日立製作所の鉄道システム事業を担う日立レールは2月20日、カナダ・トロントに新たなカナダ本社を設立するため、約3,000万カナダドル(約34億円)を投資すると発表した。オンタリオ州における長期的な事業展開へのコミットメントを示すとともに、鉄道信号・制御技術分野でのグローバル競争力を一段と強化する。
今回の投資は、トロントを拠点に次世代鉄道信号技術を開発するために表明している総額1億カナダドル(約112億円)規模のコミットメントの一環。新本社では、次世代CBTC(通信ベース列車制御)システム「セルタック(SelTrac™)G9」の開発を推進する。
■グローバルCBTCの中核拠点に
新本社には、日立レールのグローバルCBTCコンピテンス・センターを設置。世界各地の都市鉄道システム向けに高度なエンジニアリングおよび技術支援を提供する中核拠点とする。
施設は延床面積約12万5,000平方フィート(約1万1,600㎡)、5.5フロアで構成。LEEDシルバーおよびBOMA認証を取得した環境配慮型ビルに入居し、ジム、託児施設、EV充電ステーションなどを備える。従業員のウェルビーイングを重視した設計とし、約1,100人の従業員と約100人の有給インターンが勤務する予定。2026年夏にトロント・スカーバロー地区のコンシリウム・プレイスで正式開設する。
日立レール カナダ法人のアルノー・ベッセ(Arnaud Besse)COOは「今回の投資はオンタリオ州への長期的コミットメントを強化するものであり、次世代信号技術の中核拠点となる」とコメントしている。
■世界40都市超に展開するSelTrac
トロントで開発された「セルタック(SelTrac™)」CBTC技術は、ロンドン、パリ、ニューヨーク、ドバイ、ソウル、シンガポールなどに加え、バンクーバー、オタワ、モントリオール、トロントなどカナダ主要都市でも採用されている。世界40都市以上、100超の都市鉄道に導入実績を持つ。
現在開発中の次世代CBTCは、AIや5Gを統合し、より高効率・高信頼・持続可能な都市鉄道運営を実現する。ロンドン地下鉄4路線の信号改修では、ピーク時輸送力を33%向上させた実績もある。
■人材育成と地域経済への波及
日立レールは約50年にわたりトロントを拠点に信号事業を展開し、CBTCシステムの輸出を通じてカナダ経済に数十億ドル規模の貢献を果たしてきた。2025年にはオンタリオ工科大学と、カナダ初となる鉄道工学専門課程の開発・運営に向けた覚書を締結。年間100人超の有給インターンを受け入れるなど、人材育成にも力を入れる。
また、北米最大級の地下鉄プロジェクト「オンタリオ・ライン」のリードパートナーとして、トロント都市交通の高度化にも関与している。
今回の新本社設立により、トロントは鉄道信号技術の集積拠点としての位置付けを強める。日立レールは、カナダ国内唯一の鉄道信号システムプロバイダーとしての存在感を一層明確にし、グローバル市場での競争力向上を図る構えだ。
<プロジェクト概要>
投資額:3,000万カナダドル(約34億円)
所在地:カナダ・オンタリオ州トロント市スカーバロー地区(コンシリウム・プレイス内)
延床面積:約12万5,000平方フィート(約1万1,600㎡)
規模:5.5フロア
主用途:カナダ本社/グローバルCBTCコンピテンス・センター
開設時期:2026年夏予定
雇用規模:約1,100人+有給インターン約100人
開発技術:セルタック(SelTrac™)G9(次世代CBTC)
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