富士フイルム、米国2拠点に総額約2億ドルの設備投資を実施

・ウィスコンシン・カリフォルニア拠点の細胞治療薬の生産能力を倍増

・伸長する細胞治療薬の開発・製造受託ニーズに対応

 富士フイルムは12月5日、市場成長が見込まれる細胞治療薬の開発・製造受託ニーズに対応するため、細胞治療薬のCDMO※1事業を展開する米国2拠点に総額約2億ドルの設備投資を行うと発表した。

この投資は、iPS細胞のリーディングカンパニーであるFUJIFILM Cellular Dynamics(フジフイルム セルラー ダイナミクス), Inc.(以下FCDI)のウィスコンシン拠点と、バイオ医薬品CDMOの中核会社FUJIFILM Diosynth Biotechnologies(フジフイルム ダイオシンス バイオテクノロジーズ)(以下FDB)のカリフォルニア拠点に対して、細胞治療薬のプロセス開発・製造設備などを増強するもの。

 富士フイルムは、2025年にカリフォルニア拠点、2026年にウィスコンシン拠点にて新設備を稼働させ、両拠点の細胞治療薬の生産能力をそれぞれ倍増させる計画。

 細胞治療薬は、細胞そのものを投与して疾患を治療するバイオ医薬品で、アンメットメディカルニーズを解決する最先端治療薬として注目されている。

 近年、CAR-T細胞治療薬※2など、遺伝子改変細胞を用いた治療薬を中心に研究開発が進んでいることから、細胞治療薬の市場規模は33億ドル(2022年度)から年率30%超で成長することが見込まれている※3。すでに承認されている細胞治療薬は、自家細胞によるものが主流だが、患者自身の細胞を採取・培養して使用するため、投与までに時間がかかり製造コストが高いといった課題を抱えている。この課題を解決するため、ドナー由来の細胞やiPS細胞を用いる他家細胞治療薬の研究開発が活発化している。

 富士フイルムは、FCDIのウィスコンシン拠点とFDBのカリフォルニア拠点で細胞治療薬のCDMO事業を展開している。現在、ウィスコンシン拠点では、高度なiPS細胞技術を用いてiPS細胞由来の細胞治療薬、カリフォルニア拠点では、治験薬製造・商用生産の経験・実績を生かしてドナー由来の細胞治療薬など幅広い細胞治療薬の開発・製造受託に対応できる体制を構築している。

 今回、富士フイルムは、ますます高まる細胞治療薬の受託ニーズにこたえるため、ウィスコンシン拠点とカリフォルニア拠点において総額約2億ドルの設備投資を実施する。いずれの拠点にも、細胞治療薬のプロセス開発用ラボおよび製造設備を導入し、受託能力を大幅に増強する。

 具体的には、ウィスコンシン拠点では、現拠点の近隣に購入した土地・建物※4に、生産プロセスを開発するためのラボ設備、GMP※5製造が可能な設備・クリーンルーム(3室)などを導入する。これにより、細胞治療薬のプロセス開発の受託能力を拡大させるほか、生産能力を現状比倍増させる。またカリフォルニア拠点では、拠点内に生産プロセス開発のスペースを設置する。さらに、GMP製造設備・クリーンルーム(2室)を増設するとともに、既存設備も改造することで、細胞治療薬の生産能力を、ウィスコンシン拠点と同様、現状比倍増させる。
なお、今回のウィスコンシン拠点への投資には、FCDIが展開する、創薬研究(候補物質の探索・薬効・薬理など)で広く用いられる創薬支援用iPS細胞由来分化細胞を対象とした開発・製造設備増強なども含む。

 富士フイルムは、グループ内での連携強化により、顧客に最適なソリューションを提案し、細胞治療薬の開発・製造を支援していく。バイオ医薬品の主力である抗体医薬品から、最先端治療薬である遺伝子・細胞治療薬までの幅広い事業展開で、アンメットメディカルニーズへの対応など社会課題の解決、ヘルスケア産業のさらなる発展に貢献していく。

※1 Contract Development & Manufacturing Organizationの略。生産プロセス開発や安定性試験、治験薬の開発・製造、市販薬の製造まで幅広いサービスを製薬企業などに提供する。
※2 免疫細胞の一種であるT細胞に治療用遺伝子を導入し作製した細胞を用いる細胞治療薬。
※3 Evaluate Pharma® Nov2023を基にした当社推計。2022年~2030年の市場成長率。
※4 今後、増築する予定。
※5 Good Manufacturing Practice の略。医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理規則のこと。

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