・欧州・アジアの堅調な需要と為替効果を反映
日立建機が1月29日に発表した2026年3月期第3四半期(2025年4〜12月)連結決算は、売上収益が9,793億円で前年同期比1.2%の減収、調整後営業利益が925億円で同11.4%の減益、親会社株主に帰属する四半期利益が562億円で同9.2%の減益となった。1株当たり四半期利益は264円21銭だった。
米州のOEM事業やオセアニアで販売が減少したものの、欧州やアジア、北米の独自展開事業が堅調に推移した。継続的な原価低減と販売価格引き上げの効果もあり、為替影響を除けば増収となった。
利益面では、販売価格引き上げによる増益効果があったものの、米国関税や成長投資に伴うコスト増、地域・製品構成差の悪化、円高影響などが下押し要因となり、調整後営業利益は減益となった。ただし、金融収支の改善があり、親会社株主に帰属する四半期利益の減益幅は調整後営業利益ほど大きくならなかった。
地域別では、欧州が1,332億円で前年同期比22.3%増と大幅増収となった。アジアも898億円で同6.4%増、インドは621億円で同2.2%増と堅調だった。一方、オセアニアは1,817億円で同10.6%減、米州全体では2,379億円で同5.5%減となった。このうち北米は2,118億円で同2.8%減だったが、独自展開事業は1,501億円で同7.0%増と底堅さを維持した。中国は180億円で同24.3%減と大幅な減収となった。
■ セグメント別業績
セグメント別では、建設機械ビジネスの売上収益が8,819億円で前年同期比2.0%減、調整後営業利益は849億円で同9.9%減となった。欧州やアジア、北米独自展開事業の販売が堅調で、販売価格引き上げが下支えとなったものの、米国関税を含むコスト増や地域・製品構成差の悪化、円高影響が業績に影響した。
スペシャライズド・パーツ・サービスビジネスは、売上収益が1,037億円で同6.0%増と増収だったが、調整後営業利益は76億円で同24.8%減と減益となった。2024年12月に買収した米国企業の取り込みによる増収効果があった一方、円高影響に加え、一部主要顧客の投資抑制や競争環境の激化により利益は減少した。
■ 通期業績予想は上方修正
通期業績予想については、前回10月公表時から上方修正した。売上収益を前期比0.1%減の1兆3,700億円、調整後営業利益を同5.5%減の1,370億円、親会社株主に帰属する当期利益を同4.2%減 の780億円と、それぞれ前回予想から500億円、50億円、40億円引き上げた。1株当たり当期利益は366円66銭を見込む。前期比では売上収益が0.1%減、調整後営業利益が5.5%減、親会社株主に帰属する当期利益が4.2%減となる見通し。
修正の理由として、同社は米国関税政策の影響を懸念していたものの、足元では米国国内のデータセンター建設や公共工事が需要を下支えしており、他地域への影響も現時点で明確な兆候が見られないことを挙げた。グローバル全体の油圧ショベル年間需要見通しを前回公表時から上方修正し、約21万6,000台と前年度比2%減と見込んでいる。
また、当第3四半期の実績で底堅い需要環境や原価低減を含む資材費の縮減、円安の進行が見られたことも反映した。米国関税影響によるコスト増については、販売価格引き上げにより一定程度を吸収できる見込みだという。年間配当は前年同等の1株当たり175円の計画を維持する。
財政状態については、第3四半期末の総資産が1兆8,539億円で前期末比629億円増加した。棚卸資産が573億円増加したことが主な要因だ。有利子負債は5,258億円で前期末比121億円減少し、ネット有利子負債は3,984億円、ネットD/Eレシオは0.46に改善した。
キャッシュ・フローでは、営業活動によるキャッシュ・フローが1,007億円の収入となり、前年同期比175億円増加した。営業キャッシュ・フローマージン率は10.3%を確保した。投資活動によるキャッシュ・フローは334億円の支出で、フリー・キャッシュ・フローは673億円の収入と前年同期比で大幅に増加した。
同社は2027年4月1日付で商号を「ランドクロス株式会社」に、コーポレートブランドを「LANDCROS」に変更する予定だが、ビジョンや顧客への姿勢、高品質な製品・サービスの提供は今後も変わらないとしている。
■質疑応答より抜粋
・ 米国関税の影響と価格転嫁:米国関税による原価増は年間93億円を見込むが、販売価格引き上げやレンタル事業強化、原価低減策により影響の最小化を図る。 2026年度の米国関税によるコスト増は約250億円を見込む。2025年6月以降、段階的な値上げ(合計約11%)を実施しており、現時点ではコスト増の約6割(約150億円)を価格転嫁で吸収できる見通し。値上げによる販売数量への大きな影響は確認されておらず、シェアを維持する前提で慎重に価格政策を進めている。一方、市場全体では関税の影響をユーザーが実感し始めており、北米の需要環境は来期に向けて慎重に見ている。
・次期中期経営計画の方向性:次期中計は現在策定中で、詳細は4月以降に公表予定。北米は関税影響で需要の上振れを見込みにくい一方、欧州は持ち直し、インドは堅調、アジアも改善傾向と認識。需要は全体として現状並みを前提に、財務規律を重視しつつキャッシュ創出と投資の両立を図る。ランドクロス戦略のもと、デジタル分野や取引先、株主を含む多様なパートナーとの連携を強化する方針。
・ マイニング事業の見通し:マイニング市場は地域差があるものの、銅・金価格は堅調で、高水準の需要環境が継続。今期は納期ずれにより売上が抑制されたが、受注(BBレシオ)は改善しており、来期以降の売上回復を見込む。部品・サービスは一時的にメンテナンス投資が抑制されたが、稼働状況は良好で、先送りされた需要は今後回復するとの見方を示した。
・ 油圧ショベルの地域別需要:北米は住宅、公共工事、データセンター投資などで足元の工事量は堅調なため上方修正したが、4Q以降は慎重に見ている。欧州はドイツ、イタリアなど大陸部が好調。アジアはインドネシアの石炭関連は弱いものの、農業(パーム油)向け需要が堅調で全体として改善。アフリカ・中南米・中東も実績を踏まえ上方修正した。
・ 原価・ミックス変動の要因:関税影響額が10月公表値から変動したのは、レンタル向け契約形態の変更など製品ミックスの変化によるもの。売価引き上げ効果は一部地域で競争激化により計画未達となったが、全体としては概ね想定通りの進捗。
・ 値上げ判断の考え方:1月の追加値上げは他社動向を追随したものではなく、自社判断によるもの。シェアを維持できる範囲での値上げを継続する姿勢を示した。
・ 北米需要を慎重に見る理由:関税影響を市場が本格的に認識し始めたのが足元であり、先行需要の反動が出る可能性があるため。中期計画策定にあたり、楽観的な前提は置かず慎重な需要想定を採用している。
・ 米国関税訴訟への対応:進行中の裁判についてのコメントは控えるとした上で、結果に関わらず顧客・代理店支援とシェア拡大に注力する姿勢を示した。
・今後の方針:中期経営計画を現在策定中で、4月以降に詳細を説明予定。伊藤忠商事をはじめとするパートナーとの連携を強化し、企業価値・株主価値の向上を目指す。
以上
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