・脱炭素・生産性革新で高利益体質と成長の好循環加速
三菱重工業(MHI)は3月18日、新経営方針「Innovative Total Optimization(ITO)」を実践した優れた取り組み計23件を社長表彰として顕彰したと発表した。ITOは2025年5月に伊藤栄作社長のもとで掲げられたもので、グループ全体のポテンシャルを最大限に引き出し、「全体最適」と「領域拡大」を軸に継続成長を目指す経営方法論。高利益体質への転換と成長投資の好循環創出を目的とし、今回の表彰はITOの実践成果を社内外に示す象徴的な取り組みとなった。
表彰対象は、社会課題解決に直結する製品・サービスの開発・実用化、生産性向上、業務プロセス革新など多岐にわたる。うち15件が公表されており、エネルギートランジション、スマートインフラ、製造DX、省エネ・自動化の各分野で顕著な成果が目立つ。
特に注目されるのは、エナジードメインでの大型ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)プラントにおける世界初の水素50%混焼実証。米国ジョージア・パワー社のマクドノフ・アトキンソン発電所で、M501GAC形(ガスタービン出力28.3万kW)の既設設備を改造。燃焼器換装と水素供給システム追設により、2025年6月に実証を完遂した。世界最大規模の水素混焼成功は、脱炭素ソリューションの実用化を大きく前進させるものである。
サービス事業の領域拡大例として、インドネシアの他社製ボイラー改造工事をターンキー契約で完遂。独自の調査・解析により保証性能を大幅に上回る成果を上げ、後続号機では工期短縮も実現した。これにより、他社設備向けサービス市場での競争力強化が期待される。
生産・設計プロセスの革新では、プラント改造工事向け3D設計サービスが最大約30%のコスト削減とリードタイム短縮を実現。市販カメラによる動画からの3Dデータ生成とAR活用で、古いプラントの空間設計課題を解決。火力・原子力・艦艇など幅広い分野への展開が進んでいる。
また、ごみ焼却発電プラント向け統合運用システム「MaiDAS®」は、AI/IoTとクラウドを融合し、自動運転・遠隔監視を実現。国内外20カ所以上で運用実績を持ち、ISO27017(クラウドセキュリティ)業界初取得も果たした。2025年12月開設の遠隔運用センターと連携し、保守コスト低減と効率化をさらに推進する。
製鉄分野では、Primetals Technologiesの集中制御システム「COC」がオペレーター1人で複数ユニットを管理可能に。AIアシスタントによる迅速対応でダウンタイム削減と品質向上を実現し、モジュール設計により他産業への横展開も見込まれる。
GXセグメントの次世代新交通システム「Prismo」は、架線レス・センターガイド方式を採用し、CO₂排出97.5%削減の三原製作所で製造。環境性能とインフラスリム化を両立し、国内外で高い市場期待を集めている。
水素専焼エンジン発電セットでは、相模原工場の実証設備で国内最大級出力(435kW)の水素専焼運転を達成。異常燃焼抑制と安全基準制定により、実用化に向けた基盤を固めた。
空調分野の「LXZ・KXZ3シリーズ」はR32冷媒最適化と可変温度制御で消費電力10~21%削減。GOOD DESIGN AWARD 2025やA’DESIGN AWARD 2025受賞でブランド価値も向上した。
製造現場の自動化では、自律移動型協働ロボット「FCR-PF」が多能工化と複数台連携を実現。危険作業からの解放とスループット向上に寄与している。
その他、航空機部品の「MAG加工法」によるケミカルミリング代替(コスト3割減)、超音波探傷技術による検査リードタイム70~80%短縮、XRプラットフォームの全社展開、工場インフラのIoT保全など、デジタルとものづくりの融合が顕著である。
三菱重工は、本表彰を通じて社員のITOに基づく価値創造意欲を高め、基盤技術と最先端知見の組み合わせで変化する社会・顧客ニーズに応えるミッション達成を目指す。ITOの実践がグループ全体の収益力強化と持続的成長を加速させる好循環を生み出している。
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