・ロボット導入工数を約30%短縮、中小工場の人手不足解消へ新たな一手
エレクトロニクス商社のリョーサン菱洋(東京都千代田区)は4月3日 NTTと共同で、IOWN® APN(All-Photonics Network)を活用した産業用ロボットの遠隔制御システムの実証実験に成功したと発表した。
実験では、神奈川県横須賀市に設置されたFranka Robotics社およびDobot社製の産業用ロボットを、東京都武蔵野市のサーバーからIOWN® APN経由でリアルタイムに遠隔制御することに成功。フォトニクス技術を基盤としたIOWN APNの特徴である超低遅延・高品質・大容量伝送により、離れた拠点間でありながら、現場に近い操作性を実現した。
■業界課題を直撃するソフト化アプローチ
製造業では深刻な人手不足が続く中、特に中小規模工場における産業用ロボットの導入が進まない要因として、(1)高額なシステム構築費用、(2)ロボットメーカーごとの専用プログラム開発工数、(3)異なるメーカー間の互換性不足が指摘されてきた。
今回開発されたシステムは、NTTの「産業用ネットワークの機能ソフト化技術」を活用。サーバー上に作業モデル群(パレタイズ、ねじ締めなど)とプロトコルドライバ群をテンプレートとして登録し、ROS 2をベースとした共通フレームワークを構築した。これにより、現場での動作定義やデプロイ作業が不要となり、作業モデルを選択するだけでロボットを操作可能になった。ロボットメーカーの違いを吸収する点も大きな特徴だ。
実験の結果、ロボット導入時の構築工数を過去実績比で約30%短縮。特にロボット設置後の工程では、従来約70日かかっていた作業を約35日(50%削減)まで短縮できることを確認した。中規模工場での1台導入ケースでは、従来6~7カ月かかっていた期間を最短約4.5カ月まで圧縮できる見通しだ。
■IOWN APNがもたらす「遠隔でも現場と同じ」制御環境
IOWN APNは、従来の電子信号ベースのネットワークとは異なり、エンドツーエンドで光信号を活用する革新的ネットワーク。低消費電力ながら、高品質・大容量・低遅延の伝送を実現し、遠隔地からの精密制御に適している。
本システムでは、サーバー上で作業モデルを選択・組み合わせるだけで、横須賀のロボットが即座に動作。動作変更やメーカー切り替え時も、現場常駐のエンジニアを必要とせず、オンラインで柔軟に対応可能となった。
リョーサン菱洋はFranka Robotics社およびDobot社の代理店としてロボットシステムの設計・実装に強みを持ち、NTTはIOWN APNと機能ソフト化技術を提供。両社の連携により、製造現場のデジタル化を加速させる実用的なソリューションが形となった。
■今後の展開と期待
同社は今回の成果を踏まえ、製造業をはじめ食品産業、化粧品産業など幅広い分野での生産ライン自動化を推進する方針。将来的にはデジタルツインプラットフォームを活用した複数拠点でのシミュレーション検証も視野に入れ、ロボット導入のハードルをさらに下げていく。
人口減少社会における人手不足対策として、遠隔制御によるロボット活用は今後ますます重要性を増す。リョーサン菱洋とNTTの取り組みは、産業用ロボット市場に「導入しやすく、柔軟で、拡張性が高い」新たな選択肢を提供するものとして、機械・FA業界から大きな注目を集めそうだ。