リープヘル、船上クレーン「BOS」シリーズが50周年――500台超を納入、電動型も投入

リープヘル(Liebherr):2025年11月19日

オフショア作業の最前線を支え続けてきたBOSクレーンが半世紀の節目を迎えた。累計502台を世界各地に納入し、英国、ブラジル、ノルウェーなど主要海洋市場で高い評価を獲得している。
リープヘル社は19日、船上型オフショアクレーン「BOS」シリーズが開発から50年を迎えたと発表した。1975年の初号機納入以来、過酷な海洋環境下での運用実績を積み重ね、現在では電動仕様も展開する同社の主力製品に成長している。

■浮体式プラットフォームから始まった歴史

BOSシリーズの歴史は1975年、浮体式生産貯蔵積出設備(FPSO)「プリンセス・アウェニ(Princess Aweni)」向けに初号機「B10/17 EX」を納入したことに始まる。以来、オフショア環境の変化に対応して設計と機能を継続的に進化させてきた。

特筆すべきは制御システム「リトロニック(Litronic)」の発展だ。初期のカード式から、耐衝撃・防水性能を備えた密閉型ユニットへ、さらに現行世代では演算能力の向上と機能拡張、多様な設定オプションを実現している。

■小型から大型まで幅広いラインナップ

現行のBOSシリーズは、コンパクトな「BOS 2600」から重量物対応の「BOS 35000」「BOS 45000」まで多彩なモデルを揃える。全モデルに共通するのは、A型フレーム、ラチス構造ブーム、一体型通路といった特徴的な設計要素だ。これらにより、広い作業半径での精密な荷扱いと、保守点検時の良好なアクセス性を両立している。

シリーズ最大級のBOS 35000は最大1,200トン、BOS 45000は最大1,400トンの吊上能力を持ち、作業半径は100メートルを超える。洋上風力発電設備の建設や大型石油・ガスインフラの輸送、さらには大規模な据付・保守・撤去作業に対応する。

「BOSクレーンは特に長いブーム長が必要な洋上風力発電のサービスに最適です」と、同社のロバート・ピッチマン(Robert Pitschmann)重量物オフショア・船舶クレーン担当グローバルアプリケーションマネージャーは語る。「実績ある設計と適応性により、50年間にわたりオフショア揚重技術の最前線に立ち続けてきました。その実績が今日の最も厳しい環境下での性能を支えています」

■製造拠点を統合、グローバル展開を加速

当初はオーストリアのネンツィング(Nenzing)工場で生産されていたBOSシリーズだが、2005年以降はドイツ・ロストック(Rostock)工場に製造を集約した。これにより同工場は海洋クレーン技術の中核拠点としての地位を確立している。

累計502台の納入実績のうち、英国、ブラジル、ノルウェーが主要市場となっている。近年はメンテナンス性に優れたラムラッフィング式クレーンの需要が高まっているが、長いブーム長が求められる用途ではBOSクレーンの独自のラチスブーム構造が垂直方向の動きを抑制し、より安定した荷扱いを実現するため、依然として重要な選択肢となっている。

2005年の大幅な設計変更では、特徴的なA型フレームと機械室を明確に分離した現在の標準構成を採用。これにより保守性が向上し、将来の技術統合への基盤も整備された。

■独自制御システムで精密作業を実現

2005年以降、BOSシリーズには自社開発のリトロニッククレーン制御システムを標準搭載している。クレーンとオペレーターをつなぐインターフェースとして、リアルタイム診断と最適化された揚重性能を提供。モジュラー構造により用途に応じたカスタマイズも可能だ。

「BOSシリーズは数十年にわたるオフショア使用で実力を証明してきました。適応性、堅牢な設計、リトロニックのようなシステム統合により、世界中のオペレーターにとって信頼できる選択肢となっています」と、ステファン・シュナイダー(Stefan Schneider)汎用オフショアクレーン担当グローバルアプリケーションマネージャーは説明する。

リープヘルのオフショア製品群には、移動式台車に搭載した高い柔軟性を持つ「TCC 14000」も含まれる。最大600トンの吊上能力とフック高さ100メートルを実現し、BOSクレーンの高い揚重能力と港湾クレーンの機動性を兼ね備えた設計となっている。

今後、同社は電動化を重点課題として、50年の実績と将来を見据えたビジョンに基づく信頼性の高いクレーンソリューションの提供を継続していく方針だ。

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