コマツは12月6日、年末恒例の「新春向けコマツ社長インタビュー合同取材会」を開催し、小川啓之社長が、2023年の総括と2024年の市場見通し、中期経営計画の重点活動などについて概略説明したあと、以下の質疑応答に入った。以下、順不同で内容を抜粋紹介する。(なお、事前に配布された年頭所感は2024年1月に掲載予定)。
・・・・2050年のカーボンニュートラルへの取り組みについては。
水素活用については、しばらく時間がかかる。一番の理由は、インフラストラクチャだ。水素をどのように供給するかが最大の懸念事項と考えている。燃料電池車、水素エンジン車などは、すでに研究開発している。燃料電池車はトヨタ自動車と協業、テストを進めており、燃料電池の特性等をみていく。水素エンジンについても、パートナーと協業しながら、開発を進めている。すでに、発電機では日立製作所、デンヨーと共同開発しており、工場に導入している。だた、2050年に向け水素活用というのは、建設・鉱山機械だけでなく、インフラをどう構築していくかが重要な課題であり、しばらく時間がかかる。
ただ、建設・鉱山機械は、小さな出力のものから大きな出力のものまである。マイクロショベルでは3Kw、大きな鉱山用ダンプトラックでは1,000~1,500kwの出力が必要であるということ。稼働時間もまったく違い、都市土木の1日数時間から、鉱山機械の1日24時間まで様々な使い方がある。コマツは全方位的に研究開発を進めている。
ただ、これから先の技術革新であるとか、各国の規制等を常にウォッチしながらカーボンニュートラルに向けてのロードマップを書き換えていくということが、一番強い。その中には、充電・給電とかのインフラ施設や水素の供給方法だとかを注視しながら我々のロードマップを書き換えていく。
・・・・・電動建機の来年以降の方向性については。
電動建機は、残念ながらグローバルにみて市場そのものはまだない。自動車と大きく違うところだ。欧州では、いろんなメーカーが電動建機を発売し始めているが、普及しているとはいえない。したがって、来年度の取り組みとしては、新しく出す電動建機の市場を形成していくことが大きな目的だ。一つは、インフラの問題がある。いかに充電・給電していくか。都市土木の場合は、比較的給電しやすいが、多くの建設現場では給電をどうしていくかは大きな課題である。コマツの場合では、バッテリーバンクというバッテリーtoバッテリーで給電するようにしている。来年は市場をどう形成していくかだ。
もう一つはコストの問題。電動建機というのは、バッテリーコストが高く、通常コストの2倍から3倍と高い。車両の50%以上がバッテリー、モーター、インバーター等で占める。このイニシャルコストをいかに下げていくかもポイントだ。今回、バッテリーメーカーを買収したのは、この原価をいかに下げていくかというねらいもある。
電動建機は、やはり原価が高いということもあって、各国で導入に向けた補助金等のインセンティブがなければ普及していかない。コマツは建機工を通して、経産省、国交省など政府に働きかけている。
電動建機のメリットは、従来の軽油より電気代が安いということ。特に電気代の安いノルウェーなどの北欧、そしてオランダ。他の欧州諸国はインセンティブが出ていない。これが他の国にも波及しないと電動建機の普及は難しい。
一方、大手鉱山会社は中・長期的にカーボンニュートラルで運営していく方向性を打ち出している。イニシャルコストは多少上がっても方向性は固いので、受け入れてもらいやすい。いずれにしてもミニ建機や中型建機での電動化は、まだまだ課題があるが、市場を形成していきたい。特に日本においては、マーケットリーダーであるコマツとしては、電動建機を普及させるべく取り組んでいきたい。
・・・・・電動建機の市場形成の具体策は。
まずレンタル機として導入し、顧客に使ってもらう。並行して、インセンティブだとか電気代の問題とか、インフラの問題などに取り組んでいく。これらの問題は、先にも述べたが、コマツ単独ではなく、建機工を通して経産省、国交省に要望書を提出している。そういったことも含めて、電動化建機の普及につとめたい。
これは、2015年から進めている国交省の「アイコンストラクション」をサポートする「スマートコンストラクション」の普及モデルと同じで、電動建機もまずはテストマーケティングという位置づけでレンタルから導入していこうというものだ。顧客の声をフィードバックしながら研究開発につなげていきたい。
・・・・・協業やM&Aについての考え方については。
先に、米国のバッテリー開発会社、ABS社を買収したのは、ABS社の知見を活用して、建設・鉱山機械専用のバッテリー・システムを開発してもらうということで買収した。また今後は、アフターマーケットビジネスに取り込んでいこうというねらいもある。ただ、建設機械も幅広い機種があり、バッテリーを1社で賄うのは非常に難しい。バッテリーセルというものを確保するという意味でも、ABS社以外の会社とも従来どおり関係を続けていく。
