●年頭所感 日本フルードパワー工業会 会長 石川 孝

   新年明けましておめでとうございます。令和2年の年頭にあたり、一言ご挨拶を申し上 げます。

 昨年は、元号が平成から令和に変わり、新しい希望に満ちた年に願いが込められた新しい時代が始まる中、 日本でラグビーワールドカップが開催され、日本チームの大活躍に多くの方々が熱く盛り上がった年になったのではないかと思います。その一方、 昨年は、自然災害雲多く、大型の台風が上陸し、大規模停電、洪水といった事態が発生し、多くの方が被災されました。ここで改めて被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

 さて、昨年の経済情勢を振り返りますと、トランプ政権による対中追加関税が一昨年か ら実施され、中国との貿易戦争が始まり昨年はさらに対象品目が広がりました。この影響 もあり、中国経済は、一昨年末以降、輸出以上に輸入の不振が続いており内需の弱さが反映されていますが、政府の景気下支え策により大幅な落ち込みを回避しつつ実質GDPは 6%前後を維持しており、本年は景気の底打ちと回復が期待されています。

 そういった中、昨年末には米中両国の貿易交渉が第一次合意がなされ、双方が関税を分け合うという、やや落ち着きを戻した状態だと思われますが、その一方で、記憶に当たららしいことではありますが、米国とイランとの間で、たいへん緊張が高まる事態になりました。あわや軍事衝突が起こるのではないかと思われましたが、足元はやや落ち着きを取り戻しつつあるのかなというふに感じております。いずれにしてもこういった地政学リスクは、引き続き大きなリスク要因であり、私共は注意深く関心をもっていかなければと思います。

 一方で世界経済の情勢ですが、今年の米国経済は、昨年の市場予測を上回る成長はないものの、昨年同様、堅調な雇用環境に支えられ、やや減速しながらも成長が続くと見られています。また、今年は 11月3日の大統領選を控え、選挙モードが本格化する中、一昨年より続いてきた米中貿易戦 争が一段落することによって、世界経済が好転に向かうことが期待されます。

 このような世界経済状況の中、日本経済は、2019年7~9月期の実質GDPは、4四半期連続でプラスとなり、設備投資が海外経済の減速の影響を受けつつも、国内の緩和的な金融環境のもとで、都市再開発関連投資、人手不足に対応した省力化投資、成長分野への研究開発投資などを中心に、国内需要は緩やかな増加を続けると予想する見解もあります。また、 業界によっては回復が既に始まっているように思います。

 特に、昨年12月、災害復旧および東京オリンピック後の景気対策として、26兆円規模の経済対策が閣議決定されました。これはGDPを1.4%押し上げるといわれ、こういったものも景気の背中を押してくれることになることを期待しております。

 さて一方、フルードパワー工業会は、また12月の数字が固まっていませんが、油圧出荷額は推定値で1昨年比4.4%減の3,800億円程度、空気圧は同9.8%減の4,300億円程度ということで、こちらはあまり芳しい結果ではございません。1昨年はたいへん好調であったということを差し引きましてもやや苦戦した1年であったかなと思います。

 一方、今年は工作機械業界も年半ばから後半にかけて底を打ち、反転してくる、あるいは半導体製造装置業界は穏やかに回復し、今年は対前年比8%程度の成長を予想されています。全体としては斑模様ながらも明るい光が見え始めた状態にあるのではないかと考えております。

 こうした中、当工業会は、これまで行ってきた、油圧技能士の国家試験対策講座や初心者向け講座等若手技術者育成事業の更なる充実を目指し、また、最近話題となっているIoT やAIなどデジタル社会への本格的に移行への的確な対応を行うために技術企画委員会を 新たに設置して、電気電子関連技術への対応策等の検討を開始しました。本年も、内外の関連情報の収集発信、産学連携の下、人材育成等に力を入れ、日本の製造業の強さをしっかりと土台から支えるフルードパワー業界と なるよう微力ではございますが、日本フルー ドパワー産業の発展に貢献してまいりたいと存じます。

 最後になりましたが、フルードパワー工業会と皆様方の益々の発展を祈念し、私の年頭 の挨拶とさせていただきます。

 日本フルードパワー工業会HP