・ころに高い密着力のDLCコーティングを適用し、耐摩耗性を大幅に向上
NTNは10月19日、ころの転動面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜*1を適用することで、耐摩耗性を大幅に向上させた風力発電装置主軸用「DLCコーティング自動調心ころ軸受」を開発したと発表した。
風力発電装置の主軸用軸受(以下、主軸受)には、高負荷容量かつ取付誤差に対する許容能力に優れた自動調心ころ軸受が多く採用されている。主軸受は、風況条件により起動と停止を繰り返し、極めて低速な回転状態で使用される。このような環境で使用される主軸受には、潤滑不足による軌道面ところの金属接触と自動調心ころ軸受特有の転がりすべり*2が原因で、軌道面に摩耗が発生し、はく離や割れといった不具合に進展するという課題がある。
開発品は、ころの転動面に高い密着力によりはがれにくいDLC膜を適用することで軸受軌道面の耐摩耗性を大幅に向上させている。DLC膜は①母材との密着力を高めるための金属下地層、②下地層と最表層の急な硬度変化を避けるために設けた中間層、③非常に硬質な最表層の3層構造となっており、過酷な潤滑状態でも、密着力の高いDLC膜が継続的に高い性能を発揮する。DLC膜がない標準品の軌道面が、1ヵ月で摩耗からはく離に至る加速試験条件下において、開発品はほとんど摩耗が発生しない。
開発品は、すでに一部の顧客向けに量産を開始しており、今後さらに提案を進めるとともに、特に軌道面の摩耗による早期損傷に対応する補修品としての販売も強化する。また、今回開発した被膜処理技術は、風力発電装置のコンパクト化を目的に2017年に開発した「左右列非対称設計*3」と組み合わせることも可能。
NTNは、顧客がニーズに合わせて開発品のDLCコーティングや左右列非対称設計から最適なオプションを選んでいただけるよう商品ラインナップを拡充し、風力発電市場における販売拡大に取り組んでいく。
*1) ダイヤモンド構造とグラファイト構造を有する炭素が不規則に混在した非晶質構造の硬質膜
*2) 転がりすべりとは、ころと軌道輪の接触部に生じる回転方向の速度差に起因するすべりのこと
*3) 2017年8月24日プレスリリース:風力発電装置主軸用「左右列非対称自動調心ころ軸受」を開発
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