技研製作所、22年8月期売上は10%増の約304億円、23年8月期予想は5.3%増の 320億円

 ㈱技研製作所が10月12日に発表した2022年8月期(2021年9~22年8月)連結業績によると、売上高は、30,378百万円(前期比10.0%増)、営業利益は4,613百万円(同15.4%増)、経常利益は4,832百万円(同16.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,234百万円(同5.2%増)となった。

 技研製作所2022年8月期データ

■セグメント業績

①建設機械事業:国内において国土強靭化対策工事等の防災関連事業等が進捗するとともに、民間建設投資の回復基調が続く中、土木構造物の本体施工で使われ始めた900㎜幅ハット形鋼矢板用のサイレントパイラーF301-900の販売が堅調に推移した。また、汎用機の入れ替え需要も堅調に推移した。その結果、売上高は20,851百万円(前期比9.0%増)、セグメント利益は6,068百万円(同27.1%増)となった。

②圧入工事事業:災害復旧・復興工事や防災・減災関連工事等において工法採用が堅調に推移する中、首都直下地震、津波・高潮対策としての護岸、防潮堤工事、水門の耐震補強(東京都)や地すべり対策(長野県)、ジャンクションの道路擁壁(北海道)、民間の石油貯蔵基地における側方流動対策(香川県)等において工事が順調に進捗した。

 このような状況のもと、圧入工事事業の売上高は9,526百万円(前期比12.3%増)となった。一方、天候不順等を受けた大型案件の工期延長によるコスト増が利益を減少させ、セグメント利益は948百万円(同23.7%減)となった。

■経営成績の概況

 技研製作所グループは、事業の飛躍的発展を目指し、中期経営計画(2022年8月期-2024年8月期)の長期事業展望として「2031年8月期の売上高1,000億円」を掲げた。中計の初年度に当たる当期は、達成に向けた戦略や数値目標を盛り込んだ「長期ロードマップ・GIKEN GOALS 2031」の作成を進め、各部門において具体的な取り組みを本格化させた。

 当期における技研製作所グループを取り巻く事業環境は、国内における公共投資は底堅さを維持したうえ、民間建設投資は持ち直しの動きが継続し、顧客の設備投資意欲は堅調に推移した。しかし、ウクライナ情勢等を背景とした原材料やエネルギーコスト高騰等による経済の先行きは不透明な状況が続いている。こうした中、技研製作所は6月受注分より原材料等の価格上昇を吸収するため、製品価格を5~10%上げて価格転嫁した。

 国内における工法提案活動では、技術提案のさらなる推進を図るため組織体制を強化し、引き続き災害復旧・復興事業や防災・減災対策、インフラ長寿命化対策等の国土強靭化関係を中心にインプラント工法※1の普及拡大に取り組んだ。その成果として、熊本県を中心に大きな被害をもたらした2020年7月豪雨の被災地では、被災道路や橋梁の復旧および再度災害防止工事において工法採用が進んだ。また、河川の氾濫により崩落した国道219号(熊本県球磨村)および210号(大分県日田市)では、グループ会社の㈱技研施工が再度災害を防ぐ粘り強いインプラント構造の道路擁壁を構築した。このほか、地震・津波・高潮対策としての防潮堤や水害対策としての河川護岸改修、高速道路整備、港湾施設の改良等のインフラ整備に加え、民間で事前防災対策として工場を水害から守る遮水壁が採用される等、工法の適用範囲が広がり、採用は順調に増加した。

1 一本一本が高い剛性と品質を有した杭材(許容構造部材)を地中深く圧入し、地震や津波、洪水などの外力に粘り強く耐える「インプラント構造物」を構築する工法。

 海外売上比率7割を目指す海外展開では、オランダ・アムステルダム市の「世界遺産の運河護岸改修にかかる新技術開発プロジェクト」において、2021年4月に設立した合弁会社「G-Kracht B.V.」が2022年6月、発注者である同市と実証施工(パイロット施工)契約を結んだ。カーボンニュートラルに貢献する電動ジャイロパイラー、およびGRBシステム※2を駆使した圧入施工は11月にスタートする予定。

