・23年度予想は1.6%増の1兆3,000億円
日立建機が4月26日に発表した2023年3月期(2022年度)連結業績によると、為替影響等も加わって、売上収益全体は過去最高の1兆2,794億6千8百万円(対前年同期増減率24.8%)と大幅な増収となった。利益項目については、調整後営業利益が、鋼材価格や物流コストを中心としたコスト増加の影響があったものの、グローバルに主要地域での製品および部品の販売価格への転嫁を推進し、売上収益の増加と為替影響等も加わって、過去最高の1,357億1百万円(同45.1%)と大幅な増益。親会社株主に帰属する当期利益は、持続可能な年金制度の実現に向けた改定に伴う 一時的な損失計上、持分法で会計処理されている投資の減損損失等があり、さらに前年度との比較では、前第4四半期にディア 社との合弁事業解消に伴う持分法適用会社の株式譲渡益があったことも影響し、701億7千5百万円(同△7.5%)となった。
日立建機グループは、2023年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画「Realizing Tomorrow’s Opportunities 2022 明日の好機をつかみとれ」において、①バリューチェーン事 業の強化、②お客さまとのあらゆる接点で深化したソリューションを提供、③変化に強い企業体 質の形成、そして、新たに④「北中南米全域で戦略を実現」を加えた4つの経営戦略で、持続的 な成長と企業価値の向上に取り組んできた。
2022年度における油圧ショベル需要は、中国以外 の主要地域において前年度並みの高水準で推移し、特に先進諸国の需要は堅調に推移した。また、マイニング需要は、高水準の資源価格を背景とした顧客の高い投資意欲や、高い稼働率に伴うオーバーホール需要および定期メンテナンス需要等が継続し、ロシアを除くグローバ ル市場全体で堅調に推移した。
このような環境下、売上収益は、2022年3月から本格的な独自展開を開始した米州でのコンストラクション・マイニング製品の新車販売および部品サービス事業が前年度比で大幅に増加したほか、これまで注力してきた取り組みが実り、マイニング事業およびバリューチェーン事業が過 去最高の売上収益を達成した。
■セグメントの業績
①建設機械ビジネス
2022年度における売上収益は、1兆1,541億3千6百万円(同23.6%)、調整後営業利益 は1,239億5千4百万円(44.2%)となった。
第1四半期に発生した調達・物流の遅れによる事業影響は、第2四半期以降大きく改善し、本格的に独自展開を開始した米州事業も見通し以上に順調に立ち上がり、他の地域でも旺盛な受注に支えられ、コンストラクション・マイニングの新車販売だけでなく部品サービスを中心としたバリューチェーン事業も好調に推移し、前年度比で大きく伸長した。
②ソリューションビジネス
同事業は、主としてマイニング設備及び機械のアフターセールスにおける部品サービス事業を 行うBradken Pty Limited及びその子会社と、サービスソリューションを提供するH-E Parts International LLC及びその子会社で構成されている。
2022年度の売上収益は、マイニングの市場環境が堅調に推移し1,311億6千4百万円(同38.3%)、調整後営業利益も、売上収益の増加と為替影響等により117億4千7百万円(同55.0%)と大幅な増収増益となった。
(注)「ソリューションビジネス」としていたセグメント名称を、2024年3月期より「スペシャ ライズド・パーツ・サービスビジネス」に変更。なお、上記、①②の売上収益については、セグメント間調整前の数値。
■今後の見通し
日立建機グループは、2026年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画「BUILDING THE FUTURE 2025 未来を創れ」を新たに策定し、①顧客に寄り添う革新的ソリューションの提供、② バリューチェーン事業の拡充、③米州事業の拡大、④人・企業力の強化、の4つの経営戦略を掲 げて、今後も持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでいく。
2024年3月期の油圧ショベル需要について、中国・ロシアでは引き続き市況の低迷が続くと見込まれるほか、欧州でも景気減速の兆しが見られる。一方で、米国政府によるインフラ投資効果が期待される北米をはじめとする、欧州以外の主要地域では、前年度と同等水準の需要を見込んでいる。これらを勘案した結果、世界全体の油圧ショベル需要は約22.7万台(対前年同期 増減率△5%)になるものと想定している。
マイニング製品の需要について、一般炭価格が落ち着き、中小型鉱山の投資意欲の低下が見込まれることなどから、小型のマイニングショベルでは需要減を見込む。しかし、日立建機の事業の中心となる超大型のマイニング機械市場は、ロシア産エネルギー資源の代替需要が世界各地で継続すること、コロナ禍後の経済刺激策を目的としたインフラ投資の高まり等により高水準を維持する資源価格を背景に、グローバル全体の需要が底堅く、前年度並みの高い水準になると見込んでいる。
以上のように、市場環境は一部地域・製品での需要減を想定するものの、全体としては概ね前年度と同等の高い水準を維持すると見込んでいる。これらの市場動向に加え、日立建機グループ では、注力する米州を中心に、マイニング事業、バリューチェーン事業において前年度以上の成長を見込む。利益面では、鋼材価格や物流コストが高止まり、エネルギーコストも一段と高 まる想定にあるものの、これまで取り組んできた各種の原価低減やグローバルに販売価格への転嫁を継続し、さらなる収益改善を図る。
現時点では、2024年3月期(2023年4~24年3 月 、2023年度)連結業績予想は下記のとおり、過去最高となった2022年度を上回る増収増益をめざす。
売上高1兆3,000億円(前期比1.6%増)、調整後営業利益1,400 億円(同3.2%増)、税引前当期利益1,310億円(同16.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益820億円(同16.9%増)。
なお、業績見通しの前提となる為替レートについては、米ドル130円、ユーロ130円、人民元18.1円、豪ドル84円を 想定している。
日立建機グループでは、「お客さまの期待に応え、革新的な製品・サービス・ソリューションを 協創し、ともに新たな価値を創造し続けます」という新たに策定したミッションの実現を通じ、 今後も、「豊かな大地、豊かな街を未来へ 安全で持続可能な社会の実現に貢献します」という 企業ビジョンの実現に真摯に取り組んでいく。
2023年3月期決算説明資料(中期経営計画含む)
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