・MHI Vestas Offshore Wind A/Sによる洋上風力設備輸出支援第1号案件
日本貿易保険(NEXI)は2月25日、台湾のChangfang及びXidao洋上風力発電プロジェクト向け融資に対して保険の引受を決定したと発表した。
同プロジェクトは、デンマークのインフラファンド運営会社Copenhagen Infrastructure Partnersが運営管理するファンドを通じて出資設立したChangfang Wind Power Co., Ltd及びXidao Wind Power Co., Ltd.(以下、プロジェクト会社)を通じて、台湾中部の彰化県沖11~25kmの台湾海峡洋上おいて、589MWの洋上風力発電所を新たに建設、運転及び保守を行うもの。
発電される電力は、台湾電力に商業運転開始後20年間にわたり売電される。三菱重工業が50%出資参画するデンマークの洋上風力発電設備製造会社MHI Vestas Offshore Wind A/S(MVOW)は同プロジェクトにタービンサプライヤーとして参画し、風力タービン発電機及びタワー62基等の主要機器の納入、据付及び保守を行う。
プロジェクト会社によるこれら設備の購入資金について、NEXIはローカル・バイヤーズ・クレジットに基づく融資保険を引き受けるものであり、MVOWの輸出支援第1号案件となる。
NEXIは、プロジェクト会社がプロジェクトファイナンスにより調達する協調融資総額約900億台湾ドル(約3,240億円)のうち、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、クレディ・アグリコル銀行、ドイツ銀行、DBS銀行、ソシエテ・ジェネラル銀行、オ-バーシー・チャイニーズ銀行、スタンダードチャータード銀行、香港上海銀行の計10行の民間金融機関による融資約102億台湾ドル(約370億円)に対して保険を引き受ける。
なお、アトラディウス・オランダ政府ビジネス(Atradius)、デンマーク輸出信用基金(EKF)、韓国貿易保険公社(K-sure)、英国輸出信用保証局(UKEF)、ノルウェー輸出信用保証機関(GIEK)、ドイツKfW IPEX-Bankといった6ヶ国の輸出信用機関・開発金融機関も同プロジェクトへの支援を決定している。
台湾では電力需要が拡大する中、必要なエネルギー資源を輸入に依存し、原子力の稼働縮小等により供給予備率が低下傾向にあるが、台湾政府は2025年までに5,700MW相当の洋上風力発電の導入を計画している。同プロジェクトはこの政策目的に適い、台湾の目指すエネルギーミックスや環境負荷の低減に貢献することが期待されている。
また、同プロジェクトは、三菱重工が出資するMVOWの洋上風力タービン製造事業を支援するもので、今後も大きな成長が見込まれる洋上風力発電設備市場における事業機会拡大に貢献する案件であり、三菱重工グループひいては我が国産業の国際競争力の向上に繋がるもの。加えて、NEXIとして初となる、インフラファンドがメインスポンサーとなる案件の保険引受となる。同ファンドは、洋上風力を中心に再生エネルギーでの事業経験が豊富で、欧州の有力年金基金など数多くの機関投資家が出資している。世界的に資金提供者が多様化する中で、インフラファンドの組成が拡大する傾向にあるが、こうした時代の変化にも出来る限り柔軟な対応をすべく取組を進めている。
日本政府は「インフラシステム輸出戦略(経協インフラ戦略会議決定 令和元年度改訂版)」において、パリ協定を踏まえ、世界の脱炭素化をリードしていくため、相手国ニーズに応じ、再生可能エネルギーを始めとする「低炭素型インフラ輸出」を積極的に推進する方針を掲げている。加えて、ローカル・バイヤーズ・クレジットの活用促進や、再生可能エネルギー事業への公的金融の積極活用も掲げている。同プロジェクトはこれら日本政府の施策にも合致するもの。
NEXIは、今後も日本の政策金融機関として、本邦企業やその関連企業による輸出を積極的に支援していく。