日立建機が5月28日に発表した2020年3月期(2019年度)連結業績によると、売上収益は、9,313億4千7百万円(前年比△9.9%)となった。利益項目については、前年比では、売上収益の減少、為替の円高影響等により、調整後営業利益は766億1千8百万円(同△34.4%)、営業利益は728億4千9百万円(同△28.8%)、親会社株主に帰属する2019年度利益は411億7千1百万円(同△39.9%)となった。
なお、個別業績についても同様の理由により、売上収益は4,825億7千1百万円(同△11.6%)、2019年度純利益338億3千2百万円(同△33.0%)となった。(数値表記は原文尊重)
■経営成績の概況
日立建機グループは、2019年度が最終年度となる3カ年の中期経営計画「CONNECT TOGETHER 2019」の経営施策を重点的に推進し、顧客の事業課題である「安全性向上」「生産性向上」「ライフサイクルコスト(燃料費・維持費・修理費等を含む費用)低減」に繋がるICT・IoTを活用した解決策を「Solution Linkage®」と位置付け、積極的に取り組んできた。
部品サービス事業では、「ConSite®」の浸透を図っており、とりわけ2017年度より始めた建設機械業界初の、センサによりオイルの状態を遠隔で検知しエンジンや油圧機器の故障予知を行う「ConSite® OIL」を、ヨーロッパ、日本、オーストラリアに続き、今期は東南アジア・中国市場へ提供を開始する等、世界各地の顧客のライフサイクルコストの低減に取り組んだ。
マイニング事業については、日立グループとの協業により高度な車体安定化制御を実現した、リジッドダンプトラックAC-3シリーズの拡販に努め、鉱山運営の効率化に貢献するマイニング機械の運行管理システムの提供や自律運転技術(AHS)の開発に積極的に取り組んでおり、今年前半の商用化をめざし、オーストラリアのホワイトヘイブン社と協業を進めてきた。
また、買収したH-E Parts社、Bradken社ではマイニング設備関連の部品サービス等を推進するソリューション事業を強化している。Bradken社では、今期から日立建機のダンプトラック用の純正荷台の製作を始め、さらにグループの協業を深化させてきた。
レンタル事業では、米国のACME社への出資やイギリスのSynergy Hire社設立に続き、中国でも事業強化を進めており、今後さらにアジア・大洋州でも展開を図っていく。
以上、日立建機では新車販売以外のバリューチェーン(新車販売以外の事業である部品サービス、ソリューションビジネス、レンタル等の事業)の強化を進め、収益の拡大を図ってきた。
一方、世界的に先行き不透明感の拡がる中、19年度第4四半期から世界中で深刻化した新型コロナウィルス感染症(COVID-19)拡大の影響による油圧ショベル需要の減少、資源価格下落の影響による中小規模鉱山会社からのマイニング機械需要の減少、また第3四半期に発生した日本国内の台風による出荷遅れ、ならびに前年度と比較し円高基調で推移した為替の影響などを受けた。
■セグメント業績
①建設機械ビジネス
2019年度における油圧ショベル需要は、日本や北米においては堅調に推移したものの、世界的に先行き不透明感の拡がる中、第4四半期からCOVID-19の影響が各地に広がり、中国・アジア・インド・オセアニア・アフリカ・西欧等多く地域で前年度を下回った。一方、マイニング機械需要は大規模鉱山を所有する大手鉱山会社からの需要は、前年同様の水準で推移したが、中規模鉱山会社からの需要は減少した。
この結果、売上収益は、COVID-19の影響による市場の減速に伴う新車販売の減少や円高影響等を受け、8,407億6千2百万円(前年比△10.3%)となった。調整後営業利益は、売上収益の減少や円高影響で、685億2千9百万円(同△38.3%)となった。
②ソリューションビジネス
同事業は、2016年度に連結子会社化した、主としてマイニング設備及び機械のアフターセールスにおける部品サービス事業を行うBradken社とサービスソリューションを提供するH-E Parts社で構成されている。
売上収益は、ロシアCISやアジア等でマイニング機械向け売上が堅調に推移し、前年比で現地通貨ベースでは増収を確保したものの、為替の円高影響により、919億7千5百万円(前年比△5.0%)となった。
調整後営業利益は、Bradken社で昨年度までに実行した事業構造改革の効果もあり、80億8千9百万円(同38.3%)となった。
なお、上記、①②の売上収益については、セグメント間調整前の数値である。
■今後の見通し
2021年3月期の油圧ショベル需要見通しは、COVID-19の影響に伴う市場の減速が継続し前年度需要を大きく下回り、世界全体で約16万6千台(前年比△23%)となるものと現時点では想定している。
マイニング機械においても世界的な景気不透明感から新規投資は抑制傾向となり、新車需要は減少傾向となると見ている。鉱山の中には、一部地域では感染拡大防止の観点から稼働停止となっている現場がある一方、社会インフラを支える事業(Essential Business)として引き続き稼働している地域もある。またソリューションビジネスにおいても、主たる顧客であるマイニング会社の継続的な資源生産に伴う機械・設備に関するサービス需要は根強くあると見ており、引き続きしっかりと対応していく。
以上の状況を踏まえて、日立建機グループでは、デジタル技術を活用して、バリューチェーンの事業強化を更に推進し、顧客とのあらゆる接点において深化したソリューションを提供するとともに、原価低減やたな卸資産の適正化を進めることなど変化に強い企業体質の形成をめざしていく。
2021年3月期連結業績予想(2020年度)については、COVID-19の拡大に伴う需要減の影響や米中経済摩擦、英国のEU離脱等の現時点でのさまざまな懸念材料を勘案し、下記の通りとした。
売上高7,700億円(前期比17.3%減)、営業利益360億円(同50.6%減)、親会社株主に帰属する当期利益200億円(同51.4%減)。
業績見通しの前提となる為替レートについては、米ドル105円、ユーロ120円、人民元15.0円、豪ドル72円を想定している。
なお、2020年度を初年度とする中期経営計画の施策詳細および数値目標については、COVID-19が事業活動及び経営成績に与える影響により、現時点では適正かつ合理的な算定が困難であることから開示していない。今後算定が可能となった時点で速やかに開示するとしている。
詳細情報は→ 決算説明資料
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