日清食品は12月7日、滋賀県栗東市の滋賀工場内に575億円を投じて新工場「関西工場」を建設すると発表した。2017年5月に着工し、18年8月に一部操業を始める。西日本での即席麺の供給力を高めるとともに、省人化を進めてコストを削減する。生産能力は日産315万食で国内最大の即席麺工場になる。
工場にかける金額が巨額になるのは、「次世代型スマートファクトリー」を目指すためだ。あらゆるものがネットにつながるIoT技術を駆使し、人の手を経ずに生産する工場を目指す。現在の工場に比べ省人化は50%以上となる見通し。異物混入など食の安全に対してもIoT技術を使ってトラブルを回避する方法を確立する考えだ。
関西工場は関西地方だけでなく、中部地方への供給にも対応する。現在の滋賀工場は拡張余地がなく、能力拡大が課題だった。今後、生産は新棟にシフトさせ、現在の工場は具材を生産する役割などを担うことになるとみられる。
強気の投資は日清食品の国内シェアが拡大傾向にあることも大きい。日清の15年シェアは43.3%で前年比0.7ポイント増と“一人勝ち”だった。15年度の国内の即席麺市場は前年度比4.3%増の56億4000万食。少子高齢化で即席麺を食べる機会が減るとの見方がある一方、高齢者向けの商品が市場の伸びをけん引している面もある。
日清は「カップヌードル」ブランドから高級具材を充実させた「リッチ」や、カロリーを抑えた「ライトプラス」を発売し、新たな需要を開拓している。国内の充実ぶりが巨額投資を後押しするが、この勢いを海外戦略につなげられるかが課題となる。(佐々木元樹)
- 日清食品株式会社 新工場建設に関するお知らせ
日清食品株式会社(社長:安藤 徳隆)は、滋賀県栗東市(りっとうし)に、関西工場(仮称)を新たに建設することを決定しました。完成(第3期工事完了)は、2019年12月の予定です。なお、日清食品の新工場建設は、1996年の静岡工場に次ぐものです。
【IoTにより製品の安全性とコスト競争力を向上させた「次世代型スマートファクトリー(*)」】
※参考画像は添付の関連資料を参照
日清食品グループは、2016年5月に「中期経営計画 2020」を発表し、「2020年度時価総額1兆円」を目指しています。本件は、その取り組みのひとつと位置付けており、製造工場では、生産性向上と品質管理の強化を図り、BCP対策を含めた供給体制を確立することで、中期経営計画の達成を目指します。
現在稼働している滋賀工場(滋賀県栗東市)は、西日本の主要生産拠点として1973年9月から操業しており、高効率の設備の導入や今後の拡張性が課題となっていました。
このたび建設する関西工場では、自社研究所「the WAVE」の独自開発による最新鋭設備の導入とIoT技術の活用により自動化と効率化を進めることで、さらなる製品の安全性とコスト競争力の向上を実現します。また、50%以上の省人化などにより、新工場建設に伴う減価償却費増を上回るコスト削減を目指します。
なお、関西工場は、現滋賀工場から北に約350m離れた場所に位置しており、日清食品が所有している99,865m2の土地に建設するものです。
*日清食品の考える「次世代型スマートファクトリー」
(1)リアルタイムな工場の見える化を進め、人とシステムと設備の最適な融合を推進し、最大のコスト効率を図る。
(2)作業からCreativeな付加価値の高い仕事に転換し労働生産性を高める。
(3)エネルギーの効率的利用により環境負荷を軽減する。
■新工場の概要
名称:日清食品株式会社 関西工場(仮称)
所在地:滋賀県栗東市下鈎(しもまがり)333
工事開始年月:2017年5月(予定)
稼働予定年月:2018年8月 第1期操業開始予定(2019年12月 第3期操業開始予定)
生産品種:カップ麺、袋麺
敷地面積:99,865m2
工場延床面積:113,368m2
生産能力(日産):315万食(第3期操業開始後)
設備投資額:575億円(第3期工事完了時)