タダノは2月26日、2025年12月期(1~12月、25年度)の決算説明会資料を公開し、25年度実績と26年度予想、および欧州事業の再建方針を発表した。25年度決算で、M&Aをテコに売上高・事業基盤を大きく拡張しつつ、26年度は欧州事業の収益化と新規買収事業の成長加速で増収・大幅増益を狙う方針を鮮明にした。
■25年度実績と26年度予想の骨子
25年度(2025年12月期)の連結売上高は3,494億7,700万円と前期比19.9%増で過去最高を更新し、中計(24〜26年度)の売上目標3,300億円を1年前倒しで達成した。 営業利益は185億52百万円と前期比減益となったが、買収関連費用など一過性要因の影響が大きく、本業の収益力はおおむね維持されている。
26年度は売上高4,000億円(前期比14.5%増)、営業利益250億円(同34.8%増)、営業利益率6.3%(前期5.3%)を見込み、増収増益への転換を掲げる。 ROICは4.9%(前期4.2%)と改善を見込むが、中計目標8%にはなおギャップがあり、構造改革と収益性向上の継続が前提となる。
■数値目標と増減要因
売上面では、25年度に連結した米Manitex Internationalおよびタダノインフラソリューションズ(TIS)の通期寄与に加え、新製品群の拡販と欧州事業の立て直しが4,000億円達成のドライバーとなる。 売上増加要因では「物量」「売価」「モデルミックス」に加え、Manitex・TISの新規連結がプラス要因として示されている。
営業利益は、25年度の減益要因となった買収関連費用など一過性要因の剥落に加え、関税・為替影響を価格転嫁で吸収しつつ、物量増加と売価改善で上積みするシナリオで、営業利益率を1ポイント改善させる計画だ。 一方で、欧州再建の進捗や世界需要の伸び鈍化リスクを織り込みつつも「攻めの投資」を継続するスタンスを崩していない。
■事業別・地域別の方向性
建設用クレーン需要は地域による濃淡があるものの、世界合計(中国除く)は前年横ばいと底堅く推移しており、とりわけ北米、中東、アジアでの需要が堅調だ。 同社はRT(ラフテレーンクレーン)、AT(オールテレーンクレーン)を中心に、米国では関税影響を価格に転嫁しながらシェア維持・拡大を図る一方、欧州は需要回復に時間を要するとの前提で構造改革を優先する。
25年度に連結したManitexについては、米国オペレーション傘下に統合し、RTで地位を築いてきた北米販売チームと一体運営とすることで、販売力を最大化している。 タダノブランドの代理店ネットワークや既存ユーザーへのクロスセルによりシェア奪還が進んでおり、協働購買・協働開発による原価低減もあわせて収益貢献を高める考えだ。
TISはバルクハンドリングシステム等のメンテナンス収益をベースにした安定収益事業として位置づけ、海洋クレーンとタダノの油圧技術の融合による新製品開発や、IT・AIを用いた故障予知・省人化ソリューションで付加価値を高める。 国内造船業の再生ロードマップを追い風に、ジブクライミングクレーンやフローティングクレーンなど沿岸構造物向けの案件を取り込み、新たな成長ドライバーに育成していく計画。
■具体的な強化策(M&A・新領域)
同社は中計期間中、一貫してM&Aを成長の軸と位置付け、24年度のTUL買収、25年度のManitex・TIS買収と、足元数年で事業ポートフォリオを大きく拡張してきた。 キャッシュアロケーションでは営業CFに加えて財務CFを積極活用し、3件のM&Aを実行した上でも運転資本600〜700億円を確保しつつ、配当性向30%前後の株主還元を維持する方針を継続している。
事業面では、Manitexとの連携により車両搭載型クレーンと高所作業車の世界展開を加速し、とりわけ欧州では近接する既存拠点との協働購買・協働開発、ルーマニア工場の増強による生産ボトルネック解消で供給能力を高める。 TULやTISが持つ鉄鋼・発電・造船といった産業インフラ市場へのアクセスをテコに、従来の移動式クレーンにとどまらない「運搬・荷役・高所」という領域へプレゼンス拡大を図る構えだ。
国内では、政府が重点戦略分野と位置付ける造船業再生の流れを取り込み、造船現場向け自走式ホイール高所作業車の新モデル投入や、2025年12月に新設した八幡工場の2026年6月稼働による生産能力増強に取り組む。 さらに、香川県内拠点のスペース拡張も視野に入れ、造船・大型橋梁など港湾・沿岸インフラ向けクレーン需要を確実に取り込む体制構築を急ぐ。
■欧州再建の取り組み方針
欧州事業(主にAT・CC)は、2019年のDemag事業買収後、統合と構造改革に時間を要し、新型コロナ禍による事業環境悪化も重なって収益化が遅れてきた。 同社はTDG・Wallerscheid工場の閉鎖と売却(2025年6月完了)を実施し、Dinglerstraße工場やTFG・Lauf工場への生産集約に加え、小型ATの一部を日本生産へ移管するなど、生産再編を一気に進めている。
再建ロードマップでは、26年度中に欧州セグメントのキャッシュフロー黒字化を達成し、その後営業利益黒字化を目指す段階的シナリオを描く。 具体策として、調達最適化と設計見直しによる原価低減、生産プロセスの効率化と在庫適正化、TDGとTFGの一体経営による業務プロセス統合、“TADANO”ブランドへの統一、人員適正化などを束ねて収益構造の抜本改革を進める。
営業面では、欧州営業チームの活性化と販売戦略の再構築を掲げ、市場ポジションの「復権」を目標に据える。 新モデルの開発・上市を通じて製品競争力の立て直しを図り、需要回復局面でフルに生産能力を稼働させることで、安定的な利益貢献事業への転換を狙う構えだ。
■今後の焦点
タダノにとって26年度は、過去最高売上のさらに上積みとともに、欧州事業のCF黒字化と買収事業の統合効果の顕在化が問われる一年となる。 建設用クレーン市場が世界的に横ばい圏に入る中で、同社が掲げる「M&Aによる事業領域拡大」と「欧州再建」が、機械・プラント関連市場でどこまで収益成長につながるかが注目される。
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