大成建設・セイコー、非GNSS環境向け高精度測位システムを建設現場で実証

・首都高日本橋地下化工事に適用、通船・重機の追尾に成功

大成建設セイコーグループは4月1日、共同で、衛星測位(GNSS)が使用できない屋内・地下空間向けの高精度測位システム「Chrono Locate™(クロノロケート)」の建設現場実証を完了したと発表した。首都高速道路の日本橋区間地下化事業に伴うトンネル工事(大成建設・川田工業JV施工)において試験測位を実施し、センチメートル級の測位精度を確認した。

■ GNSSの”死角”を補う地上型測位インフラ

GNSSはICT施工や建機の運行管理など、建設現場のDX推進に欠かせない基盤技術として普及してきた。しかし、トンネル内や高架橋下など衛星電波が届かない環境、あるいは電波反射が生じる施工条件では機能しないという本質的な制約がある。

Chrono Locate™はこの課題に正面から応える。複数の基準局と移動局が電波を双方向に送受信し、到達時間差の計測によってデバイス間距離を算出する仕組みで、ナノ秒精度の時刻同期とセンチメートル精度の測距を同時に実現する。セイコーが長年培ってきた高精度時刻同期技術を応用しており、最低4基の基準局から3次元座標(XYZ)をリアルタイムに取得できる。開発には国立研究開発法人・情報通信研究機構(NICT)の研究成果も組み込まれている。

■ 実証概要:高架橋下の非GNSS環境で12基の基準局を展開

実証場所は、東京都千代田区大手町〜中央区八重洲間の首都高速道路高架橋下。GNSSが受信できない典型的な施工環境において、12カ所に基準局を設置し、以下2つの追尾試験を実施した。

① 通船の航行追尾
日本橋川を往来する通船に移動局を搭載し、航行軌跡を連続追尾。取得した軌跡はレーザ測量結果とほぼ一致し、所定の測位精度を達成した。また複数エリアを結合運用することで、広範囲の施工区間にわたる連続測位も実現した。

② バックホウのブーム旋回追尾
浚渫作業中の台船に搭載したバックホウの運転席と車体後部にそれぞれ移動局を設置。2点計測によりブームの旋回挙動を安定して連続追尾できることを確認した。将来的には浚渫位置の正確な把握への応用が見込まれる。

■ 大成建設「T-iDigital Field」への統合を計画

大成建設は今後、Chrono Locate™による測位機能を自社の統合プラットフォーム「T-iDigital Field」のアプリケーションとして実装する方針だ。ARとの組み合わせによる3D設計図の現場表示、ドローンを活用した高精度測量、作業員の動線管理による安全管理高度化など、幅広い用途への展開が想定されている。これにより、GNSSが普及させた施工管理のデジタル化を、これまで恩恵を受けられなかった非GNSS環境へ拡張する。

■ セイコーは建設・土木以外の産業分野へも展開

セイコーグループは本技術の適用領域を建設・土木に限定せず、物流倉庫や工場内での動線最適化、自動搬送ロボットの制御など多様な産業分野への展開を見据える。GNSSに依存しない位置情報インフラとして、新たな社会基盤の構築に寄与する狙い。

人手不足と生産性向上が喫緊の課題となる建設業界において、「届かない場所でも測れる」測位技術の登場は、ICT施工の適用範囲を大きく塗り替える可能性を持つ。実用化に向けた今後の展開が注目される。

ニュースリリース