・データ活用による配水最適化で管理効率19%向上、送水依頼39%削減を実現
総合重工大手のIHIは1月20日、愛知川沿岸土地改良区(滋賀県東近江市、小椋正清理事長)と共同で取り組んだ農業用水の水管理効率化プロジェクトが、第9回インフラメンテナンス大賞の特別賞を受賞したと発表した。データに基づく配水管理により、用水供給の精度向上と大幅な業務効率化を同時に達成した点が高く評価された。
■経験則からデータ管理へのパラダイムシフト
今回受賞した取り組みは、従来の経験則や人為的判断に依存していた農業用水の配水管理を、デジタル技術とデータ分析を活用した科学的な管理手法へと転換するものだ。IHIが開発した「配水支援ツール」を中核として、支線水路の分水工流量を可視化し、リアルタイムでの最適配水を実現している。
分水工は用水路の水を複数の水路に分配する重要な施設で、バルブや水門の開閉により水量を調節する。愛知川沿岸土地改良区では、この分水工ごとに用水時期ごとの必要水量などを示した「分水工カルテ」を整備し、これを配水支援ツールと連携させることで、データドリブンな水管理体制を構築した。
■顕著な数値改善を実現
本システムの導入効果は明確な数値となって現れている。2024年7月の対前年同月比実績では、管理目標値どおりに水を供給できた割合が17ポイント向上。配水精度の向上により、水資源の有効活用が進んだ形だ。
業務効率化の面でも大きな成果を上げている。土地改良区の管理担当職員による自動車運転距離は19%削減され、現場巡回の負担が大幅に軽減された。さらに、適切な配水により農家からの送水依頼は39%減少し、双方の作業負担軽減につながっている。
■三つの機能で配水を最適化
IHIの配水支援ツールは、三つの主要機能により農地における水配分の最適化をサポートする。第一に、必要水量と供給水量をシステム上で反映し、需給バランスを一元管理する。第二に、配水の過不足状況を視覚的に表示することで、管理者が直感的に状況を把握できるようにした。第三に、これらのデータを基に配水計画の最適化を支援し、効率的な水資源配分を実現している。
システムは地図情報と連動したインターフェースを備えており、各分水工の状態や流量データを視覚的に確認できる。これにより、広域に点在する配水施設の管理が容易になり、迅速な意思決定が可能となった。
■農業インフラ老朽化への対応策として期待
愛知川沿岸土地改良区の小椋理事長は受賞にあたり、「このたびは特別賞という名誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。データ活用のための技術支援およびご協力をいただいたIHIグループならびに関係者の皆様には心より感謝申し上げます」とコメント。その上で、「本受賞を励みとして、今後もデジタル技術を活用しながら、より精度の高い配水計画と安定供給に努めてまいります」と、さらなる取り組み強化への意欲を示した。
日本の農業用水利施設は高度経済成長期に集中的に整備されたものが多く、老朽化が進行している。同時に、農業従事者の高齢化や人手不足により、施設管理の省力化・効率化が急務となっている。こうした課題に対し、IHIの配水支援ツールは、少ない人員でも高度な水管理を実現できるソリューションとして注目される。
■今後の展開と業界への影響
IHIは今回の受賞を受け、「今後も農業地域における水管理の効率化に貢献するソリューションの開発を推進してまいります」としている。同社が長年培ってきた産業インフラ技術とデジタル技術を融合させることで、持続可能な農業基盤の整備に貢献する方針だ。
農業分野におけるスマート化は、作物栽培だけでなく、水資源管理などの基盤インフラにも広がりつつある。本取り組みは、データとデジタル技術を活用した農業インフラの維持管理モデルとして、他の土地改良区や農業関連施設への横展開が期待される。重工業メーカーの技術力が、日本農業の持続可能性向上に新たな可能性をもたらす事例として、業界の注目を集めそうだ。
コメントを投稿するにはログインしてください。