川崎重工業が11月10日に発表した2023年3月期第2四半期連結累計(3~9月)業績によると、連結受注高は前年同期比2,071億円増加の8,666億円、連結売上収益は前年同期比787億円増収(11.6%増)の7,597億円、事業利益は前年同期比131億円増益(74.8%増)の308億円、税引前四半期利益は前年同期比211億円増益(143.3%増)の359億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は前年同期比165億円増益(229.1%増)の237億円となった。
4~9月期における世界経済は個人消費を中心に回復が進んでいる一方で、インフレや金融引き締めの影響による景気後退のリスクに留意が必要である。また、物資の供給不足や物流混乱等の収束が見えつつも、いくつかの分野で事業活動の正常化に時間を要している。
国内においてはコロナ第7波が縮小し、サービス消費や設備投資など内需主導での景気回復が続いているが、歴史的な円安や原材料高による物価上昇が進行しており、引き続き動向を注視する必要がある。
このような経営環境の中で、4~9月期における川崎重工グループの連結受注高は、エネルギーソリューション&マリン事業、モーターサイクル&エンジン事業を中心に増加となった。連結売上収益については、モーターサイクル&エンジン事業、航空宇宙システム事業などが増収となったことにより、全体でも前年同期比で増収となった。
利益面に関しては、事業利益は、精密機械・ロボット事業、車両事業での減益などはあったものの、モーターサイクル&エンジン事業、エネルギーソリューション&マリン事業、航空宇宙システム事業での増益などにより、前年同期比で増益となった。親会社の所有者に帰属する四半期利益は、事業利益の増益に加え、為替差損益の好転などにより、増益となった。
■セグメント別業績
<航空宇宙システム事業>
航空宇宙システム事業を取り巻く経営環境は、防衛省向けについては抜本的な防衛力強化という防衛省の方針のもと、今後の需要増が期待されます。民間航空機については、新型コロナウイルス感染拡大により低迷していた航空旅客需要は、経済活動再開を優先する諸国が増加してきていることから、回復に向けて大きく前進している。
このような経営環境の中で、連結受注高は、民間航空エンジン分担製造品や防衛省向けが増加したことにより、前年同期に比べ284億円増加の1,256億円となった。
連結売上収益は、民間航空機向け分担製造品が減少したものの、民間航空エンジン分担製造品が増加したことにより、前年同期に比べ116億円増収の1,450億円となった。
事業損益は、民間航空機向け分担製造品が悪化したものの、民間航空エンジン分担製造品が改善したことにより、前年同期に比べ46億円改善して30億円の損失となった。
<車両事業>
車両事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大による鉄道利用者数の減少の影響があったが、感染拡大対策が進む中で利用者数の回復が見込まれ、国内外で老朽車両の置換計画が進捗している。一方で、足元への影響は限定的ではあるものの、電子部品等の供給不足や物流混乱、原材料価格の高騰については、収束が見えつつも注視が必要である。中長期的には、人口集中による大都市の混雑緩和や環境対策のための都市交通整備、アジア諸国の経済発展に伴う鉄道インフラニーズなど、今後も世界的に比較的安定した成長が見込まれます。
このような経営環境の中で、連結受注高は、国内向け新型通勤電車などの大口案件を受注したことにより、前年同期に比べ161億円増加の393億円となった。
連結売上収益は、国内向け車両が減少したものの、アジア向け車両が増加したことなどにより、前年同期に比べ9億円増収の585億円となった。
事業損益は、アジア向け車両の増加などによる増収はあったものの、米国ロングアイランド鉄道向け車両案件の工程遅れによる影響等により、前年同期に比べ13億円悪化して0億円の損失となった。
<エネルギーソリューション&マリン事業>
エネルギーソリューション&マリン事業を取り巻く経営環境は、世界経済が新型コロナウイルス感染拡大の影響による停滞から正常化に向かう中、回復基調を維持している。国内外の分散型電源需要、及び新興国におけるエネルギーインフラ整備需要は依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要も継続している。また、LPG/アンモニア運搬船の受注が増加するなど新造船市況も一時の低迷を脱している。更には、世界的にカーボンニュートラルの実現を目指す動きが強まっており、川崎重工が強みとする水素製品をはじめ、脱炭素ソリューションに関する問い合わせや協力要請が増加している。一方、発電設備の稼働に必要な燃料ガスの入手性など足元の状況に不透明感があるほか、昨今の原材料価格や資機材・燃料費、輸送運賃の高止まり等による受注、売上収益への影響には注視が必要である。