 タイでは、主要河川・パサック川の護岸整備事業にインプラント工法が採用され、サイレントパイラーF301-900を納入した現地企業が6月から、ハット形鋼矢板による二重連続壁の河川護岸の構築をスタートさせました。本事業で予定されている整備区間は約52㎞におよぶことから今後も継続的な工法採用が望め、機械販売等の売上促進につながることを期待している。さらに本件の実績である無振動・無騒音、インプラント構造物の粘り強さなどの優位性をアピールすることで、豪雨災害が頻発する東南アジア各国をはじめとする世界中の治水対策に波及効果が生まれることを期待している。アジア地域ではこのほか、インドで巨大市場参入の起点となるユーザーを獲得し、サイレントパイラーF301-700を1月に納入する等、工法普及の活動を本格化させた。

 ブラジルの鉱滓ダム防災対策工事では、技研製作所グループの技術指導を受けた現地企業が、ジャイロパイラーを用いて昨年9月から今年3月にかけて実証施工(パイロット施工)区間の工事を行い、完了した。

 オーストラリアでは、グループ会社の J Steel Group Pty Limited が昨年10月、シドニーのフィッシュマーケット再開発プロジェクトで受注した仮締切工に着手し、今秋の完工に向けて工事を進めた。

2 完全電動化により施工時のCO2排出ゼロを可能とする次世代の圧入システム。

 地下開発製品の展開では、東京都葛飾区で初となる機械式駐輪場「エコサイクル」2基(地下型・計408台収容)の施工を進め、9月にオープンした。また、来春オープンを目指す東急新横浜線・新綱島駅前(横浜市港北区)においてもエコサイクルの整備が決まり、技研施工が6月に工事を受注した。横浜市での設置は初めてで、観光地としても居住地としても注目度の高い同市での整備は提案力の強化につながる。これでエコサイクルの採用実績は全国26箇所、63基となり、継続的に増加している。

 技研製作所は当期から受注生産体制を本格化させた。現段階では順調に効率的な受注生産、販売が進んでいる。さらにこの受注生産を確実にするために、建設機械レンタル大手・㈱アクティオとレンタル業務提携契約を結んだ。アクティオが国内外に有する広域営業網を活かして新規ユーザーの開拓を加速させる狙いで、協業拡大に向けて同社スタッフへの保守・現場技術、提案営業のノウハウ提供を進めた。また建設機械レンタル大手・西尾レントオールで、技研製作所とグループ会社のシーアイテックが共同開発した杭精度管理システム「インプラント NAVI」をレンタル提供できる体制を整えた。同製品により工事の省人化、生産性、信頼性の向上を実現し、圧入技術、インプラント工法の採用拡大につなげていく。さらにこのインプラントNAVIの技術は国土交通省による「ICT施工の基準類作成」の取り組みで基準化が実現し、インプラント工法の普及拡大に弾みがついた。

 未来に向けた技術開発では、月面での建設活動、地上における建設技術の革新を見据え、国が進める「月面等での建設活動に資する無人建設革新技術開発推進プロジェクト」に参加し、F/S(実行可能性調査)ステージから技術研究開発(R&D)ステージに進むことが決まり、国土交通省と新たに契約を結んだ。今後4年間での具体的な技術開発に目途をつけたものであり、圧入技術の宇宙空間への広がりで、「月への夢」は新たなフェーズに進むことになった。

■2023年8月期の見通し

 2023年8月期の業績については、連結で売上高32,000百万円(前期比5.3%増)、営業利益5,000百万円(同8.4%増)、経常利益5,050百万円(同4.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,500百万円(同8.2%増)を見込んでいる。

  技研製作所の2022年8月期決算短信