【補足】住友重機械、構造改革の本丸は半導体とショベル事業、レーザアニール統合で巻き返し図る

・事業環境変化で中計目標の修正迫られる、成長領域への資源集中加速

住友重機械工業が2月10日に公表した決算説明資料から、同社が直面する課題と今後の戦略の輪郭が鮮明になった。「中期経営計画2026」(中計26)で掲げた2026年度営業利益800億円の目標達成が困難となる中、半導体製造装置事業と油圧ショベル事業を中心とした主力事業の立て直しが急務となっている。一方で、イオン注入装置とレーザアニール装置の統合・連携強化や、造船向け産業用クレーンの需要拡大など、新たな成長機会も見え始めている。

■外部環境の変化が想定を上回る

同社の説明によれば、2025年上半期以降の事業環境変化が業績下振れの主因だ。欧州では米国関税影響による供給制約で電機制御事業の生産が減少。EV市場の先行き不透明感からプラスチック加工機械事業への影響も継続している。

半導体製造装置事業では、AI向け以外の半導体、パワー半導体の需要低調によりイオン注入装置やMCZ用超電導マグネットの回復遅れが続く。ただし、2025年の中国市場は回復基調に入りつつあり、イメージセンサ市場も2026年後半以降の回復を想定している。

油圧ショベル事業は、国内で機械飽和が継続。米国では2025年に代理店在庫の高止まりで出荷減となり、2026年からは関税影響が本格化して購買マインド低下による需要減が見込まれる。

■SBU制で事業横断のシナジー創出

同社は2026年度から組織改革に着手した。従来の事業部制を廃止し、市場起点で価値創出を担う「戦略ビジネスユニット(SBU)」制を正式に組織化。顧客基盤や技術の連携によるシナジー強化と業務効率化を進め、将来の新たな柱となる事業創出を加速する。4セグメントの下に11のSBUを配置。メカトロニクスにはドライブテクノロジーズ(DT-SBU)とアドバンストテクノロジーズ(AT-SBU)、インダストリアルマシナリーにはマテリアルソリューションズ(MS-SBU)、メディカル&カンタムソリューションズ(MQS-SBU)、メタルプロセッシングソリューションズ(MPS-SBU)、プラスチックソリューションズ(PS-SBU)を設置した。

ロジスティックス&コンストラクションには搬送システムSBU、リンクベルトクレーンSBU(LBC-SBU)、HSCクレーンSBU、建機SBUを配置。エネルギー&ライフラインにはプロセスプラントSBU(PP-SBU)、エネルギー環境SBU、海洋・鉄構SBUを設けた。

■半導体事業の統合・連携が鍵

最重要課題の一つが半導体製造装置事業の立て直しだ。同社は2026年1月に「半導体装置事業推進室」を新設。イオン注入装置を手掛けるMS-SBUと、レーザアニール装置を展開する事業の統合・連携を強化する。

開発、販売、製造、サービスの各機能を統合し、シナジー効果を最大化する方針。レーザアニール装置は先端ロジック、DRAM(HBM)、3D NANDの微細化・高積層化に向けた新アプリケーション開発が進行中で、複数の大手メーカーから引き合いを受けている。2027年に2025年比4倍の生産体制構築を計画する。
事業強化策として、2025年にレーザ関連のLASSE(現SMS-E)を買収。米国には半導体サブシステム・コンポーネント開発センターを2025年11月に開設し、評価用装置の設置を完了。グローバルトップ顧客へのアプローチを開始した。

■ショベル事業は体制最適化と固定費削減

油圧ショベル事業では、需要想定の見直しに基づく体制最適化を進める。新機種投入による差別化と収益性改善を図るとともに、横須賀製造所を活用した最適生産体制の構築を推進。ただし本格生産開始は当初計画より遅れ、2028年度にずれ込む見通しだ。

商品面では、日米主要市場で新型モデルを順次投入して需要掘り起こしを図る。13.5トン電動ショベルをCSPI-EXPO2025に出展したほか、道路機械の自動化機能「ASTRA1.0」を発売。社会課題解決に向けた電動化、遠隔・自動化、DXなどの先進技術開発を継続する。

■造船再生で産業用クレーン需要拡大

一方、新たな成長機会も浮上している。2025年末に公表された政府の「造船業再生ロードマップ」では、2035年目標として建造能力倍増計画が示された。同社は国内唯一の産業用クレーン製造メーカーとして、造船各社からの旺盛な引き合いに対応するため生産能力増強を検討中だ。

2025年度の産業用クレーン受注は造船・鉄鋼向けを中心に増加し、受注構成比は造船向けが50%を占めた(前期35%)。標準提案で設計負荷を軽減するとともにリソースを優先投入し、需要増加に対応する体制を整える。

■プラスチック機械は欧州改革加速
プラスチック加工機械事業では、機種整理と業務プロセス変革を前倒しで実施。2025年末までに22機種の生産中止を完了した(1年前倒し)。想定需要を引き下げ、千葉工場の体制・機能の再編と販売体制・配置の再編に着手している。
欧州のSumitomo(SHI)Demag(SDG)では当初計画通り構造改革を遂行中だが、想定以上の需要減を見込み追加施策を検討中。電気・電子関連向けの需要回復が鍵を握る。2025年度の業種別売上構成は医療・食品容器・雑貨が50%、電気・電子関連が20%、自動車が15%だった。

■カーボンニュートラルと再エネ促進を育成

成長領域への投資も継続する。環境・エネルギー分野では、カーボンキャプチャー技術の実証をEUで完了し、実機計画のFEED(基本設計)に対応中。バイオマスガス化からSAF(持続可能な航空燃料)製造までのNEDO実証事業に参画している。

液化空気エネルギー貯蔵システム(LAES)は、2025年12月から広島ガスとの共同実証運転を開始。蓄電池に代わる大規模エネルギー貯蔵技術として実用化を目指す。洋上風力基礎構造物事業も、第2ラウンド受注に向け見積対応を進める。

■資本政策は株主還元重視を堅持

資本政策では、中計26期間(2024~2026年度)の営業キャッシュフロー(研究開発費控除前)を2,350億円(当初計画比450億円減)と下方修正。一方、株主還元方針は堅持し、安定配当(最低配当125円、DOE3.5%以上)に加え、資本政策を加味した自社株買いを2026年度も実施する。
設備投資は中計26当初計画に対して概ね90%の計画(M&Aを除く)、研究開発投資はほぼ計画通り。重点投資領域(ロボティクス・自動化、半導体、先端医療機器、環境・エネルギー)に700億円を投入し、成長事業の拡大を図る。

■2027年度に正念場

同社は構造改革により、2027年度以降に営業利益700億円以上、ROIC6.0%以上、ROE6.0%以上の達成を目指す。2026年度は過渡期として営業利益600億円、ROIC4.8%、ROE5.0%を計画する。

事業ポートフォリオの観点では、重点投資領域事業(約3,400億円規模)の成長加速、収益低迷事業(約4,500億円規模)の構造改革完遂、戦略再構築事業(約1,200億円規模)のポートフォリオマネジメント加速の3つを同時並行で進める。

半導体製造装置とショベルという2大主力事業の立て直しに加え、レーザアニール統合や造船向けクレーンといった新たな成長機会をいかに取り込むか。同社の真価が問われる1年となりそうだ。

住友重機械工業の2025年12月期決算説明資料