このような経営環境の中で、連結受注高は、発電設備やLPG/アンモニア運搬船の受注増加、国内向けごみ処理施設整備・運営事業などの大口案件の受注などにより、前年同期に比べ741億円増加の2,384億円となった。
連結売上収益は、国内向けごみ処理施設案件の工事量減少はあったものの、エネルギー事業や防衛省向け潜水艦の工事量増加などにより、前年同期に比べ35億円増収の1,345億円となった。
事業損益は、国内向けごみ処理施設案件の工事量減少はあったものの、持分法損益の改善などにより、前年同期に比べ87億円改善して31億円の利益となった。
<精密機械・ロボット事業>
精密機械・ロボット事業を取り巻く経営環境は、精密機械分野では、中国以外の地域における建設機械市場については堅調に推移しており、中国建設機械市場は、ゼロコロナ政策に伴うロックダウン等の影響により需要が一時低迷したが、輸出の好調により回復の兆しが見えつつある。ロボット分野では、半導体メーカーの高水準の設備投資が継続する中で、半導体製造装置向けロボットが好調に推移し、汎用ロボットも、自動化投資の高い需要が続いている。
このような経営環境の中で、連結受注高は、ロックダウンによる中国建設機械市場向け油圧機器への影響が緩和したことに加え、半導体製造装置向けをはじめとする各種ロボットの増加により、前年同期に比べ114億円増加の1,395億円となった。
連結売上収益は、拡販による各種ロボットの増収はあったものの、前年同期並みの1,176億円となった。
事業利益は、中国建設機械市場向け油圧機器が減少したことや、電子部品や素材費高騰等のコストアップ、ロックダウンで操業が低下したことなどにより、前年同期に比べ23億円減益の55億円となった。
<モーターサイクル&エンジン事業>
モーターサイクル&エンジン事業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染拡大による市場への影響が継続している。物流の混乱は改善の方向に向かっているが、半導体や原材料の不足は継続しており、製品供給への影響は引き続き注視が必要である。主要市場である米国及び欧州市場では需要は堅調に推移している。また、東南アジア市場は国ごとの差はありつつも全体として前年度よりは回復している。
このような経営環境の中で、連結売上収益は、製品供給不足による欧州向け二輪車の減少や、中国ロックダウン等による一過性の影響はあったものの、北米向け、東南アジア向け二輪車及び北米向け四輪車が増加したことに加え、為替レートが円安に推移したことなどにより、前年同期に比べ584億円増収の2,651億円となった。
事業利益は、原材料費、物流費の高騰、固定費の増加はあったものの、為替の影響に加え、二輪車及び四輪車それぞれが拡販や値上げの効果により増収したことなどにより、前年同期に比べ89億円増益の280億円となった。
<その他事業>
連結売上収益は、前年同期に比べ47億円増収の388億円となった。事業利益は、前年同期に比べ1億円減益の18億円となった。
川崎重工グループはグループビジョン2030において、注力するフィールドを「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」とし、より成長できる事業体制への変革を目指しており、手術支援ロボットの開発や自動PCR検査事業、更には、配送ロボットや無人輸送ヘリコプターの開発、水素関連プロジェクトの推進など、新事業への取り組みを着実に進めている。
■連結業績予想などの将来予測情報に関する説明
川崎重工グループは第1四半期連結会計期間よりIFRSを任意適用しているため、2023年3月期の連結業績見通しもIFRS に基づき算定している。
為替レートが円安基調で推移していることに加え、モーターサイクル&エンジン事業を中心とした拡販及び値上げや航空宇宙システム事業における収益改善等による増収増益により、売上収益は前回(8月12日)公表値から300億円増収の1兆7,200億円(前期比14.6%増)、事業利益は前回公表値から200億円増益の760億円(前期比150.3%増)となる見通しである。
また、上記事業利益の見直しに伴い、税引前利益は680億円(前期比145.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は450億円(前期比256.1%増)となり、ROICは6.6%、ROEは8.5%となる見通しである。
連結受注高は、車両事業における米国ニューヨーク市交通局向け地下鉄車両案件の受注内定等により、前回公表値から3,000億円増加の1兆9,000億円(前期比18.6%増)となる見通しである。
なお、本業績予想における為替レートは、1ドル=140円、1ユーロ=135円を前提としている。
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