・エッジデジタルツイン技術をCNC装置に実装、不良品削減と環境負荷低減に道
三菱電機は3月25日、ドイツのアーヘン工科大学との共同研究により、CNC(コンピューター数値制御)装置上で動作するデジタルツインを活用して工作機械の加工誤差をリアルタイムに補正する技術を開発したと発表した。同技術を実装した工作機械において、構造部の変形に起因する加工誤差を最大50%低減できることを実験で確認した。
■ 背景:高精度・高効率生産への要求が加速
製造業では市場ニーズの多様化を背景に、より精密で効率的な生産体制の構築が急務となっている。金属切削をはじめとする機械加工の現場では、切削力による工作機械の変形、工具摩耗、温度変化、加工対象のばらつきといった複合的な要因が加工精度を低下させ、不良品の発生や生産効率の悪化につながることが長年の課題だった。
解決策として注目されるデジタルツイン技術は、現場データと物理モデルを組み合わせて加工状態をコンピューター上でリアルタイムに再現・推定するものだ。しかし実用化には、センサーや制御装置からの大量データ取得、高精度な加工誤差推定モデルの構築、リアルタイム制御への反映——この3要素を同時に満たす必要がある。CNC装置はその処理能力やメモリー容量に制約があり、高精度モデルの搭載が技術的なボトルネックとなっていた。
■ 技術の核心:「コンパクト物理モデル」でリアルタイム動作を実現
今回開発した「エッジデジタルツイン技術」は、三菱電機独自のエッジデバイスである高速処理ユニットをCNC装置に搭載することで、軸位置・モーター電流・切削力などの膨大なデータを時間同期させながら高いサンプリングレートで取得する。その中から加工誤差推定に必要な情報だけを精緻に抽出し、最小限の計算式で構成したコンパクトな物理モデルに落とし込む独自設計を採用した点が最大の特長だ。
アーヘン工科大学が担当した誤差推定アルゴリズムの開発と、三菱電機によるCNC環境構築・実装評価の役割分担のもと、切削力と加工誤差のモデル構築から補正処理の実装・効果検証まで一貫したシステムを完成させた。推定した加工誤差を基にリアルタイムでCNCへの補正量を算出・指令することで、デジタルツインのシミュレーション結果を即座に実機制御へ反映する仕組みを実現している。
■ 検証結果:最大50%の誤差低減を確認
アーヘン工科大学が保有する同社製CNC装置搭載の検証用工作機械を用いた加振機試験では、補正ありの条件が補正なしと比較して加工誤差を最大50%低減できることが確認された。この結果は、切削加工における不良品低減と品質安定化に直結するものであり、生産性向上と環境負荷低減の両立に大きく貢献するものと期待される。
■ 今後の展開
三菱電機は今後、研究機関等との共創を通じて本技術の社会実装を推進する方針だ。カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現を見据え、持続可能な生産システム構築への貢献も視野に入れる。工作機械メーカーや加工現場への展開が進めば、製造業のスマート化に向けた重要な基盤技術となりそうだ。
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