・2019年の財務支援から7年、事業再生の最終局面へ
千代田化工建設は1月28日、同社が発行するA種優先株式について、保有者である三菱商事との間で償還条件の変更に合意したと発表した。本年6月開催予定の第98回定時株主総会で定款変更案が承認されることを条件に、優先株式の早期償還を目指す。
■背景:米国LNGプロジェクトの損失から立ち直り
千代田化工は2019年、再生計画以前に受注した大型案件、特に米国ゴールデンパスLNGプロジェクトでの損失により財務体力が大きく毀損。三菱商事から総額1,600億円(優先株式700億円、シニア融資枠900億円)の支援を受け、経営再建に取り組んできた。
同社は本日付で業績予想の上方修正も発表。ゴールデンパスLNGの契約改定を果たし、完工に向けた遂行プランが固まったことで、FY2023に計上した損失分の戻入れが可能となった。現中期経営計画「経営計画2025」で掲げる「年平均150億円の純利益」達成にも目途が立ち、優先株式の全株式償還に踏み切る決断に至った。
■条件変更の主な内容
現行定款では、優先株式の償還価額が普通株式の時価に連動する条件となっており、将来の収益水準を踏まえても全株式償還には極めて長期間を要する状況だった。
今回の合意により、以下の条件変更が実施される:
償還価額の固定化
∙ 1株当たり償還価額を436円に固定(2029年6月末まで)
∙ 総額約763億円(優先株式1.75億株分)
∙ 2026年3月期までの累積未払配当金105億円を加え、総額約900億円規模
配当条件
∙ 2028年6月末まで:年3%(単利)で据え置き
∙ 2028年7月以降:年12%(複利)に上昇
普通株転換権の制限
∙ 2029年6月末までは転換権行使を不可とし、金銭償還を優先
千代田化工は、年度決算で確定する分配可能額の全てを用いる想定のもと、配当率が上昇する前の2028年6月末までに全株式償還を目指す。
■三菱商事の評価とスタンス
三菱商事は、2019年以降の支援期間中に千代田化工が受注した案件で損失が発生していないことを評価。「当社の関与が経営基盤健全化に寄与した」とコメントしている。
また、千代田化工が2025年5月に公表した中期経営計画で、海外大型EPCプロジェクト中心のビジネスモデルからの脱却を目指す「自己変革」方針を示したことについて、「収益ボラティリティの低減に資する重要な転換点」と認識している。
三菱商事が保有する普通株式(約8,693万株、議決権比率約33%)については、千代田化工の自立化促進や業界動向を踏まえ、今後の適切な保有方針を改めて検証するとしている。なお、優先株式が普通株に全て転換された場合、三菱商事の議決権保有割合は約82%に達する。
■その他の財務支援策も整理へ
2019年の財務強化策では、優先株式の他に株式会社三菱UFJ銀行からの劣後借入(当初200億円)および三菱商事フィナンシャルサービス株式会社からの借入枠(当初900億円、現在100億円)があった。
今回、優先株式の条件変更と並行し、三菱UFJ銀行との劣後借入の返済およびコミットメントラインの新設定、三菱商事フィナンシャルサービスからの借入枠解約を含め関係各社と協議中。三菱UFJ銀行からは引き続き支援を受ける旨を確認している。
■今後の展望:プライム市場復帰と復配目指す
千代田化工は、優先株式の全株式償還後、スタンダード市場からプライム市場への市場区分変更、および普通株主への復配を目指す方針。「5年後、10年後を見据えた本格的な成長軌道を確立する」としている。
事業戦略面では、「経営計画2025」の基本方針を堅持。海外既存大型プロジェクトの着実な遂行、海外プロジェクト取り組み改革、国内プロジェクト収益拡大、事業共創の拡充などに取り組み、純利益年平均150億円の達成を目指す。
初回の償還は、6月開催予定の定時株主総会で定款変更案が承認された後、可及的速やかに実施される予定。