コマツのM&Aの考え方は、従来と全く変わらない。電動化を含めたキーコンポーネント、林業機械など、ターゲットの基本方針は変わっていないので、これからも良い案件があれば、進めていく、
・・・・・2024年の中国市場の見通しについては。
中国の建機市場については、上期の決算発表でも説明したが、おそらく2024年も低迷が続くだろう。中国の需要はすでに「底」になっているので、どのタイミングで少しでも回復してくるのかを注目している。コマツにとって、中国の売上高は総売上高の2%しかない。中国の建機市場が大きく増えたとしても経営には殆ど影響はない。ただ、コマツが中国をみているのは、景気低迷が続くとするならば、資源価格の方に影響を及ぼすことが懸念されるからだ。
・・・・・好調の米国市場の動向については。
米国市場の足元は好調だ。金利の影響で住宅着工件数が2~3割落ちているものの、需要はいぜん根強い。住宅の落ち込みをカバーしているのが、インフラ、レンタル、エネルギー関連での需要は好調である。2024年も大きく変化するとは思っていない。一方、未着手住宅の受注残があり、住宅着工件数の倍ぐらいあるとも聞いているので、中・長期的にも根強い需要がある。総合的は、米国の需要そのものは厳しくなるかもしれないが、比較的堅調であるというトレンドは大きく変わらないだろう。上期決算発表でも説明したが、一般建機は厳しい状況だが、マイニングは比較的堅調で、足元の受注はコロナ前より堅調だ。
・・・・・金利上昇や円高の動きのなか、2024年の業績見通しと対策については。
金利上昇や為替の変動については、コマツが制御できないので、従来から為替の動向に一喜一憂しないということできている。特にコメントはない。
コマツがやるべきことの一つは、価格改善(値上げ)。これは2022年、23年と年間で4%程度値上げした。コストアップを値上げでカバーしてきた。22年はサプライチェーンの混乱もあり、需要に対して供給が追い付かないため、値上げしやすい環境であったが、コマツは今年来年も同じように値上げしたい。
二つ目はコスト改善。当然、コスト改善は毎年毎年やっている。中期経営計画においても3年間で500億円のコスト改善をしていくが、これは順調に進んでいる。それから固定費改善ということで、構造改革を進めている。2024年度まで210億円改善していく。1年前倒しで達成するめどがついた。また、中国市場が非常に低迷しているということもあって、中国で構造改革を進めており、来年から効果が出てくる。マイニングのうち、アンダーグランドの石炭事業については、北米とイギリスの工場閉鎖だとか、同事業のコンベア事業も売却した。中国においてもアンダーグランド・石炭事業の会社を売却してきた。そういった構造改革の効果が得られ、固定および原価の改善が見込まれる。
三つ目が、中期経営計画の成長分野への投資ということになる。カーボンニュートラルへの取り組み。足元、電動建機などの市場が形成されているわけではないが、将来に向けてのイノベーション、それからAHS (自律運転)とか、「スマートコンストラクション」、鉱山におけるオープンテクノロジープラットフォームなどに注力していく。それからもう一つは、アフターマーケットにも力を入れる。部品売上高は年々増えており、23年度も過去最高の売上高になる見込みだ。コマツは自社でコンポーネントを開発・生産しており、このコンポーネント戦略の中で、アフターマーケット売上高を拡大させていく。たとえば延長保証を強化して純正部品を使ってもらい、中古車の価値を高めてもらう。あとはリマン(コンポーネントの再生)事業で、これをインテグレ―ド、延長保証とリマンビジネスを組み合わせて、生涯保証していく。そして2001年に導入した「Komtrax 」。「次世代Komtrax」を通じて、様々なビジネスモデルを構築していく、
・・・・・労働力不足など、いわゆる2024年問題について
労働力不足については、2015年からビジネスモデルとして導入している「スマートコンストラクション」がある。これをさらに発展させていくことが一つ。これにより、建設業の労働力不足に対応する社会貢献だと考えている。「スマートコンストラクション」というビジネスは、顧客の施工を最適化し、生産性をあげる。これをさらに拡大していく。また物流における労働力不足については、工場を中心に様々な合理化を進めている。サプライヤーとも協力しながら合理化、効率化を進めている。
2023年12月6日 会見内容の抜粋
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