれを「減速感」というのは論議があり、正常な状態に戻ってきているというように考えている。
ヨーロッパの油圧ショベル市場は、年間3万5,000~4万台ぐらいの状態が続いた中、2022年度は4万7,000台の市場規模となった。それが23年度が始まる頃から、減速とはいえないが、ある程度通常レベルまで戻してしてくるのではないかと見ていた。それが少し想定より長く続いている。生産状況もどちらかというと、いつでもブレーキを踏めるような状態で高い生産を続けてきた。結果として、一定の想定のところにきたというのがいまの状況だ。ヨーロッパに関しては生産を部分的に調整しながら、アメリカの方に機械を回すことができたと思っているし、ヨーロッパ市場は、やはり堅調な状態が続いている。
<アメリカ>
アメリカの建設機械市場においても、金利の引き上げ等の話など、いろんなことがいわれているが、公共投資に対する考え方は基本的に変わっていない。金利がどこまで経済に影響するのかっていうことを慎重に見ている。
ただアメリカの建設機械市場というのは、特にレンタル業という大きな市場があり、代理店情報によると、小型建機を含めてそれほど変わっていないし、これから先も新たに出てくるであろう建設投資が堅調に推移するのではないかと見ている。
その上で、日立建機の米州独自展開の部分でしっかり業績を伸ばせると思ってるし、それを見せることをきちんとしなければいけない。そういう認識のもとで、米州事業の拡大というのを中期経営計画で進めていくことがかなり大きなところだ。
<アジア>
インドネシアの総選挙もあり、その影響はあると思うが、これはいつもそうだが、選挙前に少し下がって、選挙後に少し回復してくることを考えると、一時的なものと考えている。
やはりアジアの建設機械市場は、燃料とか林業など業態のしっかりとしたベースがあれば、建機需要はあると思っているし、今のアジアの建設機械に対する減速感は一時的ではないかと思っている。
インドネシアでは、日立建機の強い林業やパーム油関連の引き合いは基本的に変わっていない。今後も状況をしっかり見ながらだが、アジアの建機市場は「復調」というほどではないが、通常通りに戻ってくるのではないかと思っている。
<中国>
中国の建設機械需要に関しては、簡単に戻らない。過去のピークからすると、いまは5分の1から6分の1となっている。この状態は、やはり中国国内に存在する本体機械の多さと工事量のギャップを考えたとき、急激な回復というのは、当然見込めないと考えざるを得ない。一方で、中国での生産状況というのは日立建機・海外拠点に向けての生産体制を着々と作っているので、中国事業は日立建機全体の生産を下支えをしていくことになる。
<鉱山機械>
一方、鉱山市場をみると、コモデティ(商品)価格に代表される指標も堅調だし、当然GDPとかも堅調に推移していくはず。そうすると資源価格というのは堅調な状態が続くのではないかと思っているので、2024年度以降もその状態が続くことを前提としている。
ただ、地政学的な影響というのも当然いろんな地域であるし、そういうことをしっかり見ていく。2024年度の総合的な見方は、2023年度からそれほど変わらないだろうが、23年度と同じように伸びることは考えづらい。24年度は、どういう生産体制をとるかも含めて、いま予算計画作成を始めたところだ。情報によってばらつきはあるが、マイニングもコンストラクションも基本的には堅調で、23年度を上限と見ながらも柔軟な生産体制で進めていきたい。
■電動建機全般については。
日立建機は環境環境配慮製品のロードマップを作成している。2024年度は、ヨーロッパで発売した電動ショベル4機種の販売をしっかりやっていく。
また、日立建機として自信を持っているし、市場を変える可能性があると思っているのがEVトロリーバッテリーダンプトラックがある。こちらは、試験が最終段階にきているので、来年早々の出荷に向けて準備を進めている。ザンビアの顧客からも非常に高い期待があり、それにきちんと応えていきながら、この製品を24年度中には仕上げていき、米州におけるマイニング事業を強化する一つの戦略ツールとして活かしていきたい。
小型電動ショベルは、年間数十台だが、ヨーロッパで販売しながら浸透させていきたい。ただ、そこには簡単ではない壁があり、市場も当然そこに気づいている。
やはりインフラの問題がある。自動車の充電バッテリーステーションっていうのは至る所にあるが、それが電動化が浸透していった理由。建設機械のような常時大きなエネルギーが必要になるような機械の場合、それをベースでやる難しさを、市場はいま気付いており、建機各社がそれをどう乗り越えるか、いろんな競争を繰り広げていると思っている。
その進め方の1つが、日立建機が2024年5月、千葉県市川市に開設する研究拠点「ZERO EMISSION EV-LAB」ということになる。ある一定の問題を解決するというのはもう分かっているからこういう実験をする訳なので、その中で、日立建機としては、いすず自動車、伊藤忠商事、九州電力などと、ビジネスモデルの確立を推進していく。インフラというのがどういうふうにあるべきだということを見せる中、そのインフラに対して日立建機のソリューションを提供すること、それが指標として地域性も含めて政府の政策がなければできない。その方法をどういう優先順位でやっていくかだ。
また、マイニングの電動化に関しては、もう別の世界だ。2023年10月、南米で顧客からいろいろな話を聞いたが、大きなダンプトラックになると年間の燃料代は数億円、自分たちが持っている水力発電インフラの環境の中で電気代を出せれば、彼らからすると大きなコストメリットがある。オーストラリアでは大きな太陽光パネルで電気をつくることができる。つまり燃料代との比較で大きなコストメリットが出せるというのが、この仕組みでもある。
すべての鉱山で使えるわけではないが、鉱山のオペレーショの方法に日立建機の製品がマッチするということをきちんと提示することはソリューションになる。このことを提示できれば、マイニングソリューションとして世界への道が開けるはずだと思っている。
2023年12月19日 会見より当サイト編者抜粋
*なお、上記記事は当サイト編者が「聞いた、また概略そのように聞こえた」という感覚で編集していることをお断りします。建設機械業界は専門性が高いため、詳しく知りたい場合は、日立建機がIRページ等で公開している経営資料を参照されたい。
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