クラース(CLAAS):2026年2月11日
クラースは、全世界の拠点において基幹業務システム「エスエーピー(SAP)」を最新バージョン「エスフォー・ハナ(S/4HANA)」へ移行し、デジタル基盤を全面刷新した。ドイツ・ハルゼヴィンケル(Harsewinkel)本社をはじめ、米国やアジアを含む全工場・全事業部門で統一プラットフォームの運用を開始。ITアーキテクチャにおける新たなマイルストーンとなる取り組みとして注目される。
今回の移行により、同社は全拠点共通の将来対応型デジタル基盤を構築。システム構成の簡素化に加え、リアルタイムでのデータ処理・分析が可能となった。生産、販売、カスタマーサービス、財務、人事、物流に至るまで、企業活動全体を一元的に管理できる体制を整えた。特筆すべきは、稼働を止めることなく本番移行を実施し、生産を中断せずに完了させた点である。
■グローバル一斉移行で成果
新システムのグローバル稼働開始から約1カ月が経過し、同社は順調な立ち上がりを報告している。CFO(最高財務責任者)のヘナー・ベッチャー(Henner Böttcher)氏は、「全世界の拠点を同時にS/4HANAへ切り替える“ビッグバン方式”は意図的な決断だった。1,000人を超える従業員が、年末年始を含めて卓越した貢献を果たしてくれた結果だ」と強調した。
■ 3,000万ユーロ投資、事前準備が奏功
今回のプロジェクトは、綿密な準備期間とグローバル体制の構築、そしてシステム移行への徹底した集中によって実現した。最終移行段階では業務プロセス自体の変更をあえて見送り、システム切り替えに専念することでリスクを抑制した。
総投資額は3,000万ユーロ規模。このうち半分をシステム変換に、残る半分を事前準備プロジェクトに充てた。具体的には、財務会計の最適化、倉庫物流のグローバル標準化、生産管理ソフトウェアの近代化などを実施している。
プロジェクトには16カ国から1,000人超が参画。13億件の会計伝票データを移行し、2万件以上のテストケースを検証するなど、大規模な取り組みとなった。
クラース(CLAAS)のIT責任者デビッド・クノール(David Knorr)氏は、「これほどの規模のプロジェクトは、明確な優先順位付け、社内専門人材の活用、そして業務部門とITの信頼関係があって初めて成功する」と総括。「プロジェクトは完了がゴールではない。すでに次のステップに着手している」とし、ITと業務の専門家で構成する“デジタル・タンデム”により、大容量データの高度分析、グローバル業務の最適化、意思決定基盤の強化を進める方針を示した。
■市場調査でも稀有な成功例
同プロジェクトは計画通り、かつ予算内で完了した。業界では珍しい成果である。国際的経営コンサルティング会社ホルヴァート・アンド・パートナーズ(Hórvath & Partners)の市場調査によれば、S/4HANA移行を予定期間内に完了できる企業はわずか8%にとどまり、60%以上が予算超過や品質問題に直面しているという。
プロジェクト責任者のクラウス・ヘルバーマン(Klaus Herbermann)氏とエドウィン・フェルカイク(Edwin Verkaik)氏は、「全ての部門を早期から巻き込み、徹底的なテストを実施し、チーム一丸で取り組んだことでリスクを最小化できた。クラースはS/4HANA移行における成功モデルを示した」と評価している。
農業機械大手であるクラース(CLAAS)は、今回のIT刷新により、グローバル生産・販売体制を支えるデジタル基盤を強化。今後の高度化・自動化戦略を支える“デジタルの背骨”を確立した格好だ。
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