閲覧御礼! <解説>ダンフォスのイートン買収と世界の油圧業界

 2019年1月21日、デンマークに本拠を構えるダンフォスが、イートン(登記本社:ダブリン)から主に米国を拠点とする油圧事業部門を買収すると発表した。両社が統合されれば、売上規模は約5,500億円(2018年ベース)となり、ドイツに本拠を構えるボッシュ・レックスロスの7,400億円(2018年)に迫る。これにより、米国の油圧・空気圧の複合企業、パーカー・ハネフィン(2018年:約1兆5,700億円)と合わせ大手3社で約2兆8,600億円、世界のフルードパワー市場(約7兆円:推定)の40%、油圧関連市場(約5兆2,000億円:同)の55%となる。

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<「ダンフォス、イートンの油圧事業買収」は22~27日・15時まで、部品関連のニュースとしては多くの方々に閲覧(日本・アジア・欧米など9か国=日本語利用、訪問者数754、ページビュー数1,073=Google Analytics、他社ツールは1,400前後)いただきました。日本語メディアで報じられていないこともありますが、殆どが関係筋また取引先の閲覧と推定されます。今回は、解説的な関連記事です。関係方面にサイトを紹介いただければ幸いです。>

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 今回の買収発表(2020年内に完了予定)は、油圧事業をコア事業として強化するダンフォスと、電気製品など自動車・エレクトロニクス関連に重点を置き利益確保を狙うイートンとの違いが明確になった結果だと見られる。

 イートンの最近の営業利益率は、全社平均の17~18%に対し、油圧事業は11~12%と他の事業部門に比べて低い。自動車部品を源流とする経営風土は量産品を対象とした米国系企業ならではの特色である。住友重機械工業(住友イートン機器)との合弁事業解消も、日本における市場シェア及び利益率の低さを問題としたイートンの主張が前面にでた結果とさえ伝えられていた。

 一方、ダンフォスは冷凍システム用サーモスタット膨張弁からスタートしたが、1960年代から油圧事業も育成・拡大してきた歴史がある。1961年、米国チャー・リン(Char-Lynn)社が幅広い用途を対象として開発したオービットモータ(低速高トルク油圧モータ)、オービットロール(全油圧パワーステアリング)の欧州における製造販売権を取得、一時は本家を上回る実績を上げたとさえいわれる。

 しかし1970年、当時のイートン・エール・タウン社がチャー・リンを買収したことで、この提携関係は途切れ、ダンフォスが独自でオービタルモータを開発せざるを得なくなる。(この事は、日本のオービット製品代理店にも大きな変化を及ぼした)。その後も、ダンフォスはHST(油圧トランスミッション)で著名な旧サンドストランド社(米)を傘下にもつザウアー社、ホワイトドライブ・プロダクツを買収し、油圧の総合メーカーとして発展していった経緯がある。最近では、オフ・ハイウェイ(建機・車両)分野におけるデジタル化志向を鮮明に打ち出しており、売上トップのボッシュ・レックスロスに迫ろうとしている。

ダンフォスパワーソリューションズ

イートンのハイドロリクス関連ブランドはこちらで確認

<参考:両社の油圧関連ニュース>

会社の創業 1911年:Joseph Eaton(ジョセフ・イートン)が米国にイートン設立

          (ギヤ駆動のトラックアクスルなどを開発・製造)

会社の創業 1933年:Mads Clausen(マッド・クラウセン)がデンマークにダンフォス設立

          (サーモスタット膨張弁などを開発・製造)

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1942年:オービットモータ開発のチャー・リン(米)が設立される。

1961年:ダンフォスがチャー・リンからオービット製品の欧州独占製造権を取得 

1964年:ダンフォス・ハイドロリクス(デンマーク)がオービタルモータを開発

1968年:ダイキン工業(日本)がHSTのサンドストランド(米)と技術提携 

1966年:ホワイトドライブ(米)がオービタル・ジロータモータで特許を取得

1970年:イートン(米)がチャー・リン(米)を買収し油圧事業に参入

1974年:住友イートン機器(日本)が設立される

1977年:日本オイルポンプがオーブマーク(米)と技術提携

1987年:ザウアー(独)がHSTのサンドストランド(米)を買収

1999年:イートン(米)が油圧総合メーカーのエイロクイップ・ビッカース(米)を買収

2000年:ダンフォスの油圧部門がザウアーと統合、ザウアーダンフォスが誕生

2001年:ダイキン・ザウアーダンフォス(日本)が設立される

2001年:住友イートン機器からイートン100%出資のイートン機器に社名変更 

2013年:ダンフォスがザウアーから株式取得、油圧はダンフォスが継続

2013年:販売会社のダイキン・ザウアーダンフォス(日本)が設立

2016年:ダンフォスがホワイトドライブ・プロダクツ(米)を買収

2020年:ダンフォスがイートン買収を発表

 *なお、ダンフォス及びイートンなど会社名は合併などで変化している。

■世界のフルードパワー市場概況

 世界のフルードパワー(油圧・空気圧・シール製品など)工業の市場規模は、主要生産国の工業会によると、日本円換算で約7兆円となる。うち油圧及びシール他製品が75%の約5兆2,500億円、空気圧が25%の約1兆7,500億円と推定される。(為替レートは、1ドル:110円、1ユーロ:120円、1元:16円で換算)・・・・・より詳細は各国工業会に問い合わせを。

 各国工業会のデータをもとに推定すると、2018年における世界のフルードパワー産業の生産または出荷規模は、米国:2兆5,850億円、中国:1兆9,400億円(内需は2兆2,000億円)、欧州:約1兆5,600億円、日本:約8,800億円、その他(台湾、韓国、、インド、ロシアなど):約700億円と推定される。

 主要メーカーは、油圧及びシール他関連では、パーカー・ハネフィン、ボッシュ・レックスロス、イートン、ダンフォス、川崎重工(約1,516億円)、KYB(約1,406億円)、不二越(約646億円)、ナブテスコ(約534億円)など。空気圧関連では、SMC(約5,769億円)、フエスト(約3,840億円)、ノルグレン、CKD(約996億円)、Air-TACなどである。(売上は2018年ベース)*グラフは空気圧機器の2013年推定による。

 海外大手は、油圧・空気圧機器のほか、シール類、ホース類など周辺製品も含んでおり、売上規模の単純比較はできない。特に、パーカー・ハネフィンは、売上規模はトップといえども、油圧ポンプ、モータにおいては、市場シェアが低いことも念頭に置く必要がある。

 また、空気圧機器では、日本のSMC、油圧ショベル用の油圧ポンプ、旋回モータ等では、川崎重工業(KHI)が、油圧シリンダではKYB、ミニショベル用の油圧機器では不二越が世界トップにあるといえる。

■米国の2018年出荷は約2兆5,850億円

NFPA(National Fluid Power Association:米国フルードパワー協会)。

・2018年、フルードパワー製品の製造は、米国の235億ドル(約2兆5,850億円、110円換算)の産業だった。また、世界的に競争力があり、2018年の輸出額は65億ドル(約7,150億円)だった。

・米国の862社は、フルードパワー製品の製造に67,149人以上を雇用していると推定されており、年間給与は43億ドル(約4,730億円)を超えている。

・フルードパワー製品は、川下に大きな経済的影響を及ぼす。フルードパワーに依存する10の主要産業には、米国の推定23,200社が含まれており、年間給与が495億ドルを(約5兆4,450億円)超える778,056人以上を雇用している。

・フルードパワー製品とそれがサービスを提供する産業は、高度な教育を受けた労働力に依存しており、新しいフルードパワー製品の教育とトレーニングリソースへの投資につながる。さらに2年制および4年制の大学が流動的な力を教えている。

・フルードパワーステムは、米国のエネルギーの大部分を消費する。既存の技術とベストプラクティスは、一部のフルードパワーシステムのエネルギー使用を30%以上削減することが示されている。

・フルードパワー製品業界は、主要な研究課題を特定し、対処して、多様な顧客ベースのニーズに対応し続けている。

・フルードパワー製品には、これらの主要な研究課題に焦点を当てた活発な産業/学術連合がある。重要な業界および政府のリソースがこの重要な原因をサポートしている。

■中国の2018年生産は約1兆9,400億円、内需は2兆2,000億円

CHPSA(中国油圧空気圧シール部品工業協会)

 2018年生産額実績は、前年比7.3%増の1,234億元(約1兆9,400億円)。うち、油圧は同7.7%増の621億元(約9,750億円)、空気圧は同8.3%増の248億元で(約3,890億円)シール業界の生産額は365 億元で、同比5.8%の増加だった。

 うち、国内市場は1,381億元(約2兆2,000億円)で、同比8.7%の増加である。うち、油圧(液体動力を含む)業界の国内市場容量は734 億元(約1兆1,700億円)で、同比9.8%の増加。空気圧業界の国内市場容量は273 億元(約4,400億円)で、同比9.6%の増加。シール業界の国内市場容量は374 億元(約6,000億円)で、同比5.9%の増加である。

■ヨーロッパの2018年出荷は約1兆5,600億円

CETOP(ヨーロッパ油圧・空気圧・トランスミッション委員会)

 CETOPは、Comité Européendes Transmissions Oléo hydrauliqueset Pneumatiquesの略。つまり、「ヨーロッパ油圧・空気圧・トランスミッション委員会」である。 

 CETOPのメンバーである18の国内協会を通じて、ヨーロッパの有名企業はすべて欧州委員会に所属している。これらの企業の多くは、主要な流体メーカーであり、国際市場の主要企業である。

 CETOPは、主に製造業者だけでなくディーラーも含む1,000以上の企業を代表しており、従業員は約70,000人、市場価値は約130億ユーロ(約1兆5,600億円、120円換算)。これらは、これらの分野で活動している企業の非常に高い割合を占めている・・・・・ほとんどの国で80-90%。

 CETOPは、一般的に合意されている定義と命名法に従って、グローバルな流体動力統計を取得することを目的としたISC(国際統計委員会)と協力している。ISCに属する協会は、CETOP(ヨーロッパ)、CHPSA(中国)、FPSI(インド)、JFPA(日本)、NFPA(アメリカ)、TFPA(台湾)である。

■日本の2018年出荷は8,825億円

JFPA(日本フルードパワー工業会)

 2018年における油圧及び空気圧機器合計の出荷額は約8,825憶円。

 油圧機器:2018 年 出荷額(実績) 3,963 億円(対前年比15.0%増)

 空気圧機器:2018 年 出荷額(実績) 4,862 億円(対前年比2.7%増)

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