・水素の高圧供給(900kPa)で安定燃焼、低NOx・低コストを実現
・NEDOによる「水素社会構築技術開発事業」プロジェクトに参加、産学官連携でも成果
・製鉄所や化学工場から排出される水素ガスを電力や蒸気として有効利用し、既存の産業用ボイラー設備を脱炭素化
三菱重工グループの三菱重工パワーインダストリー(横浜市中区)は2月28日、濃度100%の水素を低コストの設備投資で高効率に安定利用できる、産業用ボイラー向け水素焚きバーナー燃焼技術の開発・実用化にめどをつけたと発表した。本件は、2020年度に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「水素社会構築技術開発事業(大規模水素エネルギー利用技術開発)」(本事業)を通じ、成果を得たもの。
水素は、従来主流のボイラー燃料であるLNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)に比べ、体積当たりのエネルギー密度が小さく、コンパクトな設備でボイラーに必要な熱量を供給するためには、高圧による大量供給技術が不可欠となる。
今回は、三菱重工グループ独自の低NOx(窒素酸化物)ガスバーナー技術をベースに採用し、水素の燃焼メカニズムを分析して最適化することにより、従来の最大供給圧力100kPaに対して900kPaまでの供給圧力での安定燃焼を達成。さらに、同一バーナーで0.1kPaから900kPaの広範囲(ターンダウン比:約1/100(注1))にわたる圧力範囲の水素でも、安定した火炎を形成し安全に運転できることを検証しました。水素の高圧化によるNOx発生抑制に加え、二段燃焼方式などの採用で、LPG燃料と比べて大幅なNOx低減率実現が可能となり、目標としていた東京都の規制値である60ppm(注2)以下を達成し、さらに10ppm以下へと大幅に低減できることも確認できている。このNOx低減レベルは、世界でも類を見ないもの。なお、本事業における燃焼解析では帝京大学とも協業し、基礎燃焼試験では共同研究先として横浜国立大学の協力も得ており、産学官連携事業としての成果も挙げられたといえる。
三菱重工グループではこの技術により、既存の発電・工場送気用の石炭・油・ガス焚き産業用ボイラーを水素の大規模利用先として有効活用することができる道を開拓。これにより、多様なニーズに応じたソリューションを提供し、お客様設備の低炭素化・脱炭素化をサポートすることで、持続可能な循環型社会構築へ貢献していく。
1 ターンダウン比とは、バーナー(燃焼器)における燃焼負荷の可変範囲のことで、安定な燃焼が可能な最小の燃焼負荷に対する最大の燃焼負荷の比で表したもの。
2 標準酸素濃度5%の設備の場合。
Tags: エナジートランジション,カーボンニュートラル。
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