バルブ・流体制御機器の国内最大手、キッツは26日、カナデビアが保有するブイテックス(東京都品川区)の全株式(886,400株)を取得し、子会社化すると発表した。取得価額は91億9,800万円(アドバイザリー費用等を含む概算総額93億6,800万円)で、株式譲渡の実行は2026年6月1日を予定している。
■ 半導体向け真空バルブで相乗効果を狙う
ブイテックスは1949年創業の特殊バルブメーカーで、半導体・FPD・薄膜ソーラーパネルなどの製造工程で使用される真空バルブを主力製品とする。また、日本で唯一のラプチャーディスク(破裂板)メーカーとしても知られており、幅広い産業分野で実績を積んできた。
キッツは今回の買収について、長期経営ビジョン「Beyond New Heights 2030」のもと、半導体分野を重点領域と位置づけてきた戦略の一環と説明する。近年、半導体製造工程ではデバイスの微細化・高集積化が急速に進んでおり、真空プロセスの安定性や精密な圧力制御への要求が高まっている。ブイテックスが持つ真空バルブ技術は、グループ子会社・キッツエスシーティーが培ってきた半導体装置向け技術と親和性が高く、先端プロセス対応製品の強化に直結するとキッツはみている。ラプチャーディスク事業についても、半導体分野にとどまらず、キッツグループが展開する産業用バルブ・流体制御領域全般でのシナジーが期待される。
■ カナデビアは「選択と集中」で譲渡を決断
売却側のカナデビアは、中期経営計画「Forward 25」において事業ポートフォリオの最適化を進めており、ごみ焼却発電・海水淡水化・舶用エンジンなどを中核事業と位置づける同社にとって、バルブ事業の位置づけを見直す判断に至った。
カナデビアは、ブイテックスの継続的な成長と技術開発力の強化を実現するうえで、バルブ業界の事業特性を深く理解し国内最大手であるキッツが最適なオーナーと判断したと説明している。本件株式譲渡に伴い、ブイテックスおよびその完全子会社3社(V TEX Korea、VTEX America、上海韦特库斯貿易)がカナデビアの連結子会社から除外される。財務面では、2027年3月期第1四半期の個別決算において関係会社株式売却益として約73億円を特別利益に計上する見込み。
■ ブイテックスの業績推移
ブイテックスの直近3期の単体売上高は、2023年3月期の100億5,200万円から、半導体市況の調整局面を受けた2024年3月期には67億7,200万円へと落ち込んだが、2025年3月期は85億200万円に回復している。営業利益も同様に回復基調にあり、2025年3月期は3億9,500万円を計上した。
■ 業界再編の潮流
半導体向け真空バルブ市場では、特定企業が高いシェアを持つ一方、半導体製造装置メーカーからはサプライチェーン安定化の観点からセカンドサプライヤーへの需要が高まっている。国内企業間の連携強化を政策的に後押しする動きとも相まって、今回のキッツによるブイテックス取得は、国内バルブ産業における競争力強化の観点からも注目される。
両社取締役会は同日、株式譲渡契約を締結しており、今後は必要な手続きを経て6月の譲渡完了を目指